当方総合内科専門医、認知症診療に使ってます。
久々に見る名著。医師だけでなく介護者の方も読者に想定されているため、わかりやすい図式を用いて豊富な臨床例が示されている。
この著作では認知症治療のminimum requirementが惜しげもなく示されている。認知症治療には介護者の関与が必須なので、主にout patientを想定した本書は簡潔に認知症診療の最前線を示している。離散的な個々の具体例をの境界を埋めるものは、読者のイマジネーションであろうか・・・ 認知症診療は、まずはここからでしょう。
認知症の中核症状をセロトニン、ドーパミン、アセチルコリンの脳内物質のレベルからクリアカットに記述し、それらと認知症治療薬の関連性(アセチルコリンとドーパミンの拮抗作用等)を明示した著作は知る限り初めてである(使えない教科書的著作の数年先を行っている)。ATDとDLBでは脳内物質のレベルが異なった病態で、かつDLBには認知症治療薬過敏性がある。それゆえ治療方針・使用量も大きく異なる、が・・・今日の治療方針(2013)では同一処方が記載されているのには驚きを隠せない。これが認知症治療の現状なのか・・・。そういう状況にあって、本書では初回治療では何をすべきかなどをも明記しており、まさに”実戦”向きである。
現場に解かりやすい(介護者も読者と想定しているので)内容、広く(一見)浅くが本書の基本スタンスなので、安直なマニュアル本と誤解される場合もありそうな点が残念でならない(幅広い読者を想定すれば致し方ないが)。浅い読後感を持たれた方は、同じ著者による ”レビー小体型認知症 即効治療マニュアル” も合わせて読めば、この本のEBMの背景にある著者の臨床の分厚さ、そこまで言い切る根拠と著者の確信と覚悟の程度が解かる。レビー小体型・・・では、ATDとDLBの境界が何故不明瞭なのか(ATDは何故レビー化するのか・・)などもレビー小体の老人斑封入体仮説から考えれば合理性がある。ATD,DLBの鑑別が病理や画像でなく臨床診断に何故依拠し、どのように行うべきかが如何に重要なのか理解できよう。
セロクエルがそうであるように、アリセプトもアセチルコリンの下流では多くの標的分子を動かしているのであろう。だから、不確定多数のターゲット(標的分子)を対象とした治療では、漢方薬やサプリメントなど使用はrationaleがあると思う。抑肝散などの治療有効性もその証左のひとつであろう。以前勤務の病院でもDLBにはアリセプトは少量投与というのがセオリーであったが、まさにそのものズバリの症例が記載されている。病理や画像検査は認知症診療においては補助的手段に過ぎないので(画像で認知症を診断する医師には要注意!)、診断の重要なツールのHDS-RやCDTの使い方、また表情変化などSnap Diagnosisに役立つ具体的写真が記載されているのは大正解。
一定の病態下で診断名は変わりうる事は認知症以外の分野でも(例えばリウマチ診療)度々遭遇する。ATDのDLB化のシェーマなどに集約される病態変化を見越した処方戦略は・・・俯瞰すればするほど、奥が深い。診断名は時系列上の症状断面に過ぎない。そうした可変性のある病態に応じて治療薬剤を加減するのは当たり前であろう。が、その当たり前の医療行為が(レセプト上)出来にくい現状の中で、強烈なメッセージを内包した著作であるがゆえに、(重箱の隅をつつく、あるいは意味不明な)”抵抗勢力”からのバッシングも懸念されるところである・・・・それは、すなわちこの著作が認知症診療に一石を投じた証明に他ならない。
繰り返しになりますが、レビー小体型認知症 即効治療マニュアル も合わせて読めば 著者のメッセージの迫力が解かると思います。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
コウノメソッドでみる認知症診療 単行本 – 2012/10/1
河野 和彦
(著)
- 本の長さ239ページ
- 言語日本語
- 出版社日本醫事新報社
- 発売日2012/10/1
- ISBN-104784943536
- ISBN-13978-4784943531
登録情報
- 出版社 : 日本醫事新報社 (2012/10/1)
- 発売日 : 2012/10/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 239ページ
- ISBN-10 : 4784943536
- ISBN-13 : 978-4784943531
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,009,570位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 261位老年医学 (本)
- - 624位脳神経科学・神経内科学
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2013年9月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2013年7月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書は同著者の「認知症は治せる」が同症の身近な縁者、一般の関係者を勇気ずける本と理解すれば、
