ようやく出た…というのが正直な感想です。ここ1年ばかり、多くのイスラーム金融に関する入門書や解説書が出版されていますが、いずれも、われわれが持ち合わせている金融についての概念や知識を用いてイスラーム金融の機能や仕組みを説明するものであって、その意味では、技術論的な視角に限定されたイスラーム金融論であったといえます。その多くは「われわれの持ち合わせているメガネでもってイスラーム金融を見たらこうなります。ねっ、カンタンでしょ?」といった立ち位置での解説であって、そこでは、われわれのメガネそのものが曇っている可能性について、まったく無自覚であったといえます。
本書は、過去の類書とは一線を画し、イスラーム金融の全体像とその<可能性の中心>に迫ろうとする試みです。本書が狙いとするところは「イスラーム金融の基本構造をグローバル化に則した側面と、資本主義に抗する側面の双方から考察することにある」と明確です。近代的な「個」を前提とする(市場)交換と、共同体を基礎とする贈与の関係とが、バランスをとり共存するシステムとしてイスラーム金融をとらえること。交換機能のもつ合理性を保持しつつ、なおかつ今日の資本主義システムに見られる無限定な価値の自己増殖、その暴走を許さない仕組みがイスラーム金融にはあらかじめビルトインされている、そう櫻井は指摘します。
イスラーム金融とは、たんなる「仕組み」や「機能」に還元できるものではなく、その全体性において、宗教的倫理性あるいは人々の社会的な関係性と不可分である点において、きわだった特徴をもつシステムであるということができます。まさに存在論的視角が必要とされるゆえんです。
未曾有の原油高と巨大マネーに沸騰する中東経済の活況という時流に安易に便乗するのではなく、イスラーム金融が内包している<可能性の中心>を見極め、あるいはその衝撃のもつ真のマグニチュードの大きさを測るためにも、本書のような存在論的な視角からの語りが不可欠だといえます。僕らは、ようやくその端緒となり得る労作を手にすることができたといえるのではないでしょうか。
プライム無料体験をお試しいただけます
プライム無料体験で、この注文から無料配送特典をご利用いただけます。
非会員 | プライム会員 | |
---|---|---|
通常配送 | ¥410 - ¥450* | 無料 |
お急ぎ便 | ¥510 - ¥550 | |
お届け日時指定便 | ¥510 - ¥650 |
*Amazon.co.jp発送商品の注文額 ¥3,500以上は非会員も無料
無料体験はいつでもキャンセルできます。30日のプライム無料体験をぜひお試しください。
¥2,750¥2,750 税込
発送元: Amazon.co.jp 販売者: Amazon.co.jp
¥2,750¥2,750 税込
発送元: Amazon.co.jp
販売者: Amazon.co.jp
¥1,141¥1,141 税込
配送料 ¥350 6月13日-14日にお届け
発送元: もったいない本舗 ※通常24時間以内に出荷可能です。 ※商品状態保証。 販売者: もったいない本舗 ※通常24時間以内に出荷可能です。 ※商品状態保証。
¥1,141¥1,141 税込
配送料 ¥350 6月13日-14日にお届け
発送元: もったいない本舗 ※通常24時間以内に出荷可能です。 ※商品状態保証。
販売者: もったいない本舗 ※通常24時間以内に出荷可能です。 ※商品状態保証。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
イスラーム金融: 贈与と交換、その共存のシステムを解く 単行本 – 2008/8/10
櫻井 秀子
(著)
{"desktop_buybox_group_1":[{"displayPrice":"¥2,750","priceAmount":2750.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"2,750","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"fs9XC4hlGXhcM8nkUrf6R3E0GBDYFuqK5V%2FDUo9CSpWCITYm3bfztMYdK5rdgXuzOlnf1CjnLcVGH1OHeSZMGfr1C86YTZ4rI8OioUKmBxCaW2YgbKc4vJ07fXHIZMcG","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"NEW","aapiBuyingOptionIndex":0}, {"displayPrice":"¥1,141","priceAmount":1141.