巻末の付録のフーコー論が凄いです。
ミシェル・フーコーの『権力』をめぐる議論が分析されているのですが、フーコー研究者でもある萱野さんのこの論文を読むと、なぜフーコーが自身の立場を「構造主義ではない」と言ったのかわかります。
(というより、はじめて分かりました)
この権力分析の理論を読むと、フーコーがニーチェ・ハイデガーの理論の影響を強く受けていることが感じられます。(力の概念など)
萱野さんいわく、フーコーは人間の行為を限定し、同時に可能にするものを『権力』と呼びます。
どうやら私達が普段使ったり考えたりする『権力』とは少し意味が違います。
この権力は、人間の行為を、別の人や物が結果的に規定することを指し、つまり人と人(あるいは物)の間に生まれる磁場のような意味として使われる。
フーコーは人間が能動的に人や物に働きかけることだけでなく、人や物の影響を受け取る能力も含めて『力』と呼ぶ。
この力がまずあり、人と人の相互の行為が可能になり、主体の他者に対する行為はまた、他者から主体へフィードバックを与え、また主体の行為と関係を変える。
(ちなみに主体といっても、フーコーは特定の個人という意味で【主体】を使っていません)
この人間の行為を規定し、行為の可能性を広げることにもなる磁場のような『権力』という関係と、『知』と呼ばれる関係や物事の解釈が協働し(共謀ではなく協働なのは、恐らくフーコーが肯定的な捉え方をしているからだと思います)、『言説』を生み出す。
この言説が社会を構築していくのですか、『権力』も『知』もどちらが先にあるというわけではなく相互に支えあっているので、一方に還元できず、ここが社会構成主義とは明確に違う。
特に、フーコーは社会から言説が生まれるのではなく、その逆を言い、また言説のベースの『権力』と『知』も常に変動するので、ここも社会構成主義と違う。
構造主義と決定的に違うのも、レヴィ=ストロースの想定するスタティック(静的)な普遍の構造を否定し、社会では、常に行為の関係から生まれる『権力』が変わるので、構造主義の言うスタティックな構造は存在しない。
故に、フーコーの議論は構造主義ではない。
あるのはダイナミックな運動だけで、だから、フーコーの理論を、歴史の中での社会構造の変化(エピステーメの切断)を特権的に扱うものとする従来の議論はフーコーの意図ではない。
ざっくり言うと以上の議論を、萱野さんは展開しています。
フーコーのイメージががらっと変わりますね。
本編の方も、近年のヨーロッパ(と日本)で見られるような排外主義の出現を経済問題から分析していて流石です。
(でもここは近作の傑作【ナショナリズムは悪なのか】の方が素晴らしい!)
ところで、時折、ポスト宮台真司は誰かという議論がありますが、社会システム論の専門家であり理論の切れ味という意味では萱野稔人さんが筆頭格の一人ではないでしょうか。
付録は少し難しい内容ですが、すごい作品なので、ぜひ【ナショナリズムは悪なのか】と合わせて読んでみてください。
おもしろいですよ!
