ナカニシヤが出していますね。標題からは「ゆとり教育」が大學に何の様な影響を与えたのかを論じる「大學論」かと思いましたが、「ゆとり教育」は本書の内容とはあまり關係有りません。本書を落手した時点では、學生さんを使った宣傳ではないか、という疑念が幾らかありましたが、その様なものでも無く、特に後半の座談会は興味深い内容で読了までに可成りの時間を要しました。
本書のテーマは教養教育のあり方で、大學全体の論では有りませんが、寄稿者や座談会の發謂者は其の點を明確に區別していない部分もあります。一般教養は元々高等學校で教えて居て、其れが一つの教育過程として完結して居ましたが、GHQの介入による學生変更で旧制高校が大學の教養部となった事が此の問題の根っ子にあります。本来は現在の高等學校が中學校の中途半端な延長に過ぎない現状に目を向けて、六三三四制への疑問から入って行く可きですが、現状の枠内での議論になっているのは少々残念です。恐らく人間・環境学研究科と総合人間学部の改組問題から出發しているからでしょう。問題の本質は新自由主義経済(グローバリズム)の影響(ISBN-13: 978-4797399882)、つまり大學を効率の良い經濟装置化の場にしようという思想ですが、本書で其の事に触れてているのは二人だけです。「大學ランキング」も所詮はグローバリズムの拠点形成を意図した宣傳工作ですが、其の様な指標を信じて居ると大學は専門學校化し本来の教養と知性が失われて行きます。
冒頭の益川教授への「インタビュー」ではキックオフになる論点を聞きに行った様ですが、月並みな一般論になっていて京大については殆ど語っておらず余り讀み応えがありませんでした。第一部は他大學出身者を含む京大の教官や京大出身で他大學の教官になっている十三名から集めた教養(教育)とは何かに就いての寄稿集です。何名かは「国際高等教育院」の影響を受ける当事者ですが、自分達の主張ばかりを並べていて、闘おうとしている相手の主張が何か、それを何の様に論破せんとしているのか見えてきません。中には自分の専門分野に引っ掛けた比喩で終わって居る御仁も見受けられ、論戦とは程遠い。夫々が自分の主観で謂いたい事を言って其の儘発散、、、エッセイとしては其れなりに面白いのですが、、、核心を突いた話は新自由主義の問題を指摘している佐伯先生と毛利先生、高校教育に目を向けて居る山際先生ぐらいでしょう。「国際高等教育院」構想の本音が何か具体的な分析が無いので、単に現状維持の姿勢という印象を持たれても仕方が無いでしょう。推進派を連れて来て其の謂い分を検証する討論が欲しかったところですが、第二部で學生さんが此の點を指摘して居ます。
教養教育の問題は我國の高等教育が抱えて居る明治の開國以来の宿痾です。「教養について、ともに語りましょう」で明治以降の流れを要約していますが(p48〜)表面的な部分ですね。江戸期までに先人達が積み上げ熟成した教養を時代に合わせて新しく作り替える事が出来ず、傳統と断絶した上で西洋からの輸入物に置き換えようとした結果、我國の人文系高等教育は方向を間違えてしまいました(ISBN-13: 978-4584137963)。此れは明治維新に伴う社会構造の変化と大きく關係しています。更に戦後の大學制度では教養教育の完結性を壊して専門教育と一つにした屋上屋構造を作ってしまいました。そして、今度は教養教育を実務教育に置き換え知性の完全破壊に向かおうとしています。此れは画一化された高校の教育課程と表裏一体の問題で、其処から手を付けない限り堂々巡りの議論は何時迄も続く事でしょう。今後、高大連携が進んで突破口になれば良いですね。
第二部では四名の學生さんが第一部の原稿を讀んで討論に臨みます。一部の教官よりも學生さんの方が問題の本質を良く感じ取って率直に語って居ます。実務(スキル)と教養は區別出来て居ますが、専門分野の概説(abstracting, digesting)は教養の範疇と考えて居る様です。「multidisciplinary」の裾野部分は教養と重なる部分はあるものの、本来は専門的スキルの一つでしょう。「キャリア教育(実務教育)」が大學で為される可きか否か意見が分かれて居ますが、教養が疎かになる可らずという點では一致して居るようです。議論の發端である「国際高等教育院」との關係もあり英語の能力開発が話題になっていますが、自分にとって何がどこまで必要か學生さん達は良く見据えていて、上からの掛け声に惑わされては居ない様です。國語力と自國文化への理解がなければ英語での表現力も或る所から先には伸びません。つまり思考力とコンテンツ力の問題ですが、此れこそ教養教育に求められるものです。