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"1,141","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"fs9XC4hlGXhcM8nkUrf6R3E0GBDYFuqKF8LgtGhmo7YBWj6D4F5p%2FwL6KEQZ%2FK%2FnC4H%2FT4dyuphoDa0%2FUUv0E1n5AG7fKvXdPAb0oHFS8GX6S%2FzzrEiMWXgWWyogYerCqzkrcQd1fXv6TYOUBpJ%2FlxejH92AKpAhCQq0LzBw63wnGTGmZrytuQ%3D%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"USED","aapiBuyingOptionIndex":1}]}
購入オプションとあわせ買い
独自の〈交換/贈与混交市場〉の構造を総合的に捉え、
イスラーム社会の全体像を発見・解読する
21世紀に入り、グローバル金融市場の拡大は著しい。そこでは金融そのものが打出の小槌のごとく利益を生み出し、マネーゲーム化した社会に生きるために、金融リテラシーが求められるほどである。
このような状況とは対照的に急浮上してきたのが、イスラーム金融市場である。そこでは独自のコンプライアンスをもとに、実体性と倫理性に主眼をおく投資が行なわれている。その歴史は長く、イスラーム法に基づく取引は、イスラーム社会において伝統的に培われてきた。
本書は、このようなイスラーム金融市場の基本構造を、社会とのつながりも含めて明らかにするものである。
イスラーム社会の全体像を発見・解読する
21世紀に入り、グローバル金融市場の拡大は著しい。そこでは金融そのものが打出の小槌のごとく利益を生み出し、マネーゲーム化した社会に生きるために、金融リテラシーが求められるほどである。
このような状況とは対照的に急浮上してきたのが、イスラーム金融市場である。そこでは独自のコンプライアンスをもとに、実体性と倫理性に主眼をおく投資が行なわれている。その歴史は長く、イスラーム法に基づく取引は、イスラーム社会において伝統的に培われてきた。
本書は、このようなイスラーム金融市場の基本構造を、社会とのつながりも含めて明らかにするものである。
- 本の長さ258ページ
- 言語日本語
- 出版社新評論
- 発売日2008/8/10
- ISBN-104794807805
- ISBN-13978-4794807809
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
1959年生まれ。
神戸大学経営学部卒、国際大学国際関係学研究科修士課程修了。
現在、作新学院大学総合政策学部教授。
中東経済・経営、イスラーム社会思想専攻。
訳書にアリー・シャリーアティー『イスラーム再構築の思想』ほか。
神戸大学経営学部卒、国際大学国際関係学研究科修士課程修了。
現在、作新学院大学総合政策学部教授。
中東経済・経営、イスラーム社会思想専攻。
訳書にアリー・シャリーアティー『イスラーム再構築の思想』ほか。
登録情報
- 出版社 : 新評論 (2008/8/10)
- 発売日 : 2008/8/10
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 258ページ
- ISBN-10 : 4794807805
- ISBN-13 : 978-4794807809
- Amazon 売れ筋ランキング: - 603,143位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 15位その他の国々の経済事情関連書籍
- - 38,793位投資・金融・会社経営 (本)
- - 76,314位社会・政治 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
星5つ中3.4つ
5つのうち3.4つ
全体的な星の数と星別のパーセンテージの内訳を計算するにあたり、単純平均は使用されていません。当システムでは、レビューがどの程度新しいか、レビュー担当者がAmazonで購入したかどうかなど、特定の要素をより重視しています。 詳細はこちら
5グローバルレーティング
