「成田空港の用地取得は、きれいごとだけではすすめられなかった」
反対派農民からの信頼を得るために、反対派農家との政略結婚、法律すれすれの「不正」交渉、高級官僚の隠密訪問、反対派リーダーの連帯保証人引き受け、といった驚愕の裏話に溢れる。反対派から「反対運動切り崩しの張本人」と見られたことで、警察による自宅警備、ストレスの圧し掛かった妻はクモ膜下出血によって“戦死”、ゲリラ攻撃による自宅爆破も受けた。その手腕を評価されたことで、著者前田氏の活動は、次第に組織の枠を超えた「特命」を帯びる。
一方で、霞が関の運輸省官僚は、「殺戮など当たり前だった」現場を空港公団の「石ころ」たるノンキャリアに任せきり、反対住民の陳情は門前払いという杓子定規ぶり、さらには手柄競争などの縄張り主義といった”公務員体質”が浮かび上がる。93年に国が非を詫びた「シンポジウム・円卓会議」は反対派の「本体」が参加せず、”最後の最後で””決着の詰めが甘かった”。
著者は、成田空港が未だ完全開港できない現状に不満を述べる。
「私の活動報告をひもといてもらえば、確かに移転を確約した農民がいる。何年以内に土地を明け渡すと書かれた覚え書もある。なのになぜ、現在の空港会社用地部は、そういう農民や元支援学生に対して毅然とした態度を取らないのか。…(移転して行った)彼らの協力に報いるためにも、一日も早く成田空港が完全空港となるように、鋭意努力するべきではないのか」
(エピローグ”国家事業を憂える”「国益とは、国家事業とは」)
公共事業における地元住民との交渉をどう進めるべきか、本書は示唆に富んでいると思う。
>民営化後の空港公団について、北側延長工事等を中心とした現在の成田問題について、
>第二作を執筆することをお約束し、筆を擱きたい
羽田の国際ターミナル開業や、成田スカイアクセス線の開通など、状況は大きく変化しつつある。第二作を期待したい。
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特命交渉人用地屋 単行本 – 2005/7/1
前田 伸夫
(著)
- 本の長さ285ページ
- 言語日本語
- 出版社アスコム
- 発売日2005/7/1
- ISBN-10477620259X
- ISBN-13978-4776202592
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登録情報
- 出版社 : アスコム (2005/7/1)
- 発売日 : 2005/7/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 285ページ
- ISBN-10 : 477620259X
- ISBN-13 : 978-4776202592
- Amazon 売れ筋ランキング: - 148,998位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
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2010年8月22日に日本でレビュー済み
2009年2月19日に日本でレビュー済み
内容については、他のレビューにあるとおり。
事実を、自分に都合よく改変してあるところもあるかもしれないが、全部うそということもないと思う。
成田問題裏面史を知る上で、とても参考になる。
しかし、
(1)過激派が農地を荒らす様を、農家出身者として許せなかったというようなことを書いておきながら、反対派農家の農地に、わざと余分に除草剤をまいて、謝りに行くという名目で交渉した
(2)自分から立ち退いていった農家に報いるためにも、空港を完成させなければならない、ということを書いておきながら、占い師に嘘を言わせて立ち退かせたということをとうとうと書いている
といったあたりで、著者のモラル感覚を相当に疑わせる部分があるのも事実である。
他にも自分は常に冷静だったと書きながら、過激派に追われて仲間を見捨てて逃げたがそれも仕方ない、と書いてあるくだりもある。
全体的に、自分のことを棚にあげながら、自分と利害が対立している人を批判しすぎで、非常に後味が良くない。そんなに立派な人間なのかよ、と言いたくなる。
事実を、自分に都合よく改変してあるところもあるかもしれないが、全部うそということもないと思う。
成田問題裏面史を知る上で、とても参考になる。
しかし、
(1)過激派が農地を荒らす様を、農家出身者として許せなかったというようなことを書いておきながら、反対派農家の農地に、わざと余分に除草剤をまいて、謝りに行くという名目で交渉した
(2)自分から立ち退いていった農家に報いるためにも、空港を完成させなければならない、ということを書いておきながら、占い師に嘘を言わせて立ち退かせたということをとうとうと書いている
といったあたりで、著者のモラル感覚を相当に疑わせる部分があるのも事実である。
他にも自分は常に冷静だったと書きながら、過激派に追われて仲間を見捨てて逃げたがそれも仕方ない、と書いてあるくだりもある。
全体的に、自分のことを棚にあげながら、自分と利害が対立している人を批判しすぎで、非常に後味が良くない。そんなに立派な人間なのかよ、と言いたくなる。
2006年5月12日に日本でレビュー済み
著者の苦労には本当に頭が下がる。
千葉県収用委員会が、なぜ16年間も空白だったのか、この貴重な証言でよく理解できた。
命がけの測量調査、深夜の墓地侵入、自宅の爆破事件など、読んでいてハラハラ、ドキドキ、迫力満点である。
「土地収用法」という伝家の宝刀がいくらバックにあるといっても、著者の言うとおり、土地所有者や、地元関係者の人々との信頼関係が生じないと用地交渉はうまく進展しないのであろう。それはすべての交渉ごとに通じるものがあり、西郷と江戸城無血開城の交渉をした勝海舟も確か自伝で同じことを証言していた。
地元有力者の娘さんと職員との政略結婚の記述などは、一種ユーモアを感じさせる場面で、そこに著者の人柄が表れていて、救いでもあった。
千葉県収用委員会が、なぜ16年間も空白だったのか、この貴重な証言でよく理解できた。
命がけの測量調査、深夜の墓地侵入、自宅の爆破事件など、読んでいてハラハラ、ドキドキ、迫力満点である。
「土地収用法」という伝家の宝刀がいくらバックにあるといっても、著者の言うとおり、土地所有者や、地元関係者の人々との信頼関係が生じないと用地交渉はうまく進展しないのであろう。それはすべての交渉ごとに通じるものがあり、西郷と江戸城無血開城の交渉をした勝海舟も確か自伝で同じことを証言していた。
地元有力者の娘さんと職員との政略結婚の記述などは、一種ユーモアを感じさせる場面で、そこに著者の人柄が表れていて、救いでもあった。
2005年8月6日に日本でレビュー済み
面白かった。一晩で読んでしまいました。正直いって、成田空港問題の詳細はほとんど知りませんでした。なので、ちょっとわからないところもあったのですが、プロローグからかなり、引き込まれてしまいました。著者が進める交渉はまさに命がけで、よくここまでやるなあ、と思ってしまいますが、仕事にかける熱い想いが伝わってきました。この本以外にも昭和に起きた事件を振り返る本はいろいろ出ているようですが、これもおすすめの1冊です。