やたらと元気の良い本である。前のめり過ぎて、論理的にボロが出ている所も多々あるが、そんな事は関係ない。こういうアジテーション調の本、私は大好きである。
著者には『「若者の読書離れ」というウソ』(以下『ウソ』と略記する)と言う近著がある。これも、とても良い問題提起をしている本で、私は著者に大いに興味を持った。それで本書『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(以下『しくみ』と略記する)を手に取ったと言うワケである。
読んで、ちょっと考えさせられた。
『しくみ』の第1刷発行は2012年4月。
『ウソ』の第1刷発行は2023年6月である。
著者によると、この間、ライトノベルを巡る市場環境は様変わりしてしまったのだと言う。
(引用、はじめ)
中学生の読書量は微増、高校生はほぼ横ばいであるにもかかわらず、文庫ラノベ市場は2012年の284億円をピークに、2022年には108億円と半減以下になった(出版科学研究所調べ)。2000年代には産業として注目され、2012年までは市場が伸び基調にあったが、それは過去のものになった。「ターゲット層の読者が少子化しているのだから仕方ない」と思うかもしれないが、さすがに子どもの数は10年で半分にはならない。10代人口の減少率は毎年小数点以下数%から1%台前半である。対して文庫ラノベ市場は激しいときには前年比14%近く減少しており、少子化の速度をはるかに上回っている。かつて「中高生向け」と言われたラノベ市場に、一体何が起こったのか。(『ウソ』p28)
(引用、おわり)
上記の問題提起に対する著者の分析は、『ウソ』の方で、みっちり行われているので、そちらを参照していただきたいのだが、私が言いたいのは「著者もまた時代の子であった。時代に呼ばれた人だったのだ」と言う事である。
『しくみ』における著者の勢いは「驕る平家」そのもの。
それが、たったの10年で潮目が変わった。最早、ライトノベルは「屋島の合戦」くらいまで追い詰められているのではなかろうか。
著者は『ウソ』における論述の基礎として「行動遺伝学」を採用した。「行動遺伝学」は評価の分かれる新興学問なのだが、それを援用して自説を語る著者の口ぶりには、どこかペシミスティックな物が感じられた。
こういう「滅びの美学」も、私は大好きなのである。
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ベストセラー・ライトノベルのしくみ キャラクター小説の競争戦略 単行本 – 2012/4/10
飯田一史
(著)
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『生徒会の一存』『バカとテストと召喚獣』『とらドラ!』『ゼロの使い魔』『とある魔術の禁書目録』『鋼殻のレギオス』そして『涼宮ハルヒの憂鬱』・・・・・・。 シリーズ累計で数百万部を売り上げ、いまもっとも読者を獲得しているジャンルであるライトノベルから、作品論、メディア論、顧客分析、競争環境分析を駆使して、市場で勝つ戦略までを解き明かす。 Amazonランキングで1位になったライトノベル作品を徹底分析。
- 本の長さ366ページ
- 言語日本語
- 出版社青土社
- 発売日2012/4/10
- 寸法14 x 2.8 x 19.7 cm
- ISBN-104791766490
- ISBN-13978-4791766499
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登録情報
- 出版社 : 青土社 (2012/4/10)
- 発売日 : 2012/4/10
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 366ページ
- ISBN-10 : 4791766490
- ISBN-13 : 978-4791766499
- 寸法 : 14 x 2.8 x 19.7 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 632,892位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 160,993位文学・評論 (本)
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著者について
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マーケティング的視点と批評的観点からウェブ文化や出版産業、マンガ、アニメ等について取材&調査して解説。単著『いま、子どもの本が売れる理由』『マンガ雑誌は死んだ』『ウェブ小説の衝撃』。現代ビジネス、リアルサウンドブック、新文化などに寄稿。単行本構成やコンサル業も。グロービスMBA
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2014年11月3日に日本でレビュー済み
タイトルが気になり、手にとって見た。結論から言うと(上から目線で申し訳ないが)期待していたより酷くなかった。
