言語の成り立ちを分析する学者は多い。
ソシュールやら、藤枝やら、デリダといった言語学者と比較してみると、ガタリはどちらかというと亜流の範疇にはいるだろう。本職としては、言語学の研究に身を置いていたわけではない。が、本書で繰り広げる言語に関する論考は、研究としても一級品のものに仕上がっている。
本書でガタリが述べる言語に関する考えは非常に明快だ。それは、リゾームと樹系列によるタームの発生の起源に焦点をおいて展開される。人が何かを他の人に伝達するために、生み出す表現手法としての記号は、はたしてどのように生み出されるのだろうか。非シニフィアンとして、それはいかに生み出されるか。ガタリが述べる所によると、それは連鎖的／アナロジー的に生み出されることに尽きるわけではない。リゾーム（大きな集合）の中で、なかば偶然と突発的なつながりを持ってして、伝達のための記号が生み出されるという。
噛み砕いて言えば、人が発する何らかの意味／意図を伝えるための言語は、当事者の頭の中で創発的に生み出されるというとわかり易いかもしれない。綺麗に系統だった言語学もあるにはあるが、それは、最終的に「発話する」段階で、コード化されるにすぎず、その前段階では、機械的な連鎖反応が起こっているというよりも、偶発的に様々な要素が連関し合っている。
チョムスキーの言語論からみると、かなりの「異端」扱いされるのは間違いない。だが、ガタリの語る言語論は、2014年現在の世界からみると、なるほどと言わせられる所がたくさんあるのもまた事実だろう。
※原著はコンピューターが本格的な普及を始める20年以上も前に書かれたもの。リゾームの概念とそこから新しい概念やらが生まれてくることは、現在のイノベーションが生まれる概念にも似ている所があります。縦にどんどんつながる発想方法もありますが、どこにひょんな所からの異質なものがくっつくことで、面白いアイデアになると。
さて、言語化される以前の世界に眠るお宝（アイデア）は、さて今後どのように表の世界に出てくるのでしょうか。数十億人が生み出す次世代の世界はどのような相貌になっていくのか楽しみでなりません。
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