本シリーズは入門書として刊行されているらしいのですが、本書は入門書としてはやや難解です。特に第一章・第二章の世俗世界性についてはかなり難解です。文学者あるいは批評家としてのサイードについて解説されるので、「『オリエンタリズム』のサイード」というイメージしかなかった私には、これらの仕事がどうサイードのポストコロニアルな仕事と結びつくのか疑問でした。また、文学理論や批評についてあまりにも無知なので、内容理解にかなりてこずりました。しかし、それ以後を読んでいくと、これらの仕事がサイードの全ての仕事の基本となっていることがわかり、非常に驚きました。
全体を通して理論的な本なのですが、そのボリュームと内容を鑑みるに、改めてサイードの仕事の質と量、その幅広さに驚かされます。また、本書の特徴としては、サイードに対する批判や異なる様々な解釈も丁寧に紹介し分析しています。
入門書としては、やや行き過ぎている感もないではないですが、サイードについて全般的な理解ができる良書です。また、上記の如く批判等も紹介しているので、サイードに対する様々な反応も知ることができます。サイードの著作は翻訳されていますが、サイードについて語られた本、しかも一般向けとなると絶望的ですから、サイードを読もうと思うのなら本書は欠かせないものとなるのではないでしょうか。
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