ヴィレッジブックスは当たりが多いかもしれない。本書も相当の手応えを感じる一冊だ。
帯に「クラリス・スターリングをしのぐ女性FBI捜査官」。クラリスを引き合いに出したのは、この小説のヒロインが睡眠障害に陥っていて3時間以上眠れないという部分だろうか?
周囲の環境。フェミニズム。アルコール・タバコ・火器局の捜査員という恋人。精神分析医の友人。局内各部署の関係者など取り巻く環境などは、むしろクラリスよりはスカーぺッタのものに似ており、最近作品を切らしているコーンウェルの代用としてまずは読めそうだ、なんて最初は思ったくらいだった。
結果。傾向がまるで違っていた。環境が近いというそれだけだった。
検屍官シリーズはヒロインの周辺の書き込みが魅力的なシリーズだ。対して本書は事件そのものの異様な展開に引きずり込まれる。M・ウォルターズ『女彫刻家』を想起させるどんでん返し。しかも一度ならず! 驚愕の展開。真偽の掴めぬ容疑者。立場が変わる捜査官。二転三転する敵。本当のヒロインは果たしてどっちなのか?
さらに死刑の問題。神の問題。アメリカでカルトを扱えば避けて通れない神学論。古風なキリスト教の末裔について進められる捜査。信者や牧師の科白は、ぼくにはわかりにくい。イエスの再生を唱える教団についても然り。しかし彼らがアラモのような砦を構えているのは面白く思う。まあ、そういうものか。
そして死刑の問題。テキサスは死刑賛成派の占める土地だという。ヒロインは科学捜査研究所の長でありながら、テキサスでの冤罪が疑われる事件のために死刑執行日までの10日間だけ特別に捜査官として任命するよう長官に求める。州知事は死刑強行派であり、モデルはジョージ・ブッシュだろうと言われている。巻末解説では、ブッシュほど多くの処刑を決定した知事は近年のアメリカにいないとわかる。イラクとの緊張の日々がリアルタイムであるだけに納得しやすかったりする。
さて、死刑の方法は静脈注射による。本書でのテキサス人は、オールド・スパーキー(電気椅子)で人間が数分かけて焼け焦げるのを見たがっているように描かれているけれども。死刑囚が最後のグリーンマイルを挽かれるときに『デッド・ウーマン・ウォーキング』と看守たちが唱える。映画『デッドマン・ウォーキング』でのペンとサランドンのあのシーンが蘇るようだ。
思えばこの小説には様々なクライマックスがあった。前半と後半ではまるで別の小説のように展開した。ラストシーンについてもまるで違う物語のようだった。最後の最後まで目を離せない。やはりこれは二人の女性の強烈な個性の対決がテーマなのだと思う。読後感があまりにも強烈なため、内容について話をするわけにゆかないのがつくづく残念だ。
ともかくも『検屍官』、『女彫刻家』、『処刑室』をスクランブルしたようなストーリー。ステットソン帽とガンベルトが似合う美女ポピー・ライス。天使か悪魔かわからない女容疑者。これらが本書の面白さのキーワードである。
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テキサスは眠れない (ヴィレッジブックス F ス 4-1) 文庫 – 2002/12/1
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購入オプションとあわせ買い
真の聖女か希代の悪女か?死刑囚の素顔を知るタイムリミットはあと10日!
「あたくしは人の命を奪いました」———死刑執行まであと10日に迫ったロナ=リーは、マスコミのインタビューに聖女の微笑みを浮かべて答えていた。17年前「斧があの女をぶった切るたびに、はじけちゃった」と笑いながら人を殺した女性とはとても思えない。彼女はほんとうにそのような凄惨な殺人をやってのけたのだろうか?
どこか不自然なところを感じたFBIの女性捜査官ポピーは、現地テキサスへと飛び、事件の再調査を開始する。鋭い推理とタフな捜査で知られるポピーだが、限られた時間のなかで、真実を探り出せるのか?
緊迫感に満ちた本格サスペンス。
「あたくしは人の命を奪いました」———死刑執行まであと10日に迫ったロナ=リーは、マスコミのインタビューに聖女の微笑みを浮かべて答えていた。17年前「斧があの女をぶった切るたびに、はじけちゃった」と笑いながら人を殺した女性とはとても思えない。彼女はほんとうにそのような凄惨な殺人をやってのけたのだろうか?
どこか不自然なところを感じたFBIの女性捜査官ポピーは、現地テキサスへと飛び、事件の再調査を開始する。鋭い推理とタフな捜査で知られるポピーだが、限られた時間のなかで、真実を探り出せるのか?
