三菱重工ビル爆破は、革命家の意地を見せた出来事であった。
その後の俳句は、「狼」にふさわしい気品を感じた。
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棺一基 大道寺将司全句集 単行本 – 2012/4/3
大道寺将司
(著),
辺見庸(序文・跋文)
(著)
確定死刑囚として37年に及ぶ獄中生活を送る大道寺将司の全句集
棺一基(かんいっき)
四顧(しこ)茫々と
霞みけり
十七字において、かれは塗炭の苦しみをなめつづけ、十七字においてのみかれは、極限の個として、ひと知れずやっと自由なのだ。供述調書より起訴状より判決文より、較べるもおろか、句群にこそかれの真情は巧まず塗りこまれている。俳句にいまや全実存を託したのだ。
――辺見庸「〈奇しき生〉について 序のかわりに」より
大道寺将司は、東アジア反日武装戦線の"狼"部隊のリーダーであり、お召し列車爆破未遂事件(虹作戦)及び三菱重工爆破を含む3件の「連続企業爆破事件」を起こし、1975年逮捕、1979年東京地裁で死刑判決、1987年最高裁で死刑確定した。本書は、30年以上も死刑囚として、また血液癌と闘いながら獄中生活を送る大道寺将司が詠んだ1200句を収録した全句集。
本書出版にあたっては、作家であり(芥川賞受賞)詩人でもある(中原中也賞、高見順賞受賞)辺見庸が全面的に動き、実現させた。また辺見庸自身も脳溢血で倒れた後遺症と大腸癌と闘っている。
辺見庸による跋文では、二人が句を介して知り合い、面会を実現させ、血液癌から来る痛みに句を詠むことを諦めかけた大道寺を「とにかく書け」と励まし、全句集を実現させるまでの経緯が感動的に描かれている。
棺一基(かんいっき)
四顧(しこ)茫々と
霞みけり
十七字において、かれは塗炭の苦しみをなめつづけ、十七字においてのみかれは、極限の個として、ひと知れずやっと自由なのだ。供述調書より起訴状より判決文より、較べるもおろか、句群にこそかれの真情は巧まず塗りこまれている。俳句にいまや全実存を託したのだ。
――辺見庸「〈奇しき生〉について 序のかわりに」より
大道寺将司は、東アジア反日武装戦線の"狼"部隊のリーダーであり、お召し列車爆破未遂事件(虹作戦)及び三菱重工爆破を含む3件の「連続企業爆破事件」を起こし、1975年逮捕、1979年東京地裁で死刑判決、1987年最高裁で死刑確定した。本書は、30年以上も死刑囚として、また血液癌と闘いながら獄中生活を送る大道寺将司が詠んだ1200句を収録した全句集。
本書出版にあたっては、作家であり(芥川賞受賞)詩人でもある(中原中也賞、高見順賞受賞)辺見庸が全面的に動き、実現させた。また辺見庸自身も脳溢血で倒れた後遺症と大腸癌と闘っている。
辺見庸による跋文では、二人が句を介して知り合い、面会を実現させ、血液癌から来る痛みに句を詠むことを諦めかけた大道寺を「とにかく書け」と励まし、全句集を実現させるまでの経緯が感動的に描かれている。
- 本の長さ234ページ
- 言語日本語
- 出版社太田出版
- 発売日2012/4/3
- ISBN-104778313062
- ISBN-13978-4778313067
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商品の説明
著者について
1948年生まれ。東アジア反日武装戦線“狼”部隊のメンバーであり、お召列車爆破未遂事件(虹作戦)及び三菱重工爆破を含む3件の「連続企業爆破事件」を起こし、1975年逮捕、1979年東京地裁で死刑判決、1987年最高裁で死刑が確定した。2010年に癌(多発性骨髄腫)と判明、獄中で闘病生活を送っている。著作に『明けの星を見上げて』『死刑確定中』『友へ』『鴉の目』がある。
登録情報
- 出版社 : 太田出版 (2012/4/3)
- 発売日 : 2012/4/3
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 234ページ
