原著は『バルサとフランコ体制。カタルーニャにとって決定的だった数年間の年代記』
とやや堅い題名である。邦題も勢いがあってよい。訳者は当然ながらバルサファン。
ただし内容は、おそらくバルサファンが期待するようなものとは少し違う。
カタルーニャ文化の独自性は、日本でもしだいに知られるようになってきた。
しかし日本人による紹介は、当然ながら、距離を置いた第三者の視点からになる。
本書は、カタルーニャ語で書かれたカタルーニャ・ナショナリズム本である。
研究者らしい慎重な態度だが堅苦しい文章ではないので、軽快に読み進めることができる。
今ではサッカーファンならずとも名前は知っているビッグクラブ、FCバルセロナ。
はじめは一地方の小さなサッカー・クラブとして始まったバルサは、カタルーニャ・
ナショナリズムの動きと連動しつつ(例えばレアル・マドリードとの深い歴史的因縁)、
次第にフランコ体制への抵抗のシンボルとなる。
そこには意図的な要素もあるが(1969年末に就任した会長ムンタルの執行部には左派的な傾向が強かった)、
そう単純ではない。むしろ本書はそうした図式化に対して慎重であり、どちらかいうと、意図せずして
バルセローナ民衆の自生的運動の核となったという面が強く印象に残った。
本書で描かれるカタルーニャ・ナショナリズムは、カタルーニャ人である著者にとっては、
フランコ体制への抵抗として当然であり、あえて正当化される必要がないほど自然なものである。
そうした、なまのカタルーニャ・ナショナリズムの言葉を読めるという点は本書の傑出した意義である。
しかし、(著者がそう言っているわけではないが)抵抗のナショナリズムは善である、
と素朴にいえるわけではない。また訳者が注意するように、ポスト・フランコ体制の「勝者」の立場から
書かれた歴史であることも肝に銘じておく必要がある。
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バルサ、バルサ、バルサ!: スペイン現代史とフットボール 1968~78 単行本 – 2007/6/1
- 本の長さ275ページ
- 言語日本語
- 出版社彩流社
- 発売日2007/6/1
- ISBN-104779112656
- ISBN-13978-4779112652
登録情報
- 出版社 : 彩流社 (2007/6/1)
- 発売日 : 2007/6/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 275ページ
- ISBN-10 : 4779112656
- ISBN-13 : 978-4779112652
- Amazon 売れ筋ランキング: - 551,046位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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