近代哲学と現代哲学の間にある最も大きな懸隔は、前者が総合的、思弁的、純理論的といった特徴を持っているのに対して(代表例としてはデカルト、カント)、後者が専門性、現場性、応用性を持った多様なフィールドを対象としていることであり、近年その傾向はますます強くなっています。本書は、そういった現代哲学に於いて、一体どんなフィールドで、どういったことが哲学的な問題となっているのかを一通り見渡せるものになっています。目次を見て、「こんな分野が哲学の問題として扱われているのか」と驚くかもしれません。あくまで導入なので、どれもせいぜい10数ページの短いサーベイになっていますが、戸田山和久、伊勢田哲治、信原幸弘etcといった哲学を少しでも齧ったことがある人間なら、誰でも知っているその分野の専門家が執筆しているので、初心者が興味を持った分野に初めて取り掛かる本としては手頃です。
ちなみに個人的なおすすめとしては、最近『風土の論理−地理哲学への道』という本を出版した木岡伸夫氏が執筆している『風土学あるいは地理の哲学』。自然科学の問題として語られがちな環境問題に対して、そういった物理的な対象化以前の、「人間と自然の関係」という視点から環境の問題を考えてみる必要を説く面白い論文です。『風土の論理』の方は、本格的な研究書であり、哲学の訓練を受けていない人間が手を出そうとしても、殆ど歯が立ちませんが(一応、一定の訓練を受けた筆者にとってもこれは恐ろしく難解で、十分読みこなせていません)、このサーベイ論文では極めて簡便な要約がされており、興味がある人には面白い論文となっています。
他のおすすめとしては、眞嶋俊造さんという方が書かれている『戦争倫理学』という論文。戦後の日本は戦争というものを語ること自体を忌避してきましたが、価値判断を為す前に、我々はまず戦争とは何なのかという事について知る必要があります。特にテロリズムのように、国家が独占的な戦争主体となっていた近代期の考え方では解決できないような問題が現在は存在します(もっともこの「テロリズム」という言葉は酷く曖昧で、頻繁に意味が変わる言葉なので注意して使う必要がありますが。詳しくはブルース・ホフマン著『テロリズム―正義という名の邪悪な殺戮』)。戦後のタブーを破り、もっともっとこの分野が真剣な学問の問題として取り上げられるようになることを願います。
以上のように、様々な分野の問題がこの本では扱われています。哲学科の一年生・二年生などは自分がどんな分野に興味を持っている人間なのかを測る材料にしてみては如何でしょうか。
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応用哲学を学ぶ人のために 単行本(ソフトカバー) – 2011/5/12
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哲学、現場へ――気鋭の執筆陣が、長年培われてきた「哲学的問い」と「知のツール」を手に、既存の学問の枠を破り、時代の「旬」のトピックに敢然と立ち向かう。全二八章からなる、日本初(発)!「応用哲学」のマニフェスト、ここに登場。
- ISBN-104790715272
- ISBN-13978-4790715276
- 出版社世界思想社
- 発売日2011/5/12
- 言語日本語
- 寸法13.2 x 2.1 x 18.9 cm
- 本の長さ380ページ
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登録情報
- 出版社 : 世界思想社 (2011/5/12)
- 発売日 : 2011/5/12
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 380ページ
- ISBN-10 : 4790715272
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- 寸法 : 13.2 x 2.1 x 18.9 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 537,762位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,126位哲学・思想の論文・評論・講演集
- - 79,556位ノンフィクション (本)
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著者について
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戸田山和久 Todayama Kazuhisa
1958年東京都生まれ。89年、東京大学大学院人文科学研究科単位取得退学。専攻は科学哲学。現在、名古屋大学大学院情報学研究科教授。
著書に『科学哲学の冒険』(NHKブックス)、『「科学的思考」のレッスン』『恐怖の哲学』(以上、NHK出版新書)、『論理学をつくる』『科学的実在論を擁護する』(以上、名古屋大学出版会)、
『知識の哲学』(産業図書)、『哲学入門』(ちくま新書)、『教養の書』(筑摩書房)、『思考の教室』(『新版 論文の教室』の姉妹編、NHK出版)など。
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