上岡龍太郎。どこまで名と実が世間に届いているだろうか。特に東日本には。私は西日本育ちなのでいつからということなく知っている。昭和35年が上岡さんのデビューなのだから、私の生まれる以前からの活躍なので。
当時からダウンタウンが登場するまで「師匠に付いて」ではなく出て来た芸人はほぼいないのではないだろうか。一線で活躍するという意味では。横山ノックさんが彼を引っ張り上げなかったら、その道はどうなっていただろう。関西のお笑い、芸能はかなり薄っぺらいものになっていたのではないだろうか。漫画トリオを終えてから活躍の場を広げたが、上岡さんが「師匠なし」のオリジナル、パイオニアではないかと思う。ダウンタウンを「凄い」と引っ張り上げた島田紳助さんともどこか通じると私は踏む。そしてこの上岡さん、紳助さんに共通するワードは、京都という事でしょう。笑福亭鶴瓶さんもまた然りで。
「昨日の自分に飽きよ」とは、松尾芭蕉の言葉ですが、それを京都人だけが敢然と世間に対して行える民族だと思える。外野からの遠吠えでなく、自身が活躍しながらそれが出来るという筋、そのものが京都人の証しの様でもあるような。それが腐らない、失くならないのです。
関西(芸能)がこんな出方を受け入れた事がまた素晴らしいです。これが奇跡を生んでいるとも思うが果たして今、この上岡さんの様な出方を関西は許すだろうか?甚だ疑わしいです。吉本興業や松竹ではない若手を引っ張り上げる芸人もまた、いるのだろうか。でもこの点も上岡さん、紳助さん、ダウンタウン以降にそれ程な威力を持っている人が出ないのが、逆にそんなに才能は転がっていないという事実かも知れない。受け入れる地域であっても。
上岡さんも音楽からスタートしているという点もまた1つ大事な点かも知れないと感じます。人前で歌うなんて事がそもそも出来る、それに躊躇や怖さが無い、それは物凄い筋肉を有するアスリートみたいなモンじゃないだろうか。音楽人として大成しなくてもです。こういうルーツにも注目します。そして上岡さんの実家、特には父親の仕事というのも大いなる遺産の源だと思えます。
ルーツと才能と引っ張り上げる人。この3つが最低限必要なのが「達人」なのではないか。分野の隔てなく。上岡さんの引退公演の千秋楽に、桂米朝さんが登壇したという。これで「引退せなアカンようになった…」と笑う上岡さん。気持ちいい話です。拙い話になりますが、私の父は関西のテレビ局に開局当時から勤めた人だったので、年賀状に米朝さん(の事務所)から年賀状が届くのが驚きでした。時々は父は米朝さんの名前がそこかしこに入っている浴衣も着ていたり。人間国宝なる人がどこか人に近い。それが関西の本懐ではないかと私は感じます。一般人の父に米朝事務所が年賀状を出す?何千枚出さなきゃならないんだろう、そうなら。でもこの関西の近さ、それがこれからもあって欲しいです。
鶴瓶さん、新野新さん、上岡さん、浜村淳さん、そしてキダタローさん、上沼恵美子さんを加えて、ずっと私に君臨している方々。ずっと敬える人がいるのはなんと幸福か。誇りというより、身近に感じられるこれらの人がいる事そのものが素晴らしいです。本書の執筆者、戸田学さんも同じ意見ではないでしょうか。神がかり的な345ページに感謝。青土社にももち論です。
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上岡龍太郎 話芸一代 単行本 – 2013/9/20
戸田学
(著)
「芸は一流、人気は二流、ギャラは三流、恵まれない天才、上岡龍太郎です」 ラジオ、漫談、上岡流講談、演劇、テレビ…上岡龍太郎の“芸"とはいったいなんだったのか。上岡龍太郎自身をはじめ、現場関係者の証言を通して描き出す一代限りの話芸の真髄。 上岡龍太郎「ご挨拶」収録/付録CD・「上岡流講談『ロミオとジュリエット』」
- 本の長さ289ページ
- 言語日本語
- 出版社青土社
- 発売日2013/9/20
- 寸法14.2 x 2.5 x 19.6 cm
- ISBN-104791767276
- ISBN-13978-4791767274
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登録情報
- 出版社 : 青土社 (2013/9/20)
- 発売日 : 2013/9/20
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 289ページ
- ISBN-10 : 4791767276
- ISBN-13 : 978-4791767274
- 寸法 : 14.2 x 2.5 x 19.6 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 144,031位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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上位レビュー、対象国: 日本
