人体実験や障害者の断種などに代表されるナチスの優生思想については既に多くの研究があり、それらの多くは、ナチスの残虐性を立証することに主眼がおかれていた。
本書は従来のナチス優生主義研究とは一線を画し、ナチスの健康政策と現代先進国の厚生政策との類似性・共通性を検証・分析することに主眼を置いている。
つまり、ナチスの健康政策は当時の世界で最先端のものであり、同時に現代の文明国の健康政策とかなり共通している、ということを立証している。
また、「不健康は悪、健康は善」という命題のもとに国民の健康を啓蒙、向上させ、その延長に健康の強制、そして優生主義があることも、実に必然的なファシズムの帰結であることを本書は解き明かしてくれる。
同時に日本の読者は、厚生労働省の「健康日本21」が、ナチスの健康政策と極めて類似した政策を多数含むことを推察し、肌寒くなるわけである。
医学・厚生以外の分野のナチス研究も同様にナチスの異常性・残虐性を立証する研究から、ナチスと現代社会との類似性・共通性を検証・分析することに重点を置くべきである。
あくまで歴史は現代と未来のために研究されるものであり、「ナチスはこんなにひどかった」と証明すれば済むものではない。
乱暴に言えばナチズムは近代合理主義と伝統的な反ユダヤ主義を母体として生まれ、その2つは現在も消滅してはいないのである。
『強制された健康―日本ファシズム下の生命と身体』(藤野豊著)も併せて読むことをお薦めする。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
健康帝国ナチス 単行本 – 2003/9/1
- 本の長さ373ページ
- 言語日本語
- 出版社草思社
- 発売日2003/9/1
- ISBN-104794212267
- ISBN-13978-4794212269
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
ナチズムが大衆の人気を集めたのは、ユダヤ人憎悪があったからだけではない。大衆はナチズムに、健康志向をはじめとする様々な分野に、若さの回復を見たのだ。国家や個人にとって「健康」とは何か? 異色のナチズム研究書。
登録情報
- 出版社 : 草思社 (2003/9/1)
- 発売日 : 2003/9/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 373ページ
- ISBN-10 : 4794212267
- ISBN-13 : 978-4794212269
- Amazon 売れ筋ランキング: - 462,051位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 159位ドイツ・オーストリア史
- - 648位医学
- - 1,185位ヨーロッパ史一般の本
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
星5つ中4.4つ
5つのうち4.4つ
全体的な星の数と星別のパーセンテージの内訳を計算するにあたり、単純平均は使用されていません。当システムでは、レビューがどの程度新しいか、レビュー担当者がAmazonで購入したかどうかなど、特定の要素をより重視しています。 詳細はこちら
34グローバルレーティング
虚偽のレビューは一切容認しません
私たちの目標は、すべてのレビューを信頼性の高い、有益なものにすることです。だからこそ、私たちはテクノロジーと人間の調査員の両方を活用して、お客様が偽のレビューを見る前にブロックしています。 詳細はこちら
コミュニティガイドラインに違反するAmazonアカウントはブロックされます。また、レビューを購入した出品者をブロックし、そのようなレビューを投稿した当事者に対して法的措置を取ります。 報告方法について学ぶ
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2008年2月20日に日本でレビュー済み
佐藤優氏が近著で、9・11以降、国家が「きれい好き」になり、官僚が暴力性を高めているという指摘をしていた。
テロリストを狩り出すには、自分の国の中にテロリストとつながる人間がいないかどうか、徹底的に探し出して、それを隔離、孤立させ、さらに除去していくことになる。
そのプロセスは伝染病の流行を防止する公衆衛生の手法と類似する。
伝染病対策の手法を無遠慮に「人種」や「人間の頭の中身」まで拡大して、大規模にかつ徹底して行ったのがナチスドイツだったのである。
きわめて暴力的だったナチスドイツが、同時にきわめて「きれい好き」だったのは、論理的に整合するのだ。
テロリストを狩り出すには、自分の国の中にテロリストとつながる人間がいないかどうか、徹底的に探し出して、それを隔離、孤立させ、さらに除去していくことになる。
そのプロセスは伝染病の流行を防止する公衆衛生の手法と類似する。
伝染病対策の手法を無遠慮に「人種」や「人間の頭の中身」まで拡大して、大規模にかつ徹底して行ったのがナチスドイツだったのである。
きわめて暴力的だったナチスドイツが、同時にきわめて「きれい好き」だったのは、論理的に整合するのだ。
2006年2月18日に日本でレビュー済み
ナチスとは近代合理主義の正当な嫡出子だったのではないか、鬼子とするのは卑怯な逃げではないのか、という恐るべき問いを内に秘めつつ、表面的には淡々とナチスの健康政策について記述します。
恐るべき問いを秘めていることに気付かない人は、楽しく読めばいいでしょう。気付いた人は、眠れない夜を過ごすこと請け合いです。
恐るべき問いを秘めていることに気付かない人は、楽しく読めばいいでしょう。気付いた人は、眠れない夜を過ごすこと請け合いです。
2014年3月1日に日本でレビュー済み
最近、ヒトラー本をたくさん読んでいます。
私はヒトラー礼賛はしませんが、ヒトラーのやることは何もかも皆悪い、というのも随分偏った意見だと思うので。
アメリカはインディアンを虐殺して国を建ててるだろ……とも思う。
この本はヒトラーだろうがナチスだろうが、良いことはよい、悪いことは悪いと書いているので公平です。
「健康」関連に絞った著作なので、相当なレア情報もあって面白い。
逆に、ヒトラーについて興味を持ち、はじめて読む方にはレアすぎる感じ。
中級~上級者向けです。(かなり上級者かな?)
