化石人類についての本はいろいろ出ているがこの本は2つの意味でお勧めである．
ひとつは最新の情報をカバーしていること．この分野は最近また新しい化石発見が続いているし論争も盛んなので定期的に新刊を読まないとなかなかついていけない．
ふたつめにこの本はテーマを｢直立歩行｣に絞っている．そこはこの著者のこだわりでもあり，テーマを絞っている分一冊の本としては内容が深くなかなか面白い．
ルーシーで有名なアウストラロピテクス・アファレンシスははたしてどの程度｢直立歩行｣していたのか，これにはいろいろの説がありとおりいっぺんの本を読んでいるだけでは読者としては混乱するほか無いのであるが，本書では論争のあらましからその論者の背景，思想的な基礎にまでわたって解説があり非常に良くわかる．
著者の主張の中心は｢直立歩行については人類進化の直線的な進歩を示すものとして考えてはならない，それぞれの種はそれぞれの生態的環境に合わせてそれぞれの直立歩行をおこなっているのであり，それぞれはその環境下で適応している．それをよく研究していくべきだ｣ということになろうか．
人類の進化が直線的な進歩だと考えていた人には特にお勧めである．
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