- ISBN-10 : 4778313062
- ISBN-13 : 978-4778313067
- Amazon 売れ筋ランキング: - 534,284位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2013年10月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
今年の一行詩大賞に選ばれたそうですが、この『棺一基』を知ったのはある新聞のコラム。
そこには坂口弘の歌稿も含めて「ことの是非を超えているとだけは言い得るかもしれない」と書かれていましたが、ぼくもそれ以上の言葉は思い浮かばないといいまか、一句一句が重いとしかいいようがない句を引用するだけで十分だと思います。
死者たちに 如何にして詫ぶ 赤とんぼ
国ありて生くるにあらず散紅葉(ちりもみじ)
彼岸花 別して黙す ことひとつ
ゲバラ忌や小声で歌ふ革命歌
鬼ならぬ 身の鬼として 逝く秋か
死ぬるため 夜の独居に 羽蟻来む
方寸に 悔数多くあり 麦の秋
そこには坂口弘の歌稿も含めて「ことの是非を超えているとだけは言い得るかもしれない」と書かれていましたが、ぼくもそれ以上の言葉は思い浮かばないといいまか、一句一句が重いとしかいいようがない句を引用するだけで十分だと思います。
死者たちに 如何にして詫ぶ 赤とんぼ
国ありて生くるにあらず散紅葉(ちりもみじ)
彼岸花 別して黙す ことひとつ
ゲバラ忌や小声で歌ふ革命歌
鬼ならぬ 身の鬼として 逝く秋か
死ぬるため 夜の独居に 羽蟻来む
方寸に 悔数多くあり 麦の秋
2012年5月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
何もしなかった私が無罪で、こんなイイ顔をした人が処刑されなけれならないのは、実に辛いことではありませんか?
罪を悔いるとか悔いないとかという次元を超えて、大道寺さんには・・・死の覚悟があるのだろう!・・・とは思うのですが・・・そうでなければ・・・あんなイイ顔にはなれる筈がないでしょうけれど・・・そうは思いながら・・・このまま、この人を殺してしまってイイのだろうか?・・・という想いを拭い去ることが出来ません。
そういう意味で、読むのが辛い一冊でした。
NHKで放映されたドキュメンタリーを観た後は、暫く、身動きが出来ない状態でした。
これを出版なさった貴社の叡智と勇気に感謝!
岡山市 田中 寛治
罪を悔いるとか悔いないとかという次元を超えて、大道寺さんには・・・死の覚悟があるのだろう!・・・とは思うのですが・・・そうでなければ・・・あんなイイ顔にはなれる筈がないでしょうけれど・・・そうは思いながら・・・このまま、この人を殺してしまってイイのだろうか?・・・という想いを拭い去ることが出来ません。
そういう意味で、読むのが辛い一冊でした。
NHKで放映されたドキュメンタリーを観た後は、暫く、身動きが出来ない状態でした。
これを出版なさった貴社の叡智と勇気に感謝!
岡山市 田中 寛治
2013年5月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
死刑囚とはいえ、精神の高さを感じるし、知性と覚悟が見える。本当の俳句である。
2012年5月11日に日本でレビュー済み
「棺一基」大道寺将司全句集を読む
ネットで、購入を申し込んでから、何と、珍しく、10日以上も、入手に時間を要した。約1200句程度に、選ばれた句集の出版である。作者の存在自体が、既に、一部の団塊の世代か、全共闘世代の記憶の片隅にしか、遺されていないようであろうし、又、1974年丸の内三菱重工本社ビルの爆弾テロ自体を、今や、覚えている人も、少ないであろう。そして、作者は、その為に、死者8名、負傷者376名を出した一連の爆弾テロの実行犯で、1987年死刑が確定したものである。