「事実を知ることが、世界を変える大切な一歩です」
そんな帯のメッセージがこの著者が最も伝えたかったことである。
「私は、これらの５０の事実が世界を変えると確信している」とも。
全体的な論調はリベラルである。また、反グローバリズムの色調も濃い。
そもそもこういう発想の著作はリベラル派しか考えないような気もするが。
「はじめに」にある次の言葉を読めば著者の立場はほぼ理解できるのではないか。
「世界を取り巻く問題の多くは、富める先進国と貧しい途上国との、醜い不平等に起因している」「これまで富裕国は、途上国に高い障壁を課して自国の経済を下支えし、グローバリゼーションをさらなる搾取の手段にしてきた。企業も、貧困国の安価な労働力や資源を使ってますます利益を上げてきた」
「日本女性の平均年齢は・・・」「肥満の人の・・・」「タイガー・ウッズが・・・」といった先進国と途上国の格差に起因する問題を扱った章もあれば、「先進国で最も妊娠率が高い・・・」「英国のスーパーマーケット・・・」「アメリカ人の３人に１人は・・・」といった先進国の問題を扱った章があると思えば、「ケニアでは家計の・・・」「毎年、２００万人の・・・」のような途上国の問題を扱った章もありバランスを取っている。
先進国といっても大半がアングロサクソン（さらに踏み込んでいえばほとんどがアメリカ）への批判というところは少し気になるが。テーマの扱いにはあきらかに著者の立場が反映されているが、それぞれの内容は事実に基づいた客観的な記述に徹底しているため、参考になるところも多かった。
私個人として最も気に入った章は「ブラジルには軍人よりも化粧品の訪問販売員のほうがたくさんいる」である。中産階級の発展とともに需要の増大した、グローバリズムの典型ともいえる外国の化粧品会社の商品をジャングルの奥深くまで訪問して販売する。ブラジルの女性が困難な状況の中での社会的経済的自立への工夫と熱意はグローバリズムの進展する世界の中においても状況切り開いていく人間のたくましさと未来への希望を感じさせるエピソードと感じた。
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