レヴィナスの著作は、どれも大変難解である。
自身の第一哲学は「倫理学」であると語っているが、そもそも「現象学」からその多くを学んできている
人なので、フッサールやハイデガーといった現象学関連の学者と、探求していたことはかなり共通点が
あると思う。
そうしたフッサールやハイデガーを予め知っているからといって、レヴィナスの思想がすんなりと頭の
中に入るとは限らない。
私もレヴィナスについての理解は、最初は大苦戦をした。
本書にはレヴィナスの未発表論文も訳出されてあったり、多くの学者による論考が掲載されているが、
なかでもレヴィナスの多数の著作の邦訳者でもある合田正人氏と現象学・精神病理学者である村上靖彦
氏との対談が白眉だった。
両者による一致した見解として、「レヴィナスにはかなり早い時期から離人症的な症状がみられ、そうした
ある種の精神疾患・発達障碍のような状態は、生涯続いていた」ということだ。
しかし、ならば「」精神的に問題のあるような学者の言説に、哲学的な意味などあるのか?」という疑問が
とうぜん出てくるように思わるが、重要なのは「そうした事実を勘案して」さらにレヴィナスを読み直す作業
の方に意味があるように思われる。
レヴィナスは「精神的な問題」を背をっていたが、シュレーバーのように完全に狂気に行ってしまったわけ
ではなく、なんとか「この世界」にとどまっていた人なので、それなりの意味があるように思えるのだ。
彼が出してくる「用語」や「概念」は、通常の言語的連想とはかなり違うものに感じられる。
しかし近親者はみなナチスの収容所で死んでしまい、自らも収容所体験があるなか生き残った身として
レヴィナスの他者論や世界観というものは、特殊性をはらむがゆえに、ある種の普遍性にも到達している
ように感じてしまう。
そう、「解読」すべき価値のある「ギリギリの限界思考」なのかもしれない。
レヴィナスの書作の読み方というのは、多様にあると思う。
読者が考えるための素材、そうした特殊性も提供してくれる重要な存在なのだろう。

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現代思想2012年3月臨時増刊号 総特集=レヴィナス ムック – 2012/2/14
レヴィナス
- 本の長さ358ページ
- 言語日本語
- 出版社青土社
- 発売日2012/2/14
- ISBN-104791712412
- ISBN-13978-4791712410
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登録情報
- 出版社 : 青土社 (2012/2/14)
- 発売日 : 2012/2/14
- 言語 : 日本語
- ムック : 358ページ
- ISBN-10 : 4791712412
- ISBN-13 : 978-4791712410
- Amazon 売れ筋ランキング: - 177,999位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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