今号は、特集＝加藤一二三ー棋士という人生ーとなっている。青土社のホームページに詳しい内容が掲載されている。
「棋士」とは何かは、羽生・佐藤康光インビューの他３名の記事となっている。
「盤上の存在論」も森内・先崎のインタビュー、糸谷他４名の豪華執筆陣である。
他に、郡司ペギオ幸夫による「アートな一手、または、脳内他者の直観を私の直観とする」という魅力的論攷がある。
加藤一二三による藤井聡太研究もある。
目下、藤井聡太四段は、２９連勝で日本中でフィーバーを巻き起こしている。
１４歳中学生の大活躍には、ワクワクさせられ、見えている世界が他の棋士と違っているのではないかとさえ思う。
そこで、この機会に現時点での他の棋士の評価も併せてメモしておく。
それは、将棋界に於けるディジタルネイティブ世代の登場という事実と意味である。
序盤は、従来と異なり王をがっちりと囲わない。その分、攻めを速める。
攻めも従来の縦・横の動きに加え、斜めの桂馬・角・銀の働きがめざましい。
終盤は、飛車・角の大駒でも惜しみなく大胆に捨てる。勝ち筋を見切っていて、一手で風景が変わる。速く切れ味が鋭い。増田４段の師匠、森下九段は、天才の寄せと言った。
藤井４段は、小学生時代からの詰め将棋解答選手権で三連覇中である。名だたるプロがかなわないのである。この早見えの力が、ソフト並みの中・終盤の組み立て能力と関係するという人がいる。恐らく、途中省略を含め即座に体で反応するのであろう。
藤井九段は、既に完成されていると語っている。
森七段は、「辛い」と評した。そして、現時点での実力を一・二番と言うのは差障りがあるから三番と言っておこうと言った。恐らく、一番伸びる時期であり一日一日、対戦毎に強くなっているに違いない。
師匠も、炎の七番勝負の前に全勝でも驚かないと言っていた。結果は、六勝一敗であった。
この一勝を上げた永瀬六段は、弱点が無いと言っている。
ポナンザの示す最善手との「一致率」、「エラー率」を基準にすると、羽生三冠と並ぶトップクラスである。（将棋ウォーズ林社長）
これは、ディジタルネイティブ世代ではない羽生三冠の凄味をも示している。
藤井四段は、昨年からソフトを使っていると述べている。家族共有のパソコンである。
一手一手の評価を検証するのである。人間が持つ「恐怖」を抑制し、ロジックで対応する訓練だろう。
そろそろ、ディジタルネイティブ世代が登場して来る。
将棋界に於いても同様であり転換期である。
AIは、人間と対立するものではなく助けるものである。
人間は、何ものをも取り入れる知的能力を備えている。
今より、ソフトとの戦いでは強くなるのかもしれない。
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