「宗教」を、近代の歴史・社会的な文脈のなかで実証的に考察する本。「宗教」とか「精神世界」とか「スピリチュアりティ」とかに関心を抱く人たちは、いかんせん、目の前の世間やこれまでの時代の積み重ねを無視して心理主義的・体験主義的に「超越」した話をしがちなので、もっと客観的にいきましょう、という趣旨です。
ルーマニアのファシズム運動についての目新しい議論や、日本の国家神道下における信仰の再編成の再確認、あるいは実践共同体論を批判的に応用したタイの憑霊カルト論やベトナムにおけるキリスト教と「文明」の布教(からむしろ強要への道)をめぐる近現代史など、話題は広い。が、はじめの方にある三つのヨーロッパ「先進国」における宗教学(思想)の再考論、これがまあ本書の目玉だろう。
宗教社会学的な「世俗化論」を、ウィルソンのそれを軸としながらふり返ってみると、その背後にあるのはイギリスを中心とした「教会」の衰退という「事実」を、それぞれの論者がどう評価するかというイデオロギー的な問題があるという事情がわかる(山中弘)。エリアーデによる非合理的で科学的な検証の不可能な「聖」というマジック・ワードの提示は、デュルケム学派の聖俗論から、具体的な儀礼や社会的なコンテキストを外し特に個的でロマンティックな聖概念を抽象したロジェ・カイヨワの思想を、強引に学問化してしまったアヤシイこころみである(竹沢尚一郎)。(宗教)社会学の黎明期におけるジンメルの哲学には、近代が人間の生にもたらす疎外の経験をふまえつつ、逆に旧制からの解放と無定形的な生の力の横溢を可能にしてくれるはずの未来の宗教を模索するような多層的なふくみがあり、これは近年のポスト近代的な宗教論の脈絡でも再評価されてしかるべき思考である(深澤英隆)。
まあ、この本のかかげるテーマが広大なので何だが、文句をいえば、全体にまとまりがなさすぎる。寄せ集め感が否めないのである。時代やフィールドをしぼるなり、あるいは徹底して学説再検討の著作などにできなかったのか。ネタがコロコロかわるので、各論はおもしろいが、読み通すのにとても苦労した。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
宗教とモダニティ 単行本 – 2006/3/1
竹沢 尚一郎
(編集)
- 本の長さ286ページ
- 言語日本語
- 出版社世界思想社教学社
- 発売日2006/3/1
- ISBN-104790711757
- ISBN-13978-4790711759
登録情報
- 出版社 : 世界思想社教学社 (2006/3/1)
- 発売日 : 2006/3/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 286ページ
- ISBN-10 : 4790711757
- ISBN-13 : 978-4790711759
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,306,415位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
星5つ中4つ
5つのうち4つ
全体的な星の数と星別のパーセンテージの内訳を計算するにあたり、単純平均は使用されていません。当システムでは、レビューがどの程度新しいか、レビュー担当者がAmazonで購入したかどうかなど、特定の要素をより重視しています。 詳細はこちら
1グローバルレーティング
虚偽のレビューは一切容認しません
私たちの目標は、すべてのレビューを信頼性の高い、有益なものにすることです。だからこそ、私たちはテクノロジーと人間の調査員の両方を活用して、お客様が偽のレビューを見る前にブロックしています。 詳細はこちら
コミュニティガイドラインに違反するAmazonアカウントはブロックされます。また、レビューを購入した出品者をブロックし、そのようなレビューを投稿した当事者に対して法的措置を取ります。 報告方法について学ぶ