この十数年は、社会学の時代だったように思う。特にオウム事件を境にして、新たに表舞台に立った論客の相当数が社会学者だった。なかでもこの宮台氏は、別格のスターだろう。そうでなくては、こんな「宮台真司・全発言」みたいな本は出ない。10年分とは言え、インタビューの量は半端ではない。同じ話の繰り返しが多い点を差し引いても、彼の精力的な仕事振りには驚かされる。
裏表紙に「援交と天皇のあいだに」とある通り、ブルセラ学者として注目を浴びた時期から、天皇を扱う最近の議論まで、矛盾も齟齬も混乱も、その糊塗も言い訳も自己正当化も迷いもそのままに、ここには収められている。宮台氏の思考の特質を見渡すには、格好の素材だろう。たとえばp300からのSIGHTインタビュー(2003)で女子高生擁護からギャル批判・ストリート離脱宣言への転回について問われ、「私が支援してきた動きが進むところまで進んだので、幾つか新しい問題が生じたんですね。こうした問題の到来は「終わりなき日常を生きろ」などで予言しておきましたが、予想よりも早く事態が展開したということです」と応答している点など、往時の左翼的な<状況分析→戦略→実践>図式を彷彿とさせる。
実際、宮台氏は常に状況分析と戦略を語る。自分の運動性を演出する。しかし私の印象では、むしろp78からの別冊宝島インタビュー(1998)で語るような、対メディア戦略の方に彼の一貫性があるのではないかと感じられる。援交も天皇も刺激の強さで選ばれたネタに過ぎない。彼の運動目標は、むしろメディア制覇そのものだったのではないか。だからこそ、本書はこの10年の日本のメディアを考えるための貴重な史料となる。
もう1点。本書を読んでいて私はなんとも言えない息苦しさを感じた。閉塞感と言うか。なんだか風が吹いていない。これは社会学という学問が基本的に問題を内向化させる傾向があるためだと思う。たとえ宮台氏が海外事情に言及し、亜細亜主義を掲げようとも、いつも日本という場所に閉ざされているような閉塞感。たとえば宮台氏の社会/世界図式にしても、彼が「世界の中の複数の社会」について主題的に論じた形跡は、私には見つけられなかった。いかにも、バブル崩壊とともに登場した論客らしいと思う。
善かれ悪しかれ、これが私たちの10年でもあった。
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宮台真司interviews 単行本 – 2005/2/28
宮台 真司
(著)
- 本の長さ399ページ
- 言語日本語
- 出版社世界書院
- 発売日2005/2/28
- ISBN-104792720788
- ISBN-13978-4792720780
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登録情報
- 出版社 : 世界書院 (2005/2/28)
- 発売日 : 2005/2/28
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 399ページ
- ISBN-10 : 4792720788
- ISBN-13 : 978-4792720780
- Amazon 売れ筋ランキング: - 130,196位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,608位社会一般関連書籍
- - 26,254位ノンフィクション (本)
- - 27,130位文学・評論 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1959年、宮城県生まれ。
社会学者、評論家。首都大学東京教授。公共政策プラットフォーム研究評議員。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了(社会学博士)。『日本の難点』(幻冬舎)、『14歳からの社会学』(世界文化社)、『中学生からの愛の授業』(コアマガジン)『<世界>はそもそもデタラメである』(メディアファクトリー)、『制服少女たちの選択』(朝日文庫)、『終わりなき日常を生きろ』(ちくま文庫)など多数。
カスタマーレビュー
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2005年2月3日に日本でレビュー済み
90年代中盤から今までのおよそ10年間に一体何があったのか。
単なる年表的な知識ではなく、その「時代の空気」として知るための
資料として非常に趣き深い書籍。
もちろん、往年のブルセラ社会学者時代からのファンや、亜細亜主義
関連の活動から知った現在のファンにとってのコレクターアイテムと
しての側面も充実しており、収録されたインタビューにはかなりレアな
(回収されてプレミアがついた雑誌や、業界紙など)ものも含まれている。
とはいえ、宮台氏の思想(が仮にあるとして)を知りたい初読者ならば、
ひとまずは他の著作をあたった方が良いのではないか、と思う。
単なる年表的な知識ではなく、その「時代の空気」として知るための
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