私はヒトラー礼賛はしませんが、ヒトラーのやることは何もかも皆悪い、というのも随分偏った意見だと思うので。
アメリカはインディアンを虐殺して国を建ててるだろ……とも思う。
この本はヒトラーだろうがナチスだろうが、良いことはよい、悪いことは悪いと書いているので公平です。
「健康」関連に絞った著作なので、相当なレア情報もあって面白い。
逆に、ヒトラーについて興味を持ち、はじめて読む方にはレアすぎる感じ。
中級~上級者向けです。(かなり上級者かな?)
2019年4月11日に日本でレビュー済み
ナチスの反タバコ政策がファシズム的であったことが描かれる。私は乱暴な反タバコ政策には反対する非喫煙者だが、まあタバコによって喫煙者に肺がんが増えたのは確かにそうだろう。ところで、プロクターは現代の禁煙運動には賛成している。現代の禁煙運動はナチスのようなファシズム的ではないと言う。しかし、本当にそうなのか納得できない。そもそも、タバコは合法である。合法のものを禁止していくなら議論とか民主主義のプロセスが必要である。また、タバコを体に悪いと分かって吸って本人が病気になって何が悪いのか。自分の体は、自分のものである。人間は不健康になる自由がある。もし嫌煙家が「病気の人間を税金で面倒みたくないから体に悪い煙草をやめろ!」と言うとしたら、それこそ健康を国家が管理しても良いとするファシズムである。この本では受動喫煙については触れられていないが、受動喫煙に害がそんなにあるのか怪しいと私が思っていることについては、過去にも書いた。密閉された部屋における受動喫煙が無害ではないにしても(私は屋外での受動喫煙は無害だと思っているが)、現代人は車や工場の排気ガスを散々吸っていて、何でタバコだけ狙い撃ちされなければいけないのか分からない。もしタバコを制限していくとしたら、他の有害なガスや酒や化学物質・食品添加物も制限していかなければならないだろう。それらが制限されるのなら、タバコを制限するのは筋が通っているから反対しない。
あとは、引用元が詳しく書かれていないのが気に掛かる。参考文献は後ろにまとめてはいるが、正確なデータを使っているのか怪しんでしまう。
あとは、引用元が詳しく書かれていないのが気に掛かる。参考文献は後ろにまとめてはいるが、正確なデータを使っているのか怪しんでしまう。
2011年5月5日に日本でレビュー済み
原題はThe Nazi War on Cancer. ナチス・ドイツ時代のドイツにおけるガン撲滅運動、禁煙運動、食生活改善運動などの実態に迫った書。あらゆることの調査、分離、選別に血道をあげたナチスだが、もちろん公衆衛生もその対象。集団検診やその結果に基づく労働者の選別を行った。それは“良質な”遺伝子と“良質な”労働力の確保という二重の意味合いを持った「健康ユートピア」構想の一環であり、人種浄化や断種法へとつながっていく発想である。
本書はナチスの推進した身体政策や労働医学のイデオロギー的側面と、実際のインパクトは分けて考えるべきであるという視点から書かれている。事実だけを列挙すれば、ドイツの医学研究は、ヒトラーが政権を掌握する1933年時点ですでに世界の最先端にあり、放射線防護のための基準を世界で初めて定めたのはドイツの学会であり、肺がんと喫煙の関係を最初に証明したのも、アスベストの発がん性についての研究がもっとも進んでいたのもナチス・ドイツだった。1940年代、ドイツほど国民の食料、飲料、空気を徹底的に管理し、危険を取り除こうとした国はなかったこともほぼ確実。そして1950年代以降、ドイツ人のあらゆる年齢層において明らかにガン死亡率が減少している。これらのことだけを切り取ってみれば、高度に行きとどいた保健行政が行われている福祉優等生国家のように見えるが、問うべきは、なぜここまで国民の健康管理が徹底できたのか、である。
著者の答えはこうだ。「国民健康向上計画はファシズムにもかかわらずおこなわれたというよりむしろ、ファシズムだからこそおこなわれた面が強い」。なぜなら「発がん性物質を排除するということになれば必然的にある程度政治的・経済的自由が制限されることになる」からである。ナチスの打ち立てんとした「健康ユートピア」はおぞましい大量殺戮の記憶と結びついているために、その実像を直視することは感情的に困難だが、そこにあった狂気と合理性の双方に目を向けなければ人類史上まれにみる惨劇の全体像は見えないと著者は言う。狂気と合理性はいかにして結合したのか。野望と無関心はどこで合流したのか。そのカギとなるのが当時の時代精神を支配していた「ものごとは実現されなければ意味がない」という「前向き思考(ポジティブシンキング)」であった。そしてその一見単純明快な前向き思考がもたらすものは、決して単純明快なものではない。ナチス時代の実践した人種衛生が単なる「狂気の医学」ではなく、今日あたりまえのように「よいもの」とされている定期検診、禁煙、自然食などを推奨していたことにも目を向けよ、と本書は説く。
