死後に出た本で『ロマン主義のレトリック』『美学イデオロギー』に分散されている晩年の連続講演のうち最後のベンヤミン論と対談が最後に載せられている
すべての概念の基盤である確実性の概念そのものが、ヘーゲルにおけるような無媒介の確信であれ、デカルトにおけるような間接的な妄想であれ、感覚的な経験との関係においてのみ生じるものであるからだ。もしも意識（あるいは経験、心、主体、言説、顔）が存在するとしたなら、それは現象化が可能でなければならない。しかし、経験の現象性はア・プリオリに確立できるものではなく、意味作用の過程によってのみ生起しうるのである。意味するものの現象的、感覚的属性は、意味されるものが、究極的には指示対象が、たしかに存在することの保証とならねばならない。106
エロティックなものは、感覚体験の高揚したかたちというよりは、むしろそうした経験を可能にする比喩表現である。われわれは愛するものを見るのではなく、なにものかを見ているのだという幻想を確認したいがゆえに愛するのである。116
美的な力を意志の道具として鋭く意識しているニーチェは、警告する。快あるいは苦痛に基づく判断は、「想像しうる限り最も馬鹿げた判断の表現である。もちろん私［ニーチェ］は、だからといって、そのような仕方の判断が間違いなく馬鹿げていると言っているのではないが」。美的反応は中心的原因とはみなしえず、些細な副作用と考えるしかない。「それは中心的で支配的な価値から派生した二義的な価値判断であり、また害益を純粋に感情的な仕方で考えるがゆえに、絶対的に不安定で依存的なのである」。歴史家や批判哲学者に美的反応が少なからぬ関心を呼び起こすというのは、体系的であるというよりも散発的なものであり、その誤謬をもたらす力が他の原因の存在を教えてくれるかぎりにおいて、哲学的に意味を持つのである。135
ヘーゲルが美的なものを暫定的な認識形式と論じたことは、多くの誤解を招いてきたが、それはキルケゴールとニーチェという彼の後継者の精神にも見られるのである。このことはとりわけ、美的なるものが明晰と制御へつながるものとして引き合いに出されるときにはいつも、別な言葉でいうなら、ある症候がそれによって示される病気の治療手段に変えられてしまうときにはいつも、おおいに警戒する必要があることを意味する。135
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