「児童、生徒、学生が集まって体を動かす」ということが、近代日本において、どのような意味を持ってきたかを考える論文集。
いわゆる「運動会」の起源からプログラムの変遷はもちろん、幕末の慶應義塾の教育にみられる福沢諭吉の運動観、平成の幼稚園の運動会に対する提言など、多角的な視点を提供している。
各章の内容は以下のように独立しているので好きな順番で読める。
1章 ネーションの儀礼としての運動会
2章 福沢諭吉の運動会
3章 我が国の運動会の歴史
4章 明治政府の運動会政策
5章 近代の天皇制と明治神宮競技会
6章 幼稚園に「運動会」はいらない
予備知識に自信がない場合は、3章から読むのがおすすめである。
社会学系の専門用語や、幕末から戦前の文書などが、補足説明なしに用いられているので、ところにより読みにくく感じたり、辞書を引いたりしながら読んだ。
また紙数が限られていることもあり、テーマを深め切れていない部分が無きにしもあらずである。
それぞれの論文が注目するのは、「しごく普通の学校行事」として受け入れてられている運動会の背景にある、多様な思惑である。例えば「富国強兵」「天皇を中心とした国民意識の統合」「社会に対する批判」「戦意高揚」「「英才教育を期待する親の心理」など。
当事者がとりたてて意識していなくても、集団で行動することで、本人にも社会にも確実に影響を与えていく。学区住民の単純な「運動会を楽しみたい」という感覚から始めたことが政府の目的意識と対立するような場合もある。参加者の行動やプログラムといった目に見える事象と、主催者の思惑や参加者に与える心理効果といった目に見えない要素のつながりが、読みどころであろう。
題材はなじみ深くとっつきやすいが、集団での行動がどのような意味を持つかを根底から問う、深い思索に裏打ちされた一冊である。
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運動会と日本近代 (青弓社ライブラリー 6) 単行本 – 1999/12/1
吉見 俊哉
(著)
近代国家日本のイデオロギーと伝統的な民俗的祝祭・儀礼が接合された近代の祭りとしての側面をもつ運動会。近代社会システム構築の礎とされたその歴史を検証し、日本人の集合的無意識が顕現する場としての運動会を多角的に考察する。
- 本の長さ225ページ
- 言語日本語
- 出版社青弓社
- 発売日1999/12/1
- ISBN-104787231677
- ISBN-13978-4787231673
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
人々が民俗的記憶として培ってきた祭りを取り込みながら、近代的な社会システム構築の礎とされるその歴史を検証し、日本人の集団的無意識が顕現する場としての運動会を多角的に考察する。
登録情報
- 出版社 : 青弓社 (1999/12/1)
- 発売日 : 1999/12/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 225ページ
- ISBN-10 : 4787231677
- ISBN-13 : 978-4787231673
- Amazon 売れ筋ランキング: - 191,231位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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