私たち日本人は、幼少の頃より「日本は資源に乏しい国なので、がんばって頭を使い、稼いだお金で海外から資源を輸入するしかない(=そうしてさえいればいいのだ)」と教育され、なぜかそれで納得してきてしまった。石油はもちろん、金属、鉱物等あらゆる天然資源問題に目を向けることを一切放棄してしまった現代日本人。ここまで資源オンチになってしまったことの問題の深さについて、まざまざと考えさせられる本であった。
本書では以下の4点が重要なポイントとして挙げられているが、論点が整理されていて読みやすい。
1.資源の枯渇性
2.資源の地政学的な偏在性
3.国際大資本(メジャー)による寡占支配
4.地球環境への影響
資源なくして国の発展はあり得ない。故に今後益々激化するであろう国家間の資源争奪戦。そして避けては通れない資源開発に伴う環境破壊・・。日本人の知らない厳しい現実を突きつけられるが、出来上がった製品にしか触れることない私たちは、どのように遠い国の天然資源に想いを馳せながら自国の資源戦略を立てればよいのだろうか。
途方に暮れるところだが、本書では最後に多岐にわたる解決策も挙げられているところが、単なる啓蒙書とも違うところだ。
時に古代史を紐解きながらの解説は歴史書を読むような面白さもあり、この種の本が無味乾燥になりがちになるところ、不思議と誰にでも読みやすく仕上がっている。ビジネスマンという枠を超えた著者の博識と教養に負うところが大きいのだろう。決して押し付けがましい文章でないにもかかわらず、ご本人の地球環境保全に対する強い使命感と自国への愛情を感じた。注釈やデータも充実し、資料としての価値もある。
世界の資源の実情を如実に語った力作。
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入門・資源危機: 国益と地球益のジレンマ 単行本 – 2005/10/1
谷口 正次
(著)
- 本の長さ290ページ
- 言語日本語
- 出版社新評論
- 発売日2005/10/1
- ISBN-104794806809
- ISBN-13978-4794806802
商品の説明
メディア掲載レビューほか
入門・資源危機 国益と地球益のジレンマ
元鉱山技師の著者が、石油以外の資源問題について、「枯渇性」「地政学的な偏在性」「国際大資本による寡占支配」「地球環境への影響」という4つの視点で考察する。日本産業のアキレス腱とされるレア・メタル、レア・アースなど、各資源の実情を解説する。また、地球をスイカに見立てて縦割りするとバランスよく様々な資源が存在するという「スイカ縦割り理論」を紹介。同一エリア内の南北関係を重視して政治・通商・外交戦略を立てるべきと主張する。日本は「無資源国」であるからこそ、資源の特性を認識し、長期的な資源戦略とそれに基づく外交を展開することが重要と結ぶ。
元鉱山技師の著者が、石油以外の資源問題について、「枯渇性」「地政学的な偏在性」「国際大資本による寡占支配」「地球環境への影響」という4つの視点で考察する。日本産業のアキレス腱とされるレア・メタル、レア・アースなど、各資源の実情を解説する。また、地球をスイカに見立てて縦割りするとバランスよく様々な資源が存在するという「スイカ縦割り理論」を紹介。同一エリア内の南北関係を重視して政治・通商・外交戦略を立てるべきと主張する。日本は「無資源国」であるからこそ、資源の特性を認識し、長期的な資源戦略とそれに基づく外交を展開することが重要と結ぶ。
(日経エコロジー 2006/02/01 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
-- 日経BP企画
登録情報
- 出版社 : 新評論 (2005/10/1)
- 発売日 : 2005/10/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 290ページ
- ISBN-10 : 4794806809
- ISBN-13 : 978-4794806802
- Amazon 売れ筋ランキング: - 564,493位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 421位環境問題
- - 1,320位建築・土木工学
- - 52,399位ビジネス・経済 (本)