緊迫感に満ちた本格サスペンス。
- 本の長さ498ページ
- 言語日本語
- 出版社ソニ-・ミュ-ジックソリュ-ションズ
- 発売日2002/12/1
- ISBN-104789719790
- ISBN-13978-4789719797
登録情報
- 出版社 : ソニ-・ミュ-ジックソリュ-ションズ (2002/12/1)
- 発売日 : 2002/12/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 498ページ
- ISBN-10 : 4789719790
- ISBN-13 : 978-4789719797
- Amazon 売れ筋ランキング: - 2,290,766位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
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2003年1月29日に日本でレビュー済み
2009年4月28日に日本でレビュー済み
メアリ=アン・T. スミスは、実話の事件を元に小説を書いてるらしいのですが、本作もカーラ・フェイ・タッカーという女性死刑囚の話が元ネタになってるみたいです。
カーラ・フェイ・タッカーは助命嘆願の多かった女性死刑囚として有名で、キリスト教徒として自らの罪を悔い改め世の中の人々に役立つ行いをしていきたいとい語ったことから、全米から助命嘆願が寄せられた上、当時のローマ教皇ヨハネ・パウロ2世まで助命嘆願をしました。
でも結局は当時のテキサス州知事ジョージ・W・ブッシュが恩恵を拒否したために死刑は執行されました。
この小説での死刑囚ロナ=リーもタッカーと同じく死刑判決を受けてからキリスト教徒として悔い改めそれをテレビで語ったので助命嘆願が寄せられます。
彼女の出演したテレビ番組を観たFBI特別捜査官ペネロピは、彼女の華奢な体を見て当時衰弱してた彼女が本当に斧で人を殺せたのか疑問に思います。
この事件に不自然なところがあると感じたペネロピはテキサスに飛んで事件を再捜査しようとするのですが・・・。
死刑制度に対しての考え方は人それぞれやと思うのですが、死刑囚がテレビに出演して自分の罪を悔い改めたと告白するところはアメリカらしいですね。
そこにキリスト教を絡めてきて、全ての出来事を神のお告げとして解決しようとしてるところがキリスト教徒でもない人には理解出来ない部分です。
ロナ=リーが本当に殺してないとしたら事件が再捜査されるのは当然やけど、それを嫌がら知事や関係者とペネロピーの対立は読んでいて面白かったです。
テキサスの人はテキサスの事を州とは思っていなくて国と思ってるので、テキサスならではの考え方があるので捜査が進展しないのが少し歯痒いけど、それを巧くいかした展開は見事です。
前半と後半では全く違った展開になるのですが、前半に散りばめてた布石が後半に生きてくるのがいいですよ。
読み終わって死刑制度について考えてみようと思えるような作品ではないけど、娯楽作としては出来は良いと思いました。
カーラ・フェイ・タッカーは助命嘆願の多かった女性死刑囚として有名で、キリスト教徒として自らの罪を悔い改め世の中の人々に役立つ行いをしていきたいとい語ったことから、全米から助命嘆願が寄せられた上、当時のローマ教皇ヨハネ・パウロ2世まで助命嘆願をしました。
でも結局は当時のテキサス州知事ジョージ・W・ブッシュが恩恵を拒否したために死刑は執行されました。
この小説での死刑囚ロナ=リーもタッカーと同じく死刑判決を受けてからキリスト教徒として悔い改めそれをテレビで語ったので助命嘆願が寄せられます。
彼女の出演したテレビ番組を観たFBI特別捜査官ペネロピは、彼女の華奢な体を見て当時衰弱してた彼女が本当に斧で人を殺せたのか疑問に思います。
この事件に不自然なところがあると感じたペネロピはテキサスに飛んで事件を再捜査しようとするのですが・・・。
死刑制度に対しての考え方は人それぞれやと思うのですが、死刑囚がテレビに出演して自分の罪を悔い改めたと告白するところはアメリカらしいですね。
そこにキリスト教を絡めてきて、全ての出来事を神のお告げとして解決しようとしてるところがキリスト教徒でもない人には理解出来ない部分です。
ロナ=リーが本当に殺してないとしたら事件が再捜査されるのは当然やけど、それを嫌がら知事や関係者とペネロピーの対立は読んでいて面白かったです。
テキサスの人はテキサスの事を州とは思っていなくて国と思ってるので、テキサスならではの考え方があるので捜査が進展しないのが少し歯痒いけど、それを巧くいかした展開は見事です。
前半と後半では全く違った展開になるのですが、前半に散りばめてた布石が後半に生きてくるのがいいですよ。
読み終わって死刑制度について考えてみようと思えるような作品ではないけど、娯楽作としては出来は良いと思いました。
2003年7月13日に日本でレビュー済み
もし 貴方が 牛のように強情で思い込みの強い女性FBI捜査官が ”この可哀想な女性死刑囚は公正な裁判を受けていないに違いない”との幻想に踊らされて、当の女性死刑囚に殺されそうになった上に逃げられるドタバタ喜劇が読みたいのであれば、一読の価値ありかも…
死刑の問題や宗教の問題にも触れているが、どれも上っ滑りで 深みのない一般的意見の範疇を出ないように見受けられた。
死刑の問題や宗教の問題にも触れているが、どれも上っ滑りで 深みのない一般的意見の範疇を出ないように見受けられた。
他の国からのトップレビュー
G. H. Giroux
5つ星のうち3.0
OK, But More Background To Explain Actions
2004年6月7日にアメリカ合衆国でレビュー済みAmazonで購入
Always on the search for good women thriller writers, I picked this up because of the intriguing plot synopsis. I found it a decent read, but not an exceptional one like Linda Fairstein or Alex Kava. There was too little background on what 'made' the Protagonist, why she feels and acts the way she does. I didn't much care for her one-night stand despite having a 'beau' back in DC. I wouldn't like that in a man; I certainly didn't in a woman. Some of the dialogue was a bit stilted, but that's to be expected for a first book in a series; the characters will fill out and appear more natural in subsequent sequels (I hope). Good twist at the end, though - keep that up.