非常に価値の高い内容です。
ベンゾジアゼピン系の薬を徹底的に叩く特集になっています。
松本先生の論文の「おわりに」は圧巻です。
「筆者は時折、救命救急センター職員対象の研修会で講師を務めることがあるが、そのたびに職員から感じるのは、精神科医に対する怒りである。実際、精神科医である筆者は、救急医からの非難と攻撃に、文字通り「蜂の巣」状態にさせられることも珍しくない。なかには、こうはっきりといってのけた救急医もいた。いわく『精神科の患者は嫌いだが、精神科医はもっと嫌いだ』…」(p. 811(11))。
戸田先生の論文からも引用しましょう。
「日本独自の問題として抗不安薬による副作用や常用量依存に対する医師の認識の低さがある。副作用はほとんどないと説明されることが多く、本論文で記載した副作用や半年以内に中止すべき点が説明されることはほとんどない。BZD長期使用の危険因子について既述したが、最大の危険因子は副作用や常用量依存に対する医師の認識の低さであると筆者は推測している」(p. 873(73))
その一方で、この専門誌を成り立たせているのはもちろん、製薬会社の広告です。集団訴訟で製薬会社が記録的敗訴をしたことで有名なパキシルをはじめとするSSRI、SNRI、双極性障害の薬、その他の薬価が高い薬のカラー広告のオンパレード。
ベンゾ系に依存の危険があることは本書に論じられているとおりです。ベンゾ系の薬の在庫処理を担ってきた日本ですが、大手が次々と精神薬の開発から撤退するなかで、今度はベンゾ系以外の在庫処理を担わされようとしているようです。
外部からの批判であれば、割り引いてとらえられても仕方がない面がありますが、専門家が専門家向けに書いているものであるだけに、本書の価値は非常に高いと思われます。
専門家でなくても十分についていける内容が大半です。
精神薬の危険性を門外漢がいくら訴えても、専門家に「安全だ」と言われると多くの人はそちらに権威があると思ってしまいます。
本書は患者やその家族が減薬・断薬を医師と相談する際に、「葵の御紋」の役割を果たしてくれるでしょう。
精神科医の皆様のみならず、精神薬の投与を受けている患者さんとそのご家族にもご一読をお勧めします。
掲載広告の意味も熟考に値します。

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臨床精神薬理 第16巻6号〈特集〉ベンゾジアゼピンと処方薬依存を巡る問題 単行本(ソフトカバー) – 2013/5/27
わが国では諸外国に比べ、不眠や不安にベンゾジアゼピンが突出して用いられている。常用量依存に悩む当事者の声は大きく、医師が処方する向精神薬が依存の原因の2位になるなど、医師の意識の低さも問題になっている。ベンゾジアゼピンと処方薬依存を巡る問題について、救命救急や依存症専門病院等、第一線の方々による解説とともに対処法を紹介。
- 本の長さ164ページ
- 言語日本語
- 出版社星和書店
- 発売日2013/5/27
- ISBN-104791151887
- ISBN-13978-4791151882
登録情報
- 出版社 : 星和書店 (2013/5/27)
- 発売日 : 2013/5/27
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 164ページ
- ISBN-10 : 4791151887
- ISBN-13 : 978-4791151882
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,865,727位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,724位精神医学 (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2014年1月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2019年3月25日に日本でレビュー済み
松本論文を評価するレビューがあるが、彼のSNSにはまったく異なる内容が掲載されている。以下引用する『4) 結論
以上のことを前提として、質問に回答する。 常用量のBZDを長期間服用した場合、耐性や離脱などの身体依存を生じ、常用量依存の状態を呈する可能性は十分にある。しかし、この状態は薬物依存とは異なる病態である。 薬物依存に罹患する者の多くは、深刻なストレスや感情的苦痛のなかで、医師の指示から逸脱し、「嫌な気分を忘れるために飲む」といった乱用をしている。その意味では、常用量のBZDを長期間服用していたとしても、医師の指示を遵守している限りにおいては、薬物依存を呈する可能性は低いと考えられる。 』つまり、ベンゾジアゼピンで薬物依存は生じないとしており、本書で松本は非難している精神科医と同じ発言をしてそれらの医師を擁護しているのである。
以上のことを前提として、質問に回答する。 常用量のBZDを長期間服用した場合、耐性や離脱などの身体依存を生じ、常用量依存の状態を呈する可能性は十分にある。しかし、この状態は薬物依存とは異なる病態である。 薬物依存に罹患する者の多くは、深刻なストレスや感情的苦痛のなかで、医師の指示から逸脱し、「嫌な気分を忘れるために飲む」といった乱用をしている。その意味では、常用量のBZDを長期間服用していたとしても、医師の指示を遵守している限りにおいては、薬物依存を呈する可能性は低いと考えられる。 』つまり、ベンゾジアゼピンで薬物依存は生じないとしており、本書で松本は非難している精神科医と同じ発言をしてそれらの医師を擁護しているのである。