「グローバル人材の育成」というお題目にも違和感を感じて居る様ですが、既にグローバルに活躍している多くの人材を輩出して居る京都大學で改めて其の様な掛け声は必要無いはずで、その本音が何か、もう少し突っ込みが欲しい所でした。また、「大學のユニバーサルアクセス化」は原因では無く結果ですが、新自由主義経済の問題を見据えた今後の議論を期待したいところです。「国際高等教育院」問題の事も含めて學生さん達は京大の中で対話が成立していないと感じていますが、此の第二部では背景も専門も異なる學生さんが集まって素晴らしい対話が成立していて、その教養の高さを感じさせられました。第一部には駄文もありましたが、第二部が良かったので其れを全体評價とします。
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ゆとり京大生の大学論―教員のホンネ、学生のギモン 単行本 – 2013/6/1
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学生たち自らが、東奔西走、侃侃諤諤、大学教育を問う!
突然の京都大学の教養教育改革を受けて、大学教員はどのような思いを語り、ゆとり世代と呼ばれた学生たちは何を議論したのか?
――学生たち自らが企画し、大学教育とは何か、教養教育とは何かを問い、議論した、読者を対話へと誘う白熱の大学論!
突然の京都大学の教養教育改革を受けて、大学教員はどのような思いを語り、ゆとり世代と呼ばれた学生たちは何を議論したのか?
――学生たち自らが企画し、大学教育とは何か、教養教育とは何かを問い、議論した、読者を対話へと誘う白熱の大学論!
- 本の長さ172ページ
- 言語日本語
- 出版社ナカニシヤ出版
- 発売日2013/6/1
- 寸法13 x 1.4 x 19 cm
- ISBN-104779507774
- ISBN-13978-4779507779
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商品の説明
著者について
主な執筆者紹介
益川敏英(ますかわ としひで)
名古屋大学素粒子宇宙起源研究機構長。京都大学名誉教授。京都産業大学益川塾塾頭。
河合 潤(かわい じゅん)
京都大学大学院工学研究科教授。
佐伯啓思(さえき けいし)
京都大学大学院人間・環境学研究科教授。
酒井 敏(さかい さとし)
京都大学大学院人間・環境学研究科教授。
阪上雅昭(さかがみ まさあき)
京都大学大学院人間・環境学研究科教授。
菅原和孝(すがわら かずよし)
京都大学大学院人間・環境学研究科教授。
杉原真晃(すぎはら まさあき)
山形大学基盤教育院准教授。
高橋由典(たかはし よしのり)
京都大学大学院人間・環境学研究科教授、同国際高等教育院教授。
戸田剛文(とだ たけふみ)
京都大学大学院人間・環境学研究科准教授。
橋本 勝(はしもと まさる)
富山大学大学教育支援センター教授、FD部門長。
毛利嘉孝(もうり よしたか)
東京芸術大学音楽学部音楽環境創造科准教授。
山極壽一(やまぎわ じゅいち)
京都大学大学院理学研究科教授。
山根 寛(やまね ひろし)
京都大学大学院医学研究科教授。
吉川左紀子(よしかわ さきこ)
京都大学こころの未来研究センター教授、センター長。
編者紹介
安達千李(あだち せんり)
京都大学大学院人間・環境学研究科。
新井翔太(あらい しょうた)
京都大学総合人間学部。
大久保杏奈(おおくぼ あんな)
京都大学大学院人間・環境学研究科。
竹内彩帆 (たけうち あやほ)
京都大学総合人間学部。
萩原広道 (はぎはら ひろみち)
京都大学医学部。
柳田真弘 (やなぎた まさひろ)
京都大学大学院人間・環境学研究科。
カバーイラスト=辻井タカヒロ
益川敏英(ますかわ としひで)
名古屋大学素粒子宇宙起源研究機構長。京都大学名誉教授。京都産業大学益川塾塾頭。
河合 潤(かわい じゅん)
京都大学大学院工学研究科教授。
佐伯啓思(さえき けいし)
