まず気になった点を先に言いますと本書は著者の選民思想的な考えに貫かれています。随所で何度も図書館長時代の元部下や地方自治体職員の意識の低さを非難し、｢せっかくチャンスを与えてやったのに｣的な上から目線を強く感じます。また利用者に対しても｢良い利用者｣と｢悪い利用者｣を峻別し、雑本を借りる暇人はいらない、議員など社会的地位の高い人に対するサービスを充実させたいと明確に述べています。
しかしこのような白黒はっきりつける態度が市民を賞賛するだけのほかの類書にはない明確な問題意識や課題解決につながっているのも事実です。書店との連携や学校への派遣、有料サービスへの模索などは著者が与えられた条件下で図書館の地域社会に果たすべき役割を真摯に考えた結果生まれてきたものです。在任中にできなかったことについてもかなり項数が割かれていることから著者が他人にも自分にも厳しい人間だと伺えます。
図書館の組織論や政治的な話にもかなり踏み込んでいるので、ただの成功体験を自慢する本とは違い、図書館の未来について真剣に考える意味で大変有意義な本です。
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