白川静先生(1910―2006)ご自身の高橋和巳論「蓬山遠し」をはじめ、梅原猛氏の「奇人たちの遊興」、高島俊男氏の「両雄倶に立たず―白川静と藤堂明保の『論争』―」など、おおよそ20篇の秀作をおさめる面白い、おもしろい充実の一冊です。『ユリイカ』の「白」の強調された上品な表紙も素敵です。
白川先生が『漢字―生い立ちとその背景―』を一般読者向けにわかりやすく岩波書店から出してくださったのは1970年のことでした。ちょうど大学紛争の中、わたくしたちが恩師を学園から失いながら卒業した年でもありました。白川先生には1984年に最初の論文評をお願いしたおりにお手紙を頂戴し、以後、亡くなられるまで「今まで誰もやらんかった領域ですわな」と拙い研究を励ましていただきました。
本書についてひとつ希望を言わせていただけるなら「白川静略年譜」の中で1913年生まれの奈良本辰也、1914年生まれの林屋辰三郎両先生に加えて、1909年生まれの北山茂夫先生のお名前を加えていただきたかったという点です。1909年のところは無理でしょうから、せめて1970年の「一般書『漢字』を書き下ろす」のところで「元立命館大学教授北山茂夫の推薦により」をいれてほしかったと思います。なぜなら北山・奈良本・林屋の3先生は当時の学界を牽引した「在野史学の雄」であり、一時代を創り上げられた「3巨頭」であり、大切なお一人を欠かすことは道理にかなっておらず、このままでは歴史の風化にもつながると思うからです。何よりも白川静先生ご自身が『漢字』末尾において一年年上の北山茂夫先生に対し深い深い感謝の意を表しておられるのですから、今後は意をくんで下さるようよろしくお願いいたします。
本書がひとりでも大勢の方々に読まれることを願ってやみません。 頓首
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ユリイカ2010年1月号 特集=白川静 一〇〇歳から始める漢字 ムック – 2009/12/28
白川静-一○○歳から始める漢字-
- 本の長さ245ページ
- 言語日本語
- 出版社青土社
- 発売日2009/12/28
- ISBN-104791702034
- ISBN-13978-4791702039
登録情報
- 出版社 : 青土社 (2009/12/28)
- 発売日 : 2009/12/28
- 言語 : 日本語
- ムック : 245ページ
- ISBN-10 : 4791702034
- ISBN-13 : 978-4791702039
- Amazon 売れ筋ランキング: - 973,291位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 360位雑誌・逐次刊行物
- - 1,359位日本の思想(一般)関連書籍
- - 182,578位雑誌 (本)
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2010年7月2日に日本でレビュー済み
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2013年12月22日に日本でレビュー済み
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特集では、白川静という人を多方面から語っている。その中でも、巻頭の一海知義氏と石川九楊氏の対談がおもしろかった。お二人とも、白川氏の仕事に好意的に語っているけれど、温度差も感じられる。
石川氏「白川さんの場合は、『ああ、なるほど』と、そうしたらこの字はこうできているのかと、これは(藤堂明保氏や加藤常賢氏と)もう全然違うなと思った」。
一海氏「二千年前から現在を繋ぐ仕事を綿密になっていくとね、白川さんの言うてることがいかに正しいかということが一方でわかってきて、白川さんの言うてることで間違うていることもあるということもわかってくると思いますね」。
一海氏の方がより客観的に見ているらしい。私がへえーと思ったことは、文字学とはずれてしまうけれど、次の一海氏の言葉、
私たちみたいに漢詩、中国の詩を読んでいる人間にとっては一つ一つの漢字に対する字源や語源にあまり関心がないんです。というよりも、ある言葉、「言語」の「語」なら、「語」という言葉について、字源を探って意味を考えるというのではなく、たとえば、鳥の言葉、「鳥語」という言葉が詩のなかに出てくる。鳥語の「語」は何だろうか、鳥語に対して「人語」、人の言葉がある。それに似た言葉がいくつもある。たとえば、『論語』も「語」でしょう。それらを総合的に比較してね、それで「語」という言葉はこういう意味なんだなと追求していく。そういう方法を取る、アプローチの仕方が違うんですね。
この言葉から、文学的手法というものを教えてもらった。
石川氏「白川さんの場合は、『ああ、なるほど』と、そうしたらこの字はこうできているのかと、これは(藤堂明保氏や加藤常賢氏と)もう全然違うなと思った」。
一海氏「二千年前から現在を繋ぐ仕事を綿密になっていくとね、白川さんの言うてることがいかに正しいかということが一方でわかってきて、白川さんの言うてることで間違うていることもあるということもわかってくると思いますね」。
一海氏の方がより客観的に見ているらしい。私がへえーと思ったことは、文字学とはずれてしまうけれど、次の一海氏の言葉、
私たちみたいに漢詩、中国の詩を読んでいる人間にとっては一つ一つの漢字に対する字源や語源にあまり関心がないんです。というよりも、ある言葉、「言語」の「語」なら、「語」という言葉について、字源を探って意味を考えるというのではなく、たとえば、鳥の言葉、「鳥語」という言葉が詩のなかに出てくる。鳥語の「語」は何だろうか、鳥語に対して「人語」、人の言葉がある。それに似た言葉がいくつもある。たとえば、『論語』も「語」でしょう。それらを総合的に比較してね、それで「語」という言葉はこういう意味なんだなと追求していく。そういう方法を取る、アプローチの仕方が違うんですね。
この言葉から、文学的手法というものを教えてもらった。
2010年2月24日に日本でレビュー済み
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國學院が産んだ異端の大学者、折口信夫と並ぶ、立命館の白川静の文章は、強い魅力のある文体で描かれているが、ちゃんと読もうとするとそれなりの緊張感が要求されるものだ。この本は、呪術と神霊崇拝に生きた古代東アジア諸族の精神世界を甲骨文字を通じて蘇らせた白川文字学の、格好の入門書となっている。文字通り学問世界の底辺からのたたき上げであり、弟子にも恵まれたとは言えず、立命館の教授のなかでもずっと非主流派だった白川先生の孤独な相貌と魅力がよく伝わってくる。白川と縁の深かった梅原猛のインタビューや石牟礼道子のエッセイがまたいい。