京都大学大学院人間・環境学研究科教授。
酒井 敏(さかい さとし)
京都大学大学院人間・環境学研究科教授。
阪上雅昭(さかがみ まさあき)
京都大学大学院人間・環境学研究科教授。
菅原和孝(すがわら かずよし)
京都大学大学院人間・環境学研究科教授。
杉原真晃(すぎはら まさあき)
山形大学基盤教育院准教授。
高橋由典(たかはし よしのり)
京都大学大学院人間・環境学研究科教授、同国際高等教育院教授。
戸田剛文(とだ たけふみ)
京都大学大学院人間・環境学研究科准教授。
橋本 勝(はしもと まさる)
富山大学大学教育支援センター教授、FD部門長。
毛利嘉孝(もうり よしたか)
東京芸術大学音楽学部音楽環境創造科准教授。
山極壽一(やまぎわ じゅいち)
京都大学大学院理学研究科教授。
山根 寛(やまね ひろし)
京都大学大学院医学研究科教授。
吉川左紀子(よしかわ さきこ)
京都大学こころの未来研究センター教授、センター長。
編者紹介
安達千李(あだち せんり)
京都大学大学院人間・環境学研究科。
新井翔太(あらい しょうた)
京都大学総合人間学部。
大久保杏奈(おおくぼ あんな)
京都大学大学院人間・環境学研究科。
竹内彩帆 (たけうち あやほ)
京都大学総合人間学部。
萩原広道 (はぎはら ひろみち)
京都大学医学部。
柳田真弘 (やなぎた まさひろ)
京都大学大学院人間・環境学研究科。
カバーイラスト=辻井タカヒロ
登録情報
- 出版社 : ナカニシヤ出版 (2013/6/1)
- 発売日 : 2013/6/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 172ページ
- ISBN-10 : 4779507774
- ISBN-13 : 978-4779507779
- 寸法 : 13 x 1.4 x 19 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 606,397位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1980年京都大学理学部卒業,1981年京都大学教養部助手,1990年京都大学教養部助教授,1992年京都大学総合人間学部助教授,2004年京都大学人間・環境学研究科助教授,2009年京都大学人間・環境学研究科教授.京大理博
京都大学大学院工学研究科材料工学専攻教授
1982年 東京大学工学部工業化学科卒、2001年から現職
専門はX線分析、分析化学など
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2016年11月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
大学とは何かを考える一つの材料と思った。特段京大性でなくてもいいのではないか。
2016年1月6日に日本でレビュー済み
一部の京大生が大学の組織と制度の変革に乗っかって、若さと勢いで急拵えした本です。
2、3年前、京大が教養教育に関する組織編成と制度を変えようとした時期があったのですが、その当時この変革のために某学部・研究科がなくなるという噂がたちました。
その噂に喚起された一部の学生が出版した本です。
その噂がたってからすぐに出版されたので、その制作スピードとタイミングのよさにはシャッポを脱がざるを得ません。
まあこの噂は嘘でしたが、この「某学部・研究科」には社会的な問題がある先生方も一部いらっしゃったので、「教育改革という形でメスが入ってもおかしくない」と私はため息をついていました。
いや、素晴らしい先生方もたくさんいらっしゃいますし、恩師も所属していらっしゃるんですけどね。
この本は、幅広い年代と専門分野の先生方と京大OB(でも人選が片寄ってる)の大学教育に関するご意見や体験談と、執筆した学生の議論から成り立ちます。
その先生方の中には、益川さんや現学長もいらっしゃいます。
よいところはずばり、この内容のボリュームです。お得です。
もちろん悪いところもあります。しかも大きく分けてふたつ。
ひとつは学生が執筆した部分の情報の信頼性が低いこと。
学部生や修士課程の院生が書いたにしては、急拵えにしては、立派な本かもしれません。