まず本書の問題点について。経営系の文献としては、バーニーとポーター、そしてコトラー(まぁこれはマーケティングだけど)を引用しているだけで、お世辞にもアカデミックに洗練されているとは言いがたい。また、戦略論、マーケティング論では一応アカデミック側の著作を引用しているのに、組織論だけは筆者が通っているらしい学校(?)のテキストから引用されていた。孫引きもいいところで、そのあたりはかなりお粗末。また、分析のレベルが若干不明確であるとか、理論的な話をしているのか実証的な話をしているのかが曖昧(引用がなさすぎる)という点が挙げられるだろう。そのせいで、論理構成が唐突になっている箇所が結構あった。私はこの本を書いたわけではないのでどうでもいいのだが、理論を振りかざす者の仁義を守れよ……と思うところが少しばかりあった。
とはいえ、本書には見るべきところがある。それが何かというと、やはりラノベが持っている商業性を真正面から扱っている点だろう。通常、文化人気取りというものは、文化的なものと経済的なものとが断絶が存在しているという建前を持って文章を書きたがるのだが、本書ではそういう気取ったところがない。むしろ、産業組織や経営の語彙で議論を組み立てている。こういった経済系の知識は、実用的であるという理由から「二流の知性」(確かこう呼んだのはガルブレイス)と呼ばれてきた。けれども、ここまで露骨に資本主義が発達している今日において、こういった「二流」の経済・経営知識もある程度有用であることを本書は教えてくれる。特にマスマーケットを見るなら、やはりポジショニング理論ベースの戦略論は抜群に切れ味が良い。著者はところどころで、某氏を始めとした正統な(まぁ本当は正統じゃないんだけど)文化人系の論壇に対して喧嘩腰の議論を展開しているけれども、「マスマーケットを分析の対象とする」という立場からなら、まぁあの喧嘩腰も許せる気もする。論壇連中から突っ込まれやすいこの界隈で、かなり素直に「売れ筋ケースを事例研究する」しかも「経営のフレームワークを用いて」という態度を取ったのは、やはり勇気があることだし、それは賞賛されるべき点であるように思う(その方法がちょっとお粗末だったのが問題なのだが、勇気だけは評価したい)。
まず本書の問題点について。経営系の文献としては、バーニーとポーター、そしてコトラー(まぁこれはマーケティングだけど)を引用しているだけで、お世辞にもアカデミックに洗練されているとは言いがたい。また、戦略論、マーケティング論では一応アカデミック側の著作を引用しているのに、組織論だけは筆者が通っているらしい学校(?)のテキストから引用されていた。孫引きもいいところで、そのあたりはかなりお粗末。また、分析のレベルが若干不明確であるとか、理論的な話をしているのか実証的な話をしているのかが曖昧(引用がなさすぎる)という点が挙げられるだろう。そのせいで、論理構成が唐突になっている箇所が結構あった。私はこの本を書いたわけではないのでどうでもいいのだが、理論を振りかざす者の仁義を守れよ……と思うところが少しばかりあった。
とはいえ、本書には見るべきところがある。それが何かというと、やはりラノベが持っている商業性を真正面から扱っている点だろう。通常、文化人気取りというものは、文化的なものと経済的なものとが断絶が存在しているという建前を持って文章を書きたがるのだが、本書ではそういう気取ったところがない。むしろ、産業組織や経営の語彙で議論を組み立てている。こういった経済系の知識は、実用的であるという理由から「二流の知性」(確かこう呼んだのはガルブレイス)と呼ばれてきた。けれども、ここまで露骨に資本主義が発達している今日において、こういった「二流」の経済・経営知識もある程度有用であることを本書は教えてくれる。特にマスマーケットを見るなら、やはりポジショニング理論ベースの戦略論は抜群に切れ味が良い。著者はところどころで、某氏を始めとした正統な(まぁ本当は正統じゃないんだけど)文化人系の論壇に対して喧嘩腰の議論を展開しているけれども、「マスマーケットを分析の対象とする」という立場からなら、まぁあの喧嘩腰も許せる気もする。論壇連中から突っ込まれやすいこの界隈で、かなり素直に「売れ筋ケースを事例研究する」しかも「経営のフレームワークを用いて」という態度を取ったのは、やはり勇気があることだし、それは賞賛されるべき点であるように思う(その方法がちょっとお粗末だったのが問題なのだが、勇気だけは評価したい)。
2018年12月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
作品分析、市場分析などの手法を知るには良い本です。☆5としたいですが、筆者の筆力か校正が機能していないのか、文章の助詞の繋がりが、あやふやな箇所が数箇所みられます。
例えば
【ほとんどのライトノベルミステリができなかった「びっくりさせるために時間がかかる」という難点を克服しています】
これではライトノベルミステリが「びっくりさせるために時間をかける」ことをやろうとしていたみたいです。
文脈に即して言えば
→【ほとんどのライトノベルミステリができなかった「びっくりさせるために時間がかかるという難点の克服」をしています】
が正しいです。