5・7・5の17文字に、想いを託した俳句は、その情景美を、或いは、その時の心情を、凝縮させて、表現するものであり、それは、実際に、眼の前で、観られたり感じられたものをベースにするものの、作者は、既に、29歳の時には、獄舎に繋がれ、今日まで、日々、処刑の執行を迫られながら、作句したものである。出版に尽力した辺見庸が、跋文や、序文で、言っているように、忘却する者が、記憶する者を裁くことが出来るであろうか?忘却が記憶を食い破っている。私達は、辺見の言うように、確かに、単に記憶をごっそり抜かれた人の群れ(モッブ)ではないかと、、、、、、。この句集を詠みながら、考えさせられる。言葉の裏の裏を、作者との戦いの中で、一言一句を慮らないと、心情の底の底が、なかなか、読み取れない。確かに、作者は、花や動物や昆虫や景色になぞらえて、その獄舎の中にある心情や懺悔を、その記憶と想像力の中で、言葉を、推敲し、紡ぎながら、作句してゆく。桜、紅葉、梅、柿、紫陽花、木の芽、麦、蓮、向日葵、萩、百合、椿、木犀の香、木の実、各種の草、彼岸花、竜胆、銀杏、矢車草、コスモス、菜の花、百日草、実南天、こぶし、すすき、等、夜の星、雲、春夏秋冬の太陽、夕焼け、茜空、色々な雨、風、雪、満月、三日月、明かり、霧、霞、朧、つらら、氷、露、闇、暁、象徴的な「虹」(ヒロヒト暗殺未遂作戦)、枯野、十字路、空の色、そして、数多くの動物、昆虫、ヒキガエル、みみず、蝉、蛍、なめくじ、かたつむり、毛虫、蜘蛛、かまどうま、赤とんぼ、てんとう虫、蟻、蝿、ひぐらし、つくつくほうし、もず、つばめ、野ウサギ、ふくろう、雁、鷹、カラス、海鳥、なまこ、蛇、猫、象徴的な「狼」、そして、それらは、やがて、東日本大震災と原発事故へと、拡がりをみせる。置き去りにされた牛、犬、錆に、放射能に、海の底へ、どれ一つをとっても、油断がならない。そこに、香りを、匂いを、色を、光と陰を、そして、その「記憶の底に宿る心情」を、17文字に凝縮して、極限の自由を塗り込めているようである。自分勝手に、選んだ句を整理、抜粋してみたが、多すぎて、ここでは、敢えて、是非、皆さんに、自由に、読んで選んでもらいたいものである。それでも、やはり、敢えて、数句選べば、本書の題名になったこの句他、下記のものであろうか、
「棺一基四顧茫々と霞みけり」
「実存を賭して手を擦る冬の蝿」
「暗闇の陰翳刻む初蛍」
「時として思ひの滾(たぎ)る寒茜」
結局、だんだん、多くなってきてしまったので、止めることにしよう。
「しがらみを捨つれば開く蓮の花」
「うつそみの置きどころなき花吹雪」
「再びは還り来ぬ日の木の実かな」
「海鳥の一声高く海氷る」
「鈍(にび)色(いろ)の空置き去りに帰る雁」
「紫陽花の哀しみ色の尽くしけり」
「彼岸花別して黙すことひとつ」
多発性骨髄腫を患う作者は、自らを、敢えて、子規に、なぞらえてもよいのではないだろうか
「よるべなきことのは紡ぐほととぎす」
昔のことになるが、投獄された詩人の金芝河や、収容所列島のソルジェニーツェンや永山則夫を、想わざるを得ない。是非、事件に記憶のない若い人にこそ、読んでもらいたい句集である。事件の被害者との関係性に於いてしか存在し得ない作者の立ち位置を、改めて考えながら、読む必要があろうが、、、、、。世に送り出した辺見庸氏と発行元の太田出版に、改めて、敬意を表したいものである。
その他、書評は、ブログ 「小諸 布引便り」で、お願いします。
ネットで、購入を申し込んでから、何と、珍しく、10日以上も、入手に時間を要した。約1200句程度に、選ばれた句集の出版である。作者の存在自体が、既に、一部の団塊の世代か、全共闘世代の記憶の片隅にしか、遺されていないようであろうし、又、1974年丸の内三菱重工本社ビルの爆弾テロ自体を、今や、覚えている人も、少ないであろう。そして、作者は、その為に、死者8名、負傷者376名を出した一連の爆弾テロの実行犯で、1987年死刑が確定したものである。5・7・5の17文字に、想いを託した俳句は、その情景美を、或いは、その時の心情を、凝縮させて、表現するものであり、それは、実際に、眼の前で、観られたり感じられたものをベースにするものの、作者は、既に、29歳の時には、獄舎に繋がれ、今日まで、日々、処刑の執行を迫られながら、作句したものである。