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2005年12月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2005年11月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
世界各地の資源開発現場を渡り歩き「資源開発は、環境破壊そのものである」と自ら語る筆者が説く
資源と経済と文明、ロスチャイルド家のしたたかな戦略、鳥の糞争奪戦、日本産業のアキレス腱、資源外交など
消耗しつつある、民族、経済、生物多様性を再生するための資源戦略は「スイカの縦割り理論」。
現在、都市生活者の目に映るものの多くは工業製品だと思いますが、現代工業社会発展の基礎から、普段目に付く人工物の生まれ(構成元素)、育ち(精製・加工)、こぼれ話(史実、分布の特徴)を知り、最終製品の省エネ効率や性能だけでなく、製造工程の川上に目を向ける重要性を認識しました。
国益(日本の発展)と地球益(開発地域の破壊)などのジレンマに苛まれた著者の、人間味の溢れる文章のおかげで、必要以上に悲観的になったり、短絡的な正義感を振り回さずに読めました。
ページ毎の丁寧な脚注も、専門家の高慢な表現がないので、どんな年齢の人にも読みやすいと思います。
資源と経済と文明、ロスチャイルド家のしたたかな戦略、鳥の糞争奪戦、日本産業のアキレス腱、資源外交など
消耗しつつある、民族、経済、生物多様性を再生するための資源戦略は「スイカの縦割り理論」。
現在、都市生活者の目に映るものの多くは工業製品だと思いますが、現代工業社会発展の基礎から、普段目に付く人工物の生まれ(構成元素)、育ち(精製・加工)、こぼれ話(史実、分布の特徴)を知り、最終製品の省エネ効率や性能だけでなく、製造工程の川上に目を向ける重要性を認識しました。
国益(日本の発展)と地球益(開発地域の破壊)などのジレンマに苛まれた著者の、人間味の溢れる文章のおかげで、必要以上に悲観的になったり、短絡的な正義感を振り回さずに読めました。
ページ毎の丁寧な脚注も、専門家の高慢な表現がないので、どんな年齢の人にも読みやすいと思います。
2005年11月23日に日本でレビュー済み
特に前半にでてくる資源争奪戦の裏話、どこの国のどこの企業がどんな風に資源をにぎっているかなどの知られざる裏舞台の話は、まるでフィクションのような面白さ。鉱山、採掘の話なんて、まったくしらなかったけど、注釈も丁寧だし、テーマごとに細かく、歴史もまじえて、順序だててわけてあるので、読みやすかった。それに、世界の資源分布から外交を考える「スイカ縦割り理論」!今すぐ世界中の政治家に知ってほしい。とにかく理にかなっている。
読み終わったあと、「こういうことだったのか!!」という気持ちと同時に、「こんなに大事な事を知らなかったなんて、、!」と思い、愕然とした。本当に「ジレンマ」。
一人でも多くの人に、なるべく早く読んでほしい本。
読み終わったあと、「こういうことだったのか!!」という気持ちと同時に、「こんなに大事な事を知らなかったなんて、、!」と思い、愕然とした。本当に「ジレンマ」。
一人でも多くの人に、なるべく早く読んでほしい本。
2005年11月27日に日本でレビュー済み
谷口先生著書の「入門・資源危機」は単なる金属・燃料・鉱石などの種類や埋蔵量を述べている本ではありません。これらの資源を幹として、政治、経済、歴史、産業、技術等、様々な分野に枝が分かれてゆく、非常に奥の深い内容となっています。
現在エネルギーといえば最初に思いつくほど石油がしばしばニュースや新聞で取り上げられますが、実は日本は現在石炭輸入国ナンバーワンであったり、また、木炭の代わりにコークスを使った高炉が早い段階で発達した日本は、イギリスのように深刻な森林伐採を免れたこと等、大変興味深く読ませていただきました。
今述べた内容はほんの一例ですが、これ以上に興味深い項目がたくさんあり、ハードカバーの本としては比較的高いお金を払っても、決して損はないと思います。
現在エネルギーといえば最初に思いつくほど石油がしばしばニュースや新聞で取り上げられますが、実は日本は現在石炭輸入国ナンバーワンであったり、また、木炭の代わりにコークスを使った高炉が早い段階で発達した日本は、イギリスのように深刻な森林伐採を免れたこと等、大変興味深く読ませていただきました。
今述べた内容はほんの一例ですが、これ以上に興味深い項目がたくさんあり、ハードカバーの本としては比較的高いお金を払っても、決して損はないと思います。