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2023年6月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
漫画トリオ後の天才上岡龍太郎さんの歴史。
パペポで腹をかかえながらわらった青春。上岡さんには本当に感謝しかない。
この天才の努力を、いまこうして振り返ることができることが貴重。
そして、想定外の宝物がついていた。上岡流講談「ロミオとジュリエット」の録音がQRコードから読み取れる。あらためてその天才話芸のすごさをじっくり堪能できる。
パペポで腹をかかえながらわらった青春。上岡さんには本当に感謝しかない。
この天才の努力を、いまこうして振り返ることができることが貴重。
そして、想定外の宝物がついていた。上岡流講談「ロミオとジュリエット」の録音がQRコードから読み取れる。あらためてその天才話芸のすごさをじっくり堪能できる。
2023年8月29日に日本でレビュー済み
大好きだった上岡さんの訃報を聞いて、迷わず買ったのがこの本。関西人ではない私にとって、西条凡児さんなど、名前も知らなかった昔の関西の芸人さんの名前も頻繁に出てくるので、読むのが少々しんどかった部分もある。しかし、これまで注目されてこなかった上岡さんの「芸」を、ここまで深く掘り下げた本は後にも先にもなく、上岡さんの天才的な話芸の本質を理解するのに最適な本である。
本書では、上岡さんが担当していたラジオやテレビの番組、特に伝説的なあのパペポTVについても語っていて、上岡さんの異才ぶりがよく分かる。ここでわかるのは、上岡さんが傑出した話芸の持ち主だっただけではなく、プロデューサーとしても際立った能力の持ち主だということである。パペポの企画は鶴瓶さんだが、本書によれば、あの番組のフォーマットを実質的に企画したのは上岡さんである。本書では触れていないが、探偵ナイトスクープの企画も実質的には上岡さんであり、番組開始から30年以上経った現在もその根幹は生きている。
また、上岡さんはテレビとラジオの人という私のような認識の読者は、この本で舞台や講談といった活動を初めて知った人も少なくないのではないか。いくつかの講談は全文が出ているが、文章で読むと「これを一人で喋ったのか!」と思わされる内容である。しかも、これは上岡さんの創作であり、上岡さんの能力の高さを存分に見せてくれる。
さいわい、NHKが放送した上岡さんの追悼番組が上岡流講談の「浜辺にて」だったので、ここに出ている講談を実際に目にすることができた。この「浜辺にて」が現存する映画だと思った人のエピソードが本書にも掲載されているが、私も最後の種明かしまで見事に騙された。あの知性溢れる語りのうまさは、まさに話芸そのものだったと思う。
しかし、そうした話のうまさには圧倒されたが、告白するとこの「浜辺にて」が面白いとは全く思えなかった。上岡さんがお笑い芸人であることからすると、このような反応は決して望ましいものだったのではなかったかもしれない。そういう目でもう一度本書に掲載された講談の内容を見ると、どれも卓越はしているが笑える内容でなかった。本書では、舞台も含めたこうした活動がほとんど世間で話題や評価の対象にならなかったと指摘しているが、なんとなく分かるような気がする。
かつて、立川談志が上岡龍太郎を「芸人に憧れても芸人になり切れなかった人間」と評したことがある。上岡さんの講談を見ると、たしかに傑出した話芸を見ることができるが、「芸人」とは少し違う。舞台にしても、少なからぬ観客はそうした違和感を抱いたのではないか。
上岡さんの引退の理由は未だに謎が多いが、自分が本当にやりたい舞台や講談といった「芸」の部分で、テレビやラジオの仕事で得たような高い評価が得られない現実を冷静に見て、自分の「芸」と時代のギャップは開く一方だからやめるという結論に至ったように、この本を読んで思った。実際、ある番組の街頭インタビューで若者100人に質問をしたところ、忠臣蔵を知っていた人はたった1名だったというのを見て驚いたことがある。上岡さんはおそろしく頭のいい人だったから、そうした未来と自分の好みのギャップを察したのかもしれない。
本書を読むと、上岡龍太郎という不世出の芸人の持つ、凄みと限界がよく分かる。好きな人のことをもっと知りたいというのは人間の性だが、その点で上岡龍太郎が好きな人のそうした好奇心をこの本は存分に満たしてくれる。もちろん、同じように本書を読んで、私とは全く別の思いを抱く人もたくさんいるはずだ。本書が語る上岡龍太郎という芸人には、単純で一面的な解釈を受け入れないような凄みというか底知れぬ感じがある。上岡龍太郎という芸人を、YouTube以外の方法でもっと知りたいと思う人は、本書を手にとってほしい。