出版に尽力した辺見庸が、跋文や、序文で、言っているように、忘却する者が、記憶する者を裁くことが出来るであろうか?忘却が記憶を食い破っている。私達は、辺見の言うように、確かに、単に記憶をごっそり抜かれた人の群れ(モッブ)ではないかと、、、、、、。この句集を詠みながら、考えさせられる。言葉の裏の裏を、作者との戦いの中で、一言一句を慮らないと、心情の底の底が、なかなか、読み取れない。確かに、作者は、花や動物や昆虫や景色になぞらえて、その獄舎の中にある心情や懺悔を、その記憶と想像力の中で、言葉を、推敲し、紡ぎながら、作句してゆく。桜、紅葉、梅、柿、紫陽花、木の芽、麦、蓮、向日葵、萩、百合、椿、木犀の香、木の実、各種の草、彼岸花、竜胆、銀杏、矢車草、コスモス、菜の花、百日草、実南天、こぶし、すすき、等、夜の星、雲、春夏秋冬の太陽、夕焼け、茜空、色々な雨、風、雪、満月、三日月、明かり、霧、霞、朧、つらら、氷、露、闇、暁、象徴的な「虹」(ヒロヒト暗殺未遂作戦)、枯野、十字路、空の色、そして、数多くの動物、昆虫、ヒキガエル、みみず、蝉、蛍、なめくじ、かたつむり、毛虫、蜘蛛、かまどうま、赤とんぼ、てんとう虫、蟻、蝿、ひぐらし、つくつくほうし、もず、つばめ、野ウサギ、ふくろう、雁、鷹、カラス、海鳥、なまこ、蛇、猫、象徴的な「狼」、そして、それらは、やがて、東日本大震災と原発事故へと、拡がりをみせる。置き去りにされた牛、犬、錆に、放射能に、海の底へ、どれ一つをとっても、油断がならない。そこに、香りを、匂いを、色を、光と陰を、そして、その「記憶の底に宿る心情」を、17文字に凝縮して、極限の自由を塗り込めているようである。自分勝手に、選んだ句を整理、抜粋してみたが、多すぎて、ここでは、敢えて、是非、皆さんに、自由に、読んで選んでもらいたいものである。それでも、やはり、敢えて、数句選べば、本書の題名になったこの句他、下記のものであろうか、
「棺一基四顧茫々と霞みけり」
「実存を賭して手を擦る冬の蝿」
「暗闇の陰翳刻む初蛍」
「時として思ひの滾(たぎ)る寒茜」
結局、だんだん、多くなってきてしまったので、止めることにしよう。
「しがらみを捨つれば開く蓮の花」
「うつそみの置きどころなき花吹雪」
「再びは還り来ぬ日の木の実かな」
「海鳥の一声高く海氷る」
「鈍(にび)色(いろ)の空置き去りに帰る雁」
「紫陽花の哀しみ色の尽くしけり」
「彼岸花別して黙すことひとつ」
多発性骨髄腫を患う作者は、自らを、敢えて、子規に、なぞらえてもよいのではないだろうか
「よるべなきことのは紡ぐほととぎす」
昔のことになるが、投獄された詩人の金芝河や、収容所列島のソルジェニーツェンや永山則夫を、想わざるを得ない。是非、事件に記憶のない若い人にこそ、読んでもらいたい句集である。事件の被害者との関係性に於いてしか存在し得ない作者の立ち位置を、改めて考えながら、読む必要があろうが、、、、、。世に送り出した辺見庸氏と発行元の太田出版に、改めて、敬意を表したいものである。
その他、書評は、ブログ 「小諸 布引便り」で、お願いします。
2014年5月22日に日本でレビュー済み
投獄されている者の歌集は何冊か読みましたが、
句集は今回が初めてです。
せっかく大道寺死刑囚が、限られた空間・時間の中で俳句を詠んでいるのに、
それをまとめた辺見庸のコラムが邪魔をしている。
死刑制度の賛否なんて、私にはどうでもよいことだし、
あれだけ人々を不幸のどん底に陥れていて、
死刑の賛否を問う無神経さが私には信じられない。
辺見庸のコラムがなければ、もっとこの句集は輝いたことだろう。
句集は今回が初めてです。
せっかく大道寺死刑囚が、限られた空間・時間の中で俳句を詠んでいるのに、
それをまとめた辺見庸のコラムが邪魔をしている。
死刑制度の賛否なんて、私にはどうでもよいことだし、
あれだけ人々を不幸のどん底に陥れていて、
死刑の賛否を問う無神経さが私には信じられない。
辺見庸のコラムがなければ、もっとこの句集は輝いたことだろう。