まずは帯の「広島東洋カープ頂点へ―!!」は、作者の意図とはかけ離れた言葉だろう。
本当のカープファンはこういう空疎な掛け声を忌み嫌う。
好きだから、思っていてもそこが狂うとさっさとシーズンが「終わってしまう」ような言葉は口にしない。
作品は震災以降明確にオンタイムな時制でストーリーを進める、とんでもなく危険な賭けだ。
4コマ漫画ならパロディと自虐で成立するだろうが、
この話はその対極、決して「捨てない」気持ちに輝きを見出す作品なのだから。
だから当然、不条理なまでの現実のペナントレースの自滅っぷりよりも、
どんなに厳しいところに立っていても、明日もまた立ち上がる選手にスポットはあたる。
昨季のカープでそんな稀有の存在であったマエケンが昨シーズンの最後に見せた、
ノーヒットノーラン目前での暗転の場面は、
一人で背負わされるには悲痛だがチームとしてはお似合いのリアルドラマであり、
やはりカープは「持ってる」チーム、この球団と選手あってのストーリーであるなとつくづく思う。
この巻で語られる高橋建は、もうすでに弱い時代のカープの選手だ。
このチームでなければ、あの監督でなければもっと出来ただろう投手。
晩年はメジャーにも挑戦したほどに積極的な選手が、なぜこんな弱小チームを捨てなかったのか。
ファンの愛情が広島に彼を留め置いたのだと信じたい。
テラスシートで一人観戦する基町さんの言葉、「スタジアムではひとりになれない」。
これはこの作品の底流にある言葉であり、こんなシーンはもう何度もあったけれど、
作品の中で時は流れ、決して同じ風景ではないのだ。たとえば実央は卒業、そして進学。
そして気づく、あの赤い帽子の人にしてみれば、の視点に。
代わり映えしないスタジアムの風景は、同じように繰り返されていても歴史になる。
あんな監督(の今の話は決して語らず)が現役の頃には、女子中高生にキャーキャー言われていたとか、
ドラフトで騒がれた選手が、全く輝かず早くも忘れ去られようとしているとか、
人は、そんなプロ野球の題材を借りて、本当に語りたかった本音の話をし始めるものなのか。
一人じゃないと思えるのは、そばに同じ葛藤を抱える仲間がいることを知ることができるから。
みんな語りたいこと、叫びたいモヤモヤ、伝えたい賞賛があるのだと知ることができるから。
ホークス藤井選手の話は、確かに多くのファンに語り継ぎたい話だ。
あんなことは二度とごめんだが、この話もまた強く心に刻む。「好き」とはどういうことかを。
そして球場とは、それくらいは語れる、そういうことを語れる場なのだ。

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球場ラヴァ-ズ -私が野球に行く理由- (05) (ヤングキングコミックス) コミック – 2012/5/30
石田 敦子
(著)
- 本の長さ176ページ
- 言語日本語
- 出版社少年画報社
- 発売日2012/5/30
- ISBN-104785938501
- ISBN-13978-4785938505
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2012年6月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2012年8月25日に日本でレビュー済み
最近、ハマリにハマってる野球コミックの最新刊。お陰で、すっかり冷めていた野球への情熱も蘇り、また、カープというチームへの応援も始めてきた。とはいえ、このコミックは決してカープファンだけのものではない。
何と言っても、今回泣かせるエピソードは、ホークスの故・藤井投手の話。もちろん、彼の死については知ってはいたが、でも彼の死の裏側にこんなエピソードが隠されていたとは...自然と涙がこぼれ落ちた。この作者は、本当にカープだけではなく、野球を愛してるんだな。
他にもいいエピソードがある。マエケンが昨年、達成まで後少しまで来て逃したノーヒットノーランの話。まるで、今年のマエケンのノーヒットノーランの達成、そして、カープのCSシリーズへの進出を予言するかのような話だった。
にわかファンの自分だけど、今年の広島カープは、CSシリーズに出してあげたいなぁ。それぐらい魅力のあるチームに育ったしね。新球場でのCSシリーズ、広島は真っ赤に燃えるだろうね。
何と言っても、今回泣かせるエピソードは、ホークスの故・藤井投手の話。もちろん、彼の死については知ってはいたが、でも彼の死の裏側にこんなエピソードが隠されていたとは...自然と涙がこぼれ落ちた。この作者は、本当にカープだけではなく、野球を愛してるんだな。
他にもいいエピソードがある。マエケンが昨年、達成まで後少しまで来て逃したノーヒットノーランの話。まるで、今年のマエケンのノーヒットノーランの達成、そして、カープのCSシリーズへの進出を予言するかのような話だった。
にわかファンの自分だけど、今年の広島カープは、CSシリーズに出してあげたいなぁ。それぐらい魅力のあるチームに育ったしね。新球場でのCSシリーズ、広島は真っ赤に燃えるだろうね。
2017年4月13日に日本でレビュー済み
去年は勝った嬉しさ、今年は負けた悔しさを知るミオ。
今後も野球応援でいろいろ感じていくんだろうなー。
受験終わっておつかれ~!
今後も野球応援でいろいろ感じていくんだろうなー。
受験終わっておつかれ~!