しかし、最初のページからいきなり、2ちゃんねらーが「ソースはよ」と煽りそうな、そして地獄のミサワ風にいうと「それどこ情報?どこ情報よー?」と言いたくなるような信頼性が低い情報が現れます。
しかも執筆者は「その情報を受けてこの本の元になる企画を立てた」との趣旨を本書で述べています。
こんな情報が何ヵ所かにあり、私は思わず「情報の精選のために教養教育があるんだよ」と非論理的な発言をしました。
「どうせ本を書きたい、有名になりたいという欲望が先にあったがゆえに、情報の信頼性も考えない本を出版したのだろう。」
私はそんな無教養な考えすら持ちました。
ふたつ目の悪いところは思想的な偏りです。
そもそも執筆者とそのシンパともいうべき先生方はどうも左よりです。
なんせ「そのシンパともいうべき」先生方はこの変革に応じて学生運動のまがいごとをなさってたんですから。
そのせいか「幅広い年代と専門分野の先生方と京大OB」の「人選が片寄って」います。
例えばゲバラに影響受けまくった出版社の社長とか。
まあ、しかたないんでしょうか。
学生運動的イデオロギーや社会主義的イデオロギーという生きた化石の楽園ともいうべき大学ですから。
本書は、大学とは何かという意見や発想を先生方からおねだり...じゃなかったお聞きした話と、若さゆえに詰めの甘い箇所がひっかかる文章を、学生運動を彷彿とさせるノリで詰め込んだ本です。
そんな本書を読了し、私は地獄のミサワ風に言いました「若いね。」
2、3年前、京大が教養教育に関する組織編成と制度を変えようとした時期があったのですが、その当時この変革のために某学部・研究科がなくなるという噂がたちました。
その噂に喚起された一部の学生が出版した本です。
その噂がたってからすぐに出版されたので、その制作スピードとタイミングのよさにはシャッポを脱がざるを得ません。
まあこの噂は嘘でしたが、この「某学部・研究科」には社会的な問題がある先生方も一部いらっしゃったので、「教育改革という形でメスが入ってもおかしくない」と私はため息をついていました。
いや、素晴らしい先生方もたくさんいらっしゃいますし、恩師も所属していらっしゃるんですけどね。
この本は、幅広い年代と専門分野の先生方と京大OB(でも人選が片寄ってる)の大学教育に関するご意見や体験談と、執筆した学生の議論から成り立ちます。
その先生方の中には、益川さんや現学長もいらっしゃいます。
よいところはずばり、この内容のボリュームです。お得です。
もちろん悪いところもあります。しかも大きく分けてふたつ。
ひとつは学生が執筆した部分の情報の信頼性が低いこと。
学部生や修士課程の院生が書いたにしては、急拵えにしては、立派な本かもしれません。
しかし、最初のページからいきなり、2ちゃんねらーが「ソースはよ」と煽りそうな、そして地獄のミサワ風にいうと「それどこ情報?どこ情報よー?」と言いたくなるような信頼性が低い情報が現れます。
しかも執筆者は「その情報を受けてこの本の元になる企画を立てた」との趣旨を本書で述べています。
こんな情報が何ヵ所かにあり、私は思わず「情報の精選のために教養教育があるんだよ」と非論理的な発言をしました。
「どうせ本を書きたい、有名になりたいという欲望が先にあったがゆえに、情報の信頼性も考えない本を出版したのだろう。」
私はそんな無教養な考えすら持ちました。
ふたつ目の悪いところは思想的な偏りです。
そもそも執筆者とそのシンパともいうべき先生方はどうも左よりです。
なんせ「そのシンパともいうべき」先生方はこの変革に応じて学生運動のまがいごとをなさってたんですから。
そのせいか「幅広い年代と専門分野の先生方と京大OB」の「人選が片寄って」います。
例えばゲバラに影響受けまくった出版社の社長とか。
まあ、しかたないんでしょうか。
学生運動的イデオロギーや社会主義的イデオロギーという生きた化石の楽園ともいうべき大学ですから。
本書は、大学とは何かという意見や発想を先生方からおねだり...じゃなかったお聞きした話と、若さゆえに詰めの甘い箇所がひっかかる文章を、学生運動を彷彿とさせるノリで詰め込んだ本です。
そんな本書を読了し、私は地獄のミサワ風に言いました「若いね。」
2020年4月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