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権力の読みかた: 状況と理論 単行本 – 2007/7/1
萱野 稔人
(著)
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- 本の長さ224ページ
- 言語日本語
- 出版社青土社
- 発売日2007/7/1
- ISBN-104791763432
- ISBN-13978-4791763436
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登録情報
- 出版社 : 青土社 (2007/7/1)
- 発売日 : 2007/7/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 224ページ
- ISBN-10 : 4791763432
- ISBN-13 : 978-4791763436
- Amazon 売れ筋ランキング: - 241,005位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2014年10月26日に日本でレビュー済み
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権力はまずは数。
脱人格化
暴力が認められるのは国家
テロ
構造改革
戦争の民営化
不安とセキュリティと移民
知と権力 フーコーの視点
難しいことを扱っているのに明晰。
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2008年2月19日に日本でレビュー済み
いま各方面から注目を集める論客の第三作目ということで楽しみにしていた。
第一作目の国家論(『国家とはなにか』)、そして第二作目の資本主義論(『カネと暴力の系譜学』)に続いての主題(テーマ)は、本書のタイトルが示すとおり、そのものズバリ「権力」である。
萱野稔人の素晴らしいところは、凡百の思想家が「わかったつもり」で使いまわし、言葉のインフレを起こしてしまっている概念を、根本から問い直す力を持っていることだろう。
だから彼が第一作目で「国家」を論じた後、多くの思想家がその理論的一貫性に便乗する形で「国家」を語り始める現象が起きた。
今回はこれまたややこしい「権力」という概念に挑んだ力作だ。
「序章」で、ミシェル・フーコーとマックス・ウェーバーの権力論の違いを見事に(それも非常に分かりやすく)抽出し、「終章」でフーコーの権力論を深化させることで、ドゥルーズのフーコー論への疑問を提示するあたり、彼が並大抵の理論家ではない確信がより深まった。
本書の中盤の構成は「現在の」権力の趨勢を論じた文章を集めたものだが、「ナショナリズムの逆説」という論文に代表されるように、中盤も目からウロコの分析が目白押しである。この十数年間、ナショナリズムを批判していればそれだけで思想家「然」としていられる、ある意味で「多幸的な」時代であったが、萱野はそれらの「理論もどき」を、人間感情の生態学とも言える視点から退けることで、そうした人間感情と現行の権力との絡み合いを鮮やかに示すことに成功している。
前二作に続いて、今作も瞠目に値する素晴らしい成果だと言えるだろう。
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だから彼が第一作目で「国家」を論じた後、多くの思想家がその理論的一貫性に便乗する形で「国家」を語り始める現象が起きた。
今回はこれまたややこしい「権力」という概念に挑んだ力作だ。
「序章」で、ミシェル・フーコーとマックス・ウェーバーの権力論の違いを見事に(それも非常に分かりやすく)抽出し、「終章」でフーコーの権力論を深化させることで、ドゥルーズのフーコー論への疑問を提示するあたり、彼が並大抵の理論家ではない確信がより深まった。
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前二作に続いて、今作も瞠目に値する素晴らしい成果だと言えるだろう。
2008年11月28日に日本でレビュー済み
ハーレント・ウェーバー・フーコーなどの権力観を概説した『序章』、イラク戦争・フランス暴動・郵政民営化などを題材にその背景にあるものを探ろうとするエッセイを集めた『状況』、最後にフーコーの『理論』で締めくくる3編構成。
権力という題材に初めて取り組んだ自分としては、『序章』編『理論』編はそれなりに興味深く読めた。しかし、そこで取り上げられた理論が『状況』編のエッセイで述べられる主張と直接的に結びついていないために、本全体としてなんとなくチグハグにしあがっている。また、それらエッセイの内容にしても、本質に迫ろうと努力するあまり、かえって本質を見失ってしまっている印象。
とはいえ、世間を捉える新たな視座を提供してくれる本であることは確かなので、☆3つ。
権力という題材に初めて取り組んだ自分としては、『序章』編『理論』編はそれなりに興味深く読めた。しかし、そこで取り上げられた理論が『状況』編のエッセイで述べられる主張と直接的に結びついていないために、本全体としてなんとなくチグハグにしあがっている。また、それらエッセイの内容にしても、本質に迫ろうと努力するあまり、かえって本質を見失ってしまっている印象。
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2008年2月22日に日本でレビュー済み
フランスの極右に対するフランス下層階級の根強い支持等の分析から、世界規模の資本主義により生み出された先進国の内なる第三社世界の住民=見捨てられつつあることを実感している国民の不満エネルギーが排外主義への情熱へと転換されることにより現代の国家権力システムが維持される実態を暴くなど権力の本質を見事に分析。構造改革の推進が新たな利権システムの創出に過ぎないとの指摘はまさに至言。シンプルな議論の運び方で、権力の基本的な性質を説明しており、現実の世界の政治の動きとビビッドに議論を対応させているので、とても解かりやすい。しかし、国家が脱人格化された暴力を行使する「運動」に過ぎないということになると、国家により疎外されつつあるわれわれは自らを取り返すために何と闘えば良いのか?。「所詮権力ってそんなもんすよ」と著者は言いたいのか?また「いまいち」などの若者言葉が使われる一方で、現代思想固有のワードが説明無しに使用されるところもあり、想定読者が果たして「素人の私」なのか確信が持てないところが「いまいち」。