本書では、上岡さんが担当していたラジオやテレビの番組、特に伝説的なあのパペポTVについても語っていて、上岡さんの異才ぶりがよく分かる。ここでわかるのは、上岡さんが傑出した話芸の持ち主だっただけではなく、プロデューサーとしても際立った能力の持ち主だということである。パペポの企画は鶴瓶さんだが、本書によれば、あの番組のフォーマットを実質的に企画したのは上岡さんである。本書では触れていないが、探偵ナイトスクープの企画も実質的には上岡さんであり、番組開始から30年以上経った現在もその根幹は生きている。
また、上岡さんはテレビとラジオの人という私のような認識の読者は、この本で舞台や講談といった活動を初めて知った人も少なくないのではないか。いくつかの講談は全文が出ているが、文章で読むと「これを一人で喋ったのか!」と思わされる内容である。しかも、これは上岡さんの創作であり、上岡さんの能力の高さを存分に見せてくれる。
さいわい、NHKが放送した上岡さんの追悼番組が上岡流講談の「浜辺にて」だったので、ここに出ている講談を実際に目にすることができた。この「浜辺にて」が現存する映画だと思った人のエピソードが本書にも掲載されているが、私も最後の種明かしまで見事に騙された。あの知性溢れる語りのうまさは、まさに話芸そのものだったと思う。
しかし、そうした話のうまさには圧倒されたが、告白するとこの「浜辺にて」が面白いとは全く思えなかった。上岡さんがお笑い芸人であることからすると、このような反応は決して望ましいものだったのではなかったかもしれない。そういう目でもう一度本書に掲載された講談の内容を見ると、どれも卓越はしているが笑える内容でなかった。本書では、舞台も含めたこうした活動がほとんど世間で話題や評価の対象にならなかったと指摘しているが、なんとなく分かるような気がする。
かつて、立川談志が上岡龍太郎を「芸人に憧れても芸人になり切れなかった人間」と評したことがある。上岡さんの講談を見ると、たしかに傑出した話芸を見ることができるが、「芸人」とは少し違う。舞台にしても、少なからぬ観客はそうした違和感を抱いたのではないか。
上岡さんの引退の理由は未だに謎が多いが、自分が本当にやりたい舞台や講談といった「芸」の部分で、テレビやラジオの仕事で得たような高い評価が得られない現実を冷静に見て、自分の「芸」と時代のギャップは開く一方だからやめるという結論に至ったように、この本を読んで思った。実際、ある番組の街頭インタビューで若者100人に質問をしたところ、忠臣蔵を知っていた人はたった1名だったというのを見て驚いたことがある。上岡さんはおそろしく頭のいい人だったから、そうした未来と自分の好みのギャップを察したのかもしれない。
本書を読むと、上岡龍太郎という不世出の芸人の持つ、凄みと限界がよく分かる。好きな人のことをもっと知りたいというのは人間の性だが、その点で上岡龍太郎が好きな人のそうした好奇心をこの本は存分に満たしてくれる。もちろん、同じように本書を読んで、私とは全く別の思いを抱く人もたくさんいるはずだ。本書が語る上岡龍太郎という芸人には、単純で一面的な解釈を受け入れないような凄みというか底知れぬ感じがある。上岡龍太郎という芸人を、YouTube以外の方法でもっと知りたいと思う人は、本書を手にとってほしい。
2019年1月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私が最も憧れる芸能人!天才 上岡龍太郎を更に知ることができる1冊。
2023年12月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
45年ほど前の美声からは、ほど遠いけれども大好きな声が、聴けてはるかな昔に戻れる気分です。昔に取ったテープは、ラジオなので、聞きとりにくいから、寂しいです。御冥福を、祈ります。💫
2022年5月20日に日本でレビュー済み
大阪出身である私が、リアルタイムで上岡さんの話芸に触れていたのは、わずかに『パペポTV』だけ
です。上岡さんの凄さを感じていたのは、大学時代に「尊敬する人物は?」と尋ねられたときに、
「島田紳助さんです」と必ず答えていたその紳助さんが、上岡さんのことを実質上の師匠として尊敬
していると、常々話すのを聞いていたからです。
その上岡龍太郎さんのあらゆる話芸を詳らかにしてくれているのが、この本です。
ラジオ、漫談、講談、独演会、そしてテレビで見せてくれた話芸の数々が、活字としてここに蘇り
ます。
著者の戸田さんは、上岡さんの芸を「知的小理屈と毒舌、そして話芸のリズム。これこそが上岡
龍太郎のスタンダップコメディ芸である」と評しています。
大阪、いや関西、上方といえば漫才というのが、日本全国の共通認識でしょう。当の関西人にとっ
ても然りです。現に今テレビで活躍している関西の芸人さんのほとんどが漫才師です。
だけどね、関西には上岡さんの笑いを楽しむ土壌があるんですよ。
だけども、上岡さんのような芸人はもう現れてこないのかな?
