著者で、本の中のイラストを描いた飛田(敬称略すみません)という人は、中国で兵役後、捕虜収容所などで、捕虜に虐待を与えたとして、C級戦犯となった。
習ったわけでもないのに、好きでイラストを描いていた(少し見にくかったり、読みにくいが、一言も二言も添え書きしている文がまた面白い)飛田は、まずは「入所前の所持品検査」や「DDT(害虫駆除のための薬)の噴射」などを、描いている。
戦犯として収容された心細さなどはなかったのだろうか、新聞の1コママンガのように、時にはブラックジョークが利いている。
自身の「初めての尋問」、部屋の中での戦犯の人たちの行動、暇?つぶし…。
ある日、それを見た、A級戦犯の梨本宮に、 「食事の配給風景を描いて欲しい」と頼まれる。食事の配膳を受ける、浴衣に羽織り姿の列には、梨本宮をはじめ、A級戦犯の、東條英機、岸信介…などがならぶ。
梨本はイラストを賞賛し、 「ここから出たら、陛下に見せる」と言ったそうな。
イラストの間には、文章で、飛田がここへ収監された経緯や、巣鴨プリズンに来てからの、戦犯の様子、また、秘話というか裏話というか、イラストだけでなく、文章も面白いのである。
戦犯といえば、ただ罪を償い出所する囚人とは違い、他の国(主にアメリカ)の言葉もよく通じぬ尋問を受けるのに、この明るさには救われる。
実際に、飛田は重労働30年の期間、服役したが、飛田が描いたイラストは、アメリカで話題となったという。
ところどころの解説には、処刑などについて書いてあり、飛田とて、いつどうなるかわからない身の上だった。
「芸は身を助く」というか、イラストを楽しみとしながら、獄中生活を過ごした著者に、心から拍手を送りたい。
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