本書は、当該分野の医師、医療、介護、施薬など関係者を念頭に置いたものと云える。
本書は、専門的ではあるが、著者の長年にわたる多くの施療例が豊富であり、その内容は専門的で有りながら、
問題を抱える一般人が読んでも理解される様に用語の解説もあり、著者の治療姿勢や
人柄を覗える配慮が行き届いておるので、前記”…治せる”からもう一段、理解を深めたい一般人にも納得できる
ものと評価する。著者の提唱する”コウノメソッド”を世に問う臨床,実戦の書であり、いわゆる無味乾燥な「専門書」
とは一線を画した”実用書”として広く関心のある方々にお勧めしたいと思います。
以上
本書は、当該分野の医師、医療、介護、施薬など関係者を念頭に置いたものと云える。
本書は、専門的ではあるが、著者の長年にわたる多くの施療例が豊富であり、その内容は専門的で有りながら、
問題を抱える一般人が読んでも理解される様に用語の解説もあり、著者の治療姿勢や
人柄を覗える配慮が行き届いておるので、前記”…治せる”からもう一段、理解を深めたい一般人にも納得できる
ものと評価する。著者の提唱する”コウノメソッド”を世に問う臨床,実戦の書であり、いわゆる無味乾燥な「専門書」
とは一線を画した”実用書”として広く関心のある方々にお勧めしたいと思います。
以上
2017年7月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
勤務している精神病院から2週間に一度、特養に行くことになり、改めて購入しました。役に立っています。
2013年5月30日に日本でレビュー済み
理想論だけでは語ることができない認知症に、一石投じようとする志やよしだし、精神科主導の認知症治療が患者を不幸しているアンチテーゼともいえるが、いかんせん総合的科学的知識の統合レベルの危険性、臨床例を誇示する割にはそのセンスの懸念に若干疑問を抱いてしまうのが正直なところ。誰にも完全にわからない脳の世界を、そして認知症ですらその本体が解明されているわけでないのに、この単純且つ明快な切り口は、ある意味驚嘆する。それに追従する者がいるということは、逆に言えば現場の混乱を反映しているのだろうし、認知症を商売としている者がいるということを意味している。薬剤の使用法は、ある意味既存の医療を覆すものであるが、それ故に随筆のような姿勢で底の浅さを露呈している可能性もある。対抗できるだけの認知症を扱う医師があまりいないことが、跋扈を許容しているのかもしれない。
2014年5月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
認知症ガイドライン等、何冊も勉強しましたが、認知症診断と治療にはちっとも役立ちませんでした。
コウノメソッドは診断もシンプルで、現場に準拠していて判りやすく、治療のバリエーションも沢山乗せて頂いているので、凄く役立ちます。毎日、診療しながら、読み返しています。とにかく、コウノメソッドに則って治療すると、患者さんが良くなるのでびっくりです。レビーやピック病も詳しく載ってて、凄く役立ちます。認知症に関わる医師には100%お勧めです。
コウノメソッドは診断もシンプルで、現場に準拠していて判りやすく、治療のバリエーションも沢山乗せて頂いているので、凄く役立ちます。毎日、診療しながら、読み返しています。とにかく、コウノメソッドに則って治療すると、患者さんが良くなるのでびっくりです。レビーやピック病も詳しく載ってて、凄く役立ちます。認知症に関わる医師には100%お勧めです。
2013年6月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本を読んで認知症について色々考えさせられましたし、勉強になりました
2013年2月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
やはり筆者のおびただしい多くの臨床経験とは素晴らしいものだ。文句なしにこれまでの認知症の方々との経験がよみがえった。認知症関連学会でのさまざまな議論にあって、これほど実務に役立つ本はないように思えた。早速、臨床で活用させて戴き、周囲の方々にもお勧めした。
2012年11月5日に日本でレビュー済み
河野和彦先生は名古屋で認知症専門のクリニックを開いていらっしゃいます。日々の診療は「コクターコウノの認知症ブログ」をお読みいただけるとわかるかと思います。大学のお偉い先生(医師というよりも学者さん)の書かれた本は能書きばかりで、読了してもほとんど実践で役に立つことがありません。認知症治療薬のネガティブな面をきちんと記載した本などほとんどお目にかかることはありません。本書は、日本一認知症患者を診療していらっしゃる真のスペシャリストが実践的な知識と治療技術を書いた本です。BPSDのコントロールと介護者の安寧を優先する、診断よりも治療を優先するなど、医師としての視点にも学ぶべきものが多く、私の認知症医学書のおすすめです。薬剤はすべて投与量も提示されており、まさに臨床医のための実践本となっています。