一理ある。たしかに一理あるが、それ自体がひとつの宇宙のごとき人間の身体を徹底的に制御し、「品質改善」していくという発想に対しての嫌悪感というものはぬぐえないどころか、本書を読んでさらに増した気がする。この「改めて」の気持ち悪さこそ、著者が読者に届けたかった、「単純明快な発想」の「複雑怪奇な帰結」ではなかったか。
本書はナチスの推進した身体政策や労働医学のイデオロギー的側面と、実際のインパクトは分けて考えるべきであるという視点から書かれている。事実だけを列挙すれば、ドイツの医学研究は、ヒトラーが政権を掌握する1933年時点ですでに世界の最先端にあり、放射線防護のための基準を世界で初めて定めたのはドイツの学会であり、肺がんと喫煙の関係を最初に証明したのも、アスベストの発がん性についての研究がもっとも進んでいたのもナチス・ドイツだった。1940年代、ドイツほど国民の食料、飲料、空気を徹底的に管理し、危険を取り除こうとした国はなかったこともほぼ確実。そして1950年代以降、ドイツ人のあらゆる年齢層において明らかにガン死亡率が減少している。これらのことだけを切り取ってみれば、高度に行きとどいた保健行政が行われている福祉優等生国家のように見えるが、問うべきは、なぜここまで国民の健康管理が徹底できたのか、である。
著者の答えはこうだ。「国民健康向上計画はファシズムにもかかわらずおこなわれたというよりむしろ、ファシズムだからこそおこなわれた面が強い」。なぜなら「発がん性物質を排除するということになれば必然的にある程度政治的・経済的自由が制限されることになる」からである。ナチスの打ち立てんとした「健康ユートピア」はおぞましい大量殺戮の記憶と結びついているために、その実像を直視することは感情的に困難だが、そこにあった狂気と合理性の双方に目を向けなければ人類史上まれにみる惨劇の全体像は見えないと著者は言う。狂気と合理性はいかにして結合したのか。野望と無関心はどこで合流したのか。そのカギとなるのが当時の時代精神を支配していた「ものごとは実現されなければ意味がない」という「前向き思考(ポジティブシンキング)」であった。そしてその一見単純明快な前向き思考がもたらすものは、決して単純明快なものではない。ナチス時代の実践した人種衛生が単なる「狂気の医学」ではなく、今日あたりまえのように「よいもの」とされている定期検診、禁煙、自然食などを推奨していたことにも目を向けよ、と本書は説く。
一理ある。たしかに一理あるが、それ自体がひとつの宇宙のごとき人間の身体を徹底的に制御し、「品質改善」していくという発想に対しての嫌悪感というものはぬぐえないどころか、本書を読んでさらに増した気がする。この「改めて」の気持ち悪さこそ、著者が読者に届けたかった、「単純明快な発想」の「複雑怪奇な帰結」ではなかったか。
2011年9月7日に日本でレビュー済み
ナチスの諸施策には時代を先取りした優れた施策があったのは事実だが、それを評価することで、ナチズムの悪について元枢軸国の日本人が語ってはいけないのではないか(身内びいきと思われても仕方ない)。ドイツはアーリア人至上を唱えユダヤ人を諸悪の元凶とみなし、日本は天皇を至上の不可侵なものとして日本を神国と称して、自国に敵対する国々を鬼畜呼ばわりした。ナチスはもともと芸術指向で非現実的なユートピア主義者のヒトラーに、トゥーレ協会などのオカルティストが寄り集まって千年王国を樹立しようとした集団であって、第一次大戦後の疲弊したドイツの復興は、その野望の単なる第一段階に過ぎなかったのだ。ナチの優生思想とは自のみを優れた善として他は劣悪であるという一貫した独善主義であり、それが自(ナチスドイツ)に向かえば優秀な施策となり、他(諸外国、ユダヤ人)に向かえば癌として撲滅すべしとなる。日本軍の南京大虐殺の真偽については諸説あるが、煙の無いところ火はたたず。