考えると彼は京都の出身ですし、著者が評するように、「スタンダップコメディ」であり、ピン芸人
とは一線を画していますから。
本書の末尾には、付録音源として、上岡龍太郎流講談『ロミオとジュリエット』を聞くことができる
QRコードが載っています。書中に出てくる文字だけでなく、上岡さんの語り口、リズム、そして
メガネの奥には笑っていない目を持つ上岡さんだけれど、実はお客さんに楽しんでもらいたいという
愛が感じられる話芸を聴くことができます。
本書の終章では、上岡さんが「横山ノックを天国に送る会」で捧げた弔辞の全文が載っています。
著者の戸田さんは、それを「文学」だと断言しています。
これ、紙に書いた文章を読んだものではありませんから。
便利な時代です。この弔辞はYouTubeで観ることができます。
ちょうど5分の弔辞。いつものように立て板の水のごとく、だけど少し抑えたトーンで、やや
スローなペースで、笑いをチョコチョコとはさみながら、どれだけ記憶力がいいんだと驚くまでの
トリビアを織り交ぜつつ、最後には涙声になるのをこらえてラストまでもっていく。
これこそ、上岡龍太郎の真骨頂です。
上岡龍太郎さんは、私たちの誇りです。
大袈裟だなと思う方は、この本を読んだあとに、YouTubeをご覧ください。
です。上岡さんの凄さを感じていたのは、大学時代に「尊敬する人物は?」と尋ねられたときに、
「島田紳助さんです」と必ず答えていたその紳助さんが、上岡さんのことを実質上の師匠として尊敬
していると、常々話すのを聞いていたからです。
その上岡龍太郎さんのあらゆる話芸を詳らかにしてくれているのが、この本です。
ラジオ、漫談、講談、独演会、そしてテレビで見せてくれた話芸の数々が、活字としてここに蘇り
ます。
著者の戸田さんは、上岡さんの芸を「知的小理屈と毒舌、そして話芸のリズム。これこそが上岡
龍太郎のスタンダップコメディ芸である」と評しています。
大阪、いや関西、上方といえば漫才というのが、日本全国の共通認識でしょう。当の関西人にとっ
ても然りです。現に今テレビで活躍している関西の芸人さんのほとんどが漫才師です。
だけどね、関西には上岡さんの笑いを楽しむ土壌があるんですよ。
だけども、上岡さんのような芸人はもう現れてこないのかな?
考えると彼は京都の出身ですし、著者が評するように、「スタンダップコメディ」であり、ピン芸人
とは一線を画していますから。
本書の末尾には、付録音源として、上岡龍太郎流講談『ロミオとジュリエット』を聞くことができる
QRコードが載っています。書中に出てくる文字だけでなく、上岡さんの語り口、リズム、そして
メガネの奥には笑っていない目を持つ上岡さんだけれど、実はお客さんに楽しんでもらいたいという
愛が感じられる話芸を聴くことができます。
本書の終章では、上岡さんが「横山ノックを天国に送る会」で捧げた弔辞の全文が載っています。
著者の戸田さんは、それを「文学」だと断言しています。
これ、紙に書いた文章を読んだものではありませんから。
便利な時代です。この弔辞はYouTubeで観ることができます。
ちょうど5分の弔辞。いつものように立て板の水のごとく、だけど少し抑えたトーンで、やや
スローなペースで、笑いをチョコチョコとはさみながら、どれだけ記憶力がいいんだと驚くまでの
トリビアを織り交ぜつつ、最後には涙声になるのをこらえてラストまでもっていく。
これこそ、上岡龍太郎の真骨頂です。
上岡龍太郎さんは、私たちの誇りです。
大袈裟だなと思う方は、この本を読んだあとに、YouTubeをご覧ください。
2017年3月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
CDだけでなく、文書で名調子が再現されているので、脳裏に上岡節が溢れます。天才が天才たる所以は、時代に即した努力によりなされたものだと改めて理解できました。AIの技術が発展したら「歌って笑って、ドンドコドン」を再現してほしいと思いました。
2014年12月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
上岡さんの大ファンです。もっと掘り下げて昔話を一杯聞いてみたいです。