いる。「ループ」 から「転生」へと、人生やり直し願望を物語として見せてくれる表現の流行りは切り換わったのだ。
→流行りに切り替わった
これら文章表現は本質ではありませんが、あまりに眼について読みづらいので校正希望。評価はコンセプトの時点で☆5ですが、他の人によまれたくないから-1です。
例えば
【ほとんどのライトノベルミステリができなかった「びっくりさせるために時間がかかる」という難点を克服しています】
これではライトノベルミステリが「びっくりさせるために時間をかける」ことをやろうとしていたみたいです。
文脈に即して言えば
→【ほとんどのライトノベルミステリができなかった「びっくりさせるために時間がかかるという難点の克服」をしています】
が正しいです。
いる。「ループ」 から「転生」へと、人生やり直し願望を物語として見せてくれる表現の流行りは切り換わったのだ。
→流行りに切り替わった
これら文章表現は本質ではありませんが、あまりに眼について読みづらいので校正希望。評価はコンセプトの時点で☆5ですが、他の人によまれたくないから-1です。
2020年12月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2020年に初めて読みましたので、少々古く思います。
超有名作品を分析して、どうして売れたか? と言った部分に関しては参考になります。ただ、これらの超有名作品は創作好きや作家を目指す方であれば既に分析されていると思うので、2020年現在別の解説本のようなものを買うことをおすすめします。
また他作品を間接的に貶めるような表現を使われていて私はこの本とは、少し相性が悪かったようです。
超有名作品を分析して、どうして売れたか? と言った部分に関しては参考になります。ただ、これらの超有名作品は創作好きや作家を目指す方であれば既に分析されていると思うので、2020年現在別の解説本のようなものを買うことをおすすめします。
また他作品を間接的に貶めるような表現を使われていて私はこの本とは、少し相性が悪かったようです。
2017年5月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本作は2010年前後に商業的にヒットしたライトノベルを徹底的に洗い出し、なぜこれらの作品が売れ、
他の作品は売れなかったのか? そして売れるライトノベルの共通点とは何かを調べ上げ、具体的な
作品とそのストーリー展開を例に挙げながら提示している。
また、楽しい(ポジティブな要素で満たされている)、ネタになる(話題にしやすく、友人との
コミュニケーションの手段となり得る)、胸に刺さる(感動する、心をえぐられる、何かが残る)が
必須の条件であり、本作で挙げられている10代男子が本を選ぶ基準にも納得できる。
同じMF文庫Jにありながら『ゼロの使い魔』が(終盤で作者が逝去し絶筆するも)成功し
『IS<インフィニット・ストラトス>』が失速し、Amazonレビューで散々なことを書かれ、
挙げ句の果てにトラブルの末版権を引き揚げて他社に移籍したのかという原因を、
主人公と女性の登場人物たちとの関係性、主人公に対する女性の登場人物たちの葛藤、
進展のスピードという観点から見いだしたことは評価に大いに値する。
『とある魔術の禁書目録』については売れているジャンプマンガの要素のすべてプラス
読者のニーズを取り込んだものである(読者のニーズ以外は『バクマン。』に明文化
されているが、読者のニーズは『バクマン。』では敢えて触れられていないものと思われる)
という主張は確かに当を得ており、意外なことに『とある魔術の禁書目録』は
電撃小説大賞受賞作品ではなく、拾い上げの末鎌池和馬が担当の三木一馬とともに
作り上げたものであると事あるごとに明言されていることから、本作で書かれている
ようなストラテジーが練られたものであることは想像に難くない。
特筆すべきはキャラクターごとにx軸に『過去』『現在』『未来』、y軸に
『スペック(外見・能力)』『(他者から見た表面上の)性格』『(内に秘めた考えや願望といった)内面』
『変化のきっかけとなる出来事』を据えたマトリックス図であり、創作において各登場人物ごとに
図を作成し、それをすべて埋め込むことによって大まかなプロットができあがるという仕組みは、
自分にとってあるコロンブスの卵とも言える提示であった。
他の作品は売れなかったのか? そして売れるライトノベルの共通点とは何かを調べ上げ、具体的な
作品とそのストーリー展開を例に挙げながら提示している。
また、楽しい(ポジティブな要素で満たされている)、ネタになる(話題にしやすく、友人との
コミュニケーションの手段となり得る)、胸に刺さる(感動する、心をえぐられる、何かが残る)が
必須の条件であり、本作で挙げられている10代男子が本を選ぶ基準にも納得できる。
同じMF文庫Jにありながら『ゼロの使い魔』が(終盤で作者が逝去し絶筆するも)成功し
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主人公と女性の登場人物たちとの関係性、主人公に対する女性の登場人物たちの葛藤、
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