ホロコーストをやってのけたナチズムを、ナチスドイツ自国民のみに向けられたいくつかの優れた施策だけで免罪できるような言辞を弄するような日本人がいると言うこと。日本国民は平和ボケなのか、昨今の政治家のように無責任なのか、もしくは「己を省みる}とか「他山の石」とか「自分を恥じる」などという言葉を忘れてしまったかのように思われる。 ナチズムの罪の減免が本書の意図するところとは正反対であるのは自明だと思うが、なによりドイツ国民がナチスとその思想を現在どう評価しているかが歴史の証明と言える。21世紀になってナチスを多少なりとも賞賛するドイツ国民以外の人間は、無責任で恥知らずの門外漢と言われても仕方が無いのではないか?
2008年9月14日に日本でレビュー済み
ナチスドイツに語る場合は常に否定的な場合でしか語られない
ただそれは真実ではなくいいところだってたくさんあった。
そういう事例の一つの紹介として本書はある。
ナチスを肯定しているんではなくていいところは評価し、悪いところは断罪する。
なにに置いても重要ではないか。
常に色眼鏡を付けて否定的に評価するのはよくないことであると強調したい。
そういう立場に立った上で、ナチスドイツを批判するべきであろう。
ただそれは真実ではなくいいところだってたくさんあった。
そういう事例の一つの紹介として本書はある。
ナチスを肯定しているんではなくていいところは評価し、悪いところは断罪する。
なにに置いても重要ではないか。
常に色眼鏡を付けて否定的に評価するのはよくないことであると強調したい。
そういう立場に立った上で、ナチスドイツを批判するべきであろう。
他の国からのトップレビュー
Kindle-Kunde
5つ星のうち4.0
Sehr interessant, aber leider auch sehr klein angezeigt
2022年4月22日にドイツでレビュー済みAmazonで購入
Wäre es von der Schriftgröße her leichter lesbar, gäbe es volle Punktzahl für das eBook.
aloma d alber
5つ星のうち5.0
this book was better than I had expected
2015年7月19日にアメリカ合衆国でレビュー済みAmazonで購入
this book was better than I had expected, it talks about industrial problems that could be from today's headlines as well, for a historian of the time or someone interested in public heath issues like advertising of cigarettes or what's in our factories and food a good history read.
Gastronaut
5つ星のうち5.0
Recommended
2010年11月24日に英国でレビュー済みAmazonで購入
The author has delved into a hitherto unexplored aspect of the Third Reich, and having done so, presents the reader with a number of unexpected surprises. Informative and thought provoking. Definately worth purchasing.
Pure truth seeker
5つ星のうち5.0
Superb
2016年1月30日に英国でレビュー済みAmazonで購入
Superb...read it to find out why....leave your programming at the door
Sue L. Grau
5つ星のうち5.0
Book Review
2009年4月11日にアメリカ合衆国でレビュー済みAmazonで購入
It is good reading but I was dissapointed to learn that the Nazis don't have a cure for cancer.