大学で何を学ぶか。現代の若者なりに考えていることがよくわかる。でも、ここに登場する学生たちは、明らかに意識の高い連中だね。
2013年6月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
京都大学松本総長の意向により突如推し進め始められた国際高等教育院構想に端を発し、教育や大学といったテーマに対し、まさに当事者であるはずが無視され続けている学生達と、これまた当事者であるはずの大学教員達の様々な想いや考えを寄稿やコラム、対談といった形でまとめ上げた一冊。
特定の意見のみを吸い上げるのでは無く、様々な意見を様々な形で載せてあり、最後まで楽しく読ませて頂きました。
特定の意見のみを吸い上げるのでは無く、様々な意見を様々な形で載せてあり、最後まで楽しく読ませて頂きました。
2013年6月25日に日本でレビュー済み
京大の国際高等教育院構想反対運動に端を発した、現役京大生たちによる大学論。
前半はさまざまな(京大関係者とは限らない)先生方おのおのの「教養教育論」で、
後半はそれを受けた学生たちの長い討論の記録。
前半の先生方の話もほとんどが大変率直でよいのですが
後半の討論が圧倒的に面白い。
「ゆとり」というレッテルを貼られた学生たちが
なにを大学の教養教育(的なもの)に求めているのかが浮き彫りになっていきます。
後半の討論はあくまで前半を受けてのものなので、前半部分が前提として必要なのは分かりますが
後半のおもしろさ・重要さに比べれば刺身のツマに過ぎないので
前半に出てくる先生の数をもっと削って、後半の討論をもっと推し進めて欲しかった。
もちろん京大独特の事情を踏まえた討論なのですが
きっと多くの大学における共通教育・教養教育の非常によい参考になると思われます。
とりあえず、京大の現総長やその周囲の意見が学生たちによって滅多打ちにされつつ
かといって反対する教員たちの意見にも完全には同意しない展開は、
読んでいてとても気持ちがよかったです。
本文中に出てくるミシマ社の社長さんの言うように、
「近頃の大学生はとってもいい」。
そう思わされる本でした。
前半はさまざまな(京大関係者とは限らない)先生方おのおのの「教養教育論」で、
後半はそれを受けた学生たちの長い討論の記録。
前半の先生方の話もほとんどが大変率直でよいのですが
後半の討論が圧倒的に面白い。
「ゆとり」というレッテルを貼られた学生たちが
なにを大学の教養教育(的なもの)に求めているのかが浮き彫りになっていきます。
後半の討論はあくまで前半を受けてのものなので、前半部分が前提として必要なのは分かりますが
後半のおもしろさ・重要さに比べれば刺身のツマに過ぎないので
前半に出てくる先生の数をもっと削って、後半の討論をもっと推し進めて欲しかった。
もちろん京大独特の事情を踏まえた討論なのですが
きっと多くの大学における共通教育・教養教育の非常によい参考になると思われます。
とりあえず、京大の現総長やその周囲の意見が学生たちによって滅多打ちにされつつ
かといって反対する教員たちの意見にも完全には同意しない展開は、
読んでいてとても気持ちがよかったです。
本文中に出てくるミシマ社の社長さんの言うように、
「近頃の大学生はとってもいい」。
そう思わされる本でした。
2015年3月5日に日本でレビュー済み
大学の先生方のお話も、学生さんのお話も大変興味深く読ませていただきました。
「ゆとり京大生の大学論」となっていますが、突き詰めていくと現代教育論になっていると思います。
中でも印象深かったのは、佐伯啓思先生の「…目に見える端的な成果を求められ、すぐに社会に役立つことを要求されるのです。私はそのような「余裕を失った」社会に強い嫌悪感をもちますし、…」全くその通りだ!と。
先生方の推薦図書や座談会の中での参考・引用図書も載っていて、この本自体とても教養高く、知的だと思います。
「ゆとり京大生の大学論」となっていますが、突き詰めていくと現代教育論になっていると思います。
中でも印象深かったのは、佐伯啓思先生の「…目に見える端的な成果を求められ、すぐに社会に役立つことを要求されるのです。私はそのような「余裕を失った」社会に強い嫌悪感をもちますし、…」全くその通りだ!と。
先生方の推薦図書や座談会の中での参考・引用図書も載っていて、この本自体とても教養高く、知的だと思います。