アメリカの大都市にはゲットーと呼ばれる、他から隔絶されたかのような貧困地区が存在し、そこには貧しい黒人、最近ではヒスパニックあるいはラティーノと呼ばれる人々が集中している。大抵のアメリカ人にとって、ゲットーといえば犯罪と暴力の渦巻く危険な場所か、あるいは貧困と絶望のみが支配する「哀れな人々」の居住地、そうでなければ怠惰で無知で粗暴な人のみが住む自業自得の連中の流刑地。そんなイメージである。日本の少なからぬ人々にとっても、そんな感じだろうと思われる。
本書を読むと、そうした印象はメディアや学者に主導された一面的なものでしかないことがわかる。1〜2章では、「ゲットー」の人々の日常や生活様式や文化がもつ意外な側面が明らかにされる。「(良くも悪くも)黒人らしい文化の典型」と思われていたゲットーの黒人大衆文化がもっている別の顔、そして貧しい黒人の若者にとってバスケットボールやグラフィティやブレイクダンスなどの「遊び」がもっている深い意味。3〜4章は、日本の読者にはなじみが薄いが、重要な争点が論じられている。保守的「自助努力」派や自称「リベラル」に対して容赦ない批判が浴びせられる。第5章では、日本どころかアメリカでもそれほど注目されることのない、実際に展開されていた新しい抵抗運動の形が紹介される。エピローグは、示唆に富んだシミュレーション小説風のエッセイ。
日本語版への序文はカトリーナなどにも言及して情報をアップデートしているが、原著が刊行されて10年がたった今でも本書の議論は新鮮である。
アメリカ社会を知るためにも、日本の「下流社会」「ワーキングプア」「フリーター」云々を語る前にも必読の書。
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ゲットーを捏造する: アメリカにおける都市危機の表象 単行本 – 2007/4/1
- 本の長さ327ページ
- 言語日本語
- 出版社彩流社
- 発売日2007/4/1
- ISBN-10477911246X
- ISBN-13978-4779112461
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登録情報
- 出版社 : 彩流社 (2007/4/1)
- 発売日 : 2007/4/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 327ページ
- ISBN-10 : 477911246X
- ISBN-13 : 978-4779112461
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,299,146位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 453位アメリカ・中南米の地理・地域研究
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- - 112,401位ビジネス・経済 (本)
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