虚偽のレビューは一切容認しません
私たちの目標は、すべてのレビューを信頼性の高い、有益なものにすることです。だからこそ、私たちはテクノロジーと人間の調査員の両方を活用して、お客様が偽のレビューを見る前にブロックしています。 詳細はこちら
コミュニティガイドラインに違反するAmazonアカウントはブロックされます。また、レビューを購入した出品者をブロックし、そのようなレビューを投稿した当事者に対して法的措置を取ります。 報告方法について学ぶ
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2015年2月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ホメイニ師とレーガン大統領の対立の真相かその後の視点が欲しかったのですが、殆どありませんでした。また論拠が格差社会の是正、資本主義への批判といった政治的に要求される理論の構築に主眼が置かれているのでペーパーとして対価が支払われているのは理解できるのですが、現実の経済に対する視点の欠如と理解の不足にはこの文章に対して支払われるべき価値はほとんど無いと言って良いでしょう。イスラムはこの様に考えているといった調子で書かれているのも極めて誠実さに欠けます。また神学の文章を無意味に引用して読者に対してお経の難解な解釈をさせるように思考停止させる悪い学者のテクニックが満載。政治的に必要な研究なのではあると思うのですが、これは誤解の塊みたいな本です。印象的なのは「ナツメヤシ」の解釈でした。これは実体経済の話ですから著者の言う信用創造のマーケットとは違う、生活者か消費者の視点で十分に語ることができる話です。これを著者は貨幣による市場価格の決定による利子の回避として説明しているのです。これは単に青果市場での物々交換はサバ読みや錯誤、などが発生するから市場原理を使いましょうという話です。利子は現在から未来に於いて確定しない支払いの約束に対するコストの事ですから著者は「利子」が理解できていないのです。私はトラックの運転手の経験があるのですが、市場に持ち込まれる商品はその数量や品質が常に正しいことがあり得ないことを知っています。「サバ読み」という日本語がありますが、魚の仲買人が漁師からサバを買うときにワザと間違えるテクニックの事です。昔の人は殆どそれを使いこなすことができました。この人学者さんなのにそれを知らないのです。ちなみに市場では商品を混ぜたりする機能もあります。これはバイヤーなら常識だと思うのですが、それも知らないようです。もちろん利子が時の概念であると本文には書かれているのですが、本人が余剰リバーと信用貸しリバーを同一のものとして説明しているのです。等級の低いナツメヤシが、売れ残りの時間が経過した新鮮なモノではない可能性についてはまったく説明がされていません。池上彰氏の言説に近く信用のおけない売文家と言えると思います。
2014年8月23日に日本でレビュー済み
イスラーム経済を本質的に学べる良書。
イスラーム・インフォーマルセクターがもたらす贈与と交換の経済について書かれている。
現代の交換一元化社会を著者は合理化を追求した故に生まれた「非合理」という秀逸な言葉で表現している。
イスラーム経済に少しでも興味がある人間は、必読すべき一冊である。
イスラーム・インフォーマルセクターがもたらす贈与と交換の経済について書かれている。
現代の交換一元化社会を著者は合理化を追求した故に生まれた「非合理」という秀逸な言葉で表現している。
イスラーム経済に少しでも興味がある人間は、必読すべき一冊である。
2013年1月22日に日本でレビュー済み
金融関係者による技術的なイスラーム金融のノウハウ本とは一線を画している。そもそもイスラームの原理はどのようなものか(等位性、差異性、関係性)。。。という根本部分が説明されており、なぜ利子が許されないのか、実体を伴わない貨幣同士の交換がいけないのかなどイスラームの経済に対する考え方や、その結果どのような商品が生まれたかが分かる。
ただし後半になると新自由主義に基づく現代社会を批判したい心情が全面に出てきて、イスラーム金融は現代の欧米中心の経済制度を批判するための道具に過ぎなくなる。「唯我的な欧米型の個人」に対して「仏教とイスラームは似ている」と述べるくだりや、「新自由主義」批判にはもう少し肉付けが必要に感じた。
政教分離によって前近代的な社会から抜け出した欧州で科学や産業が発展し、それが世界を席巻して今日のグローバル経済が生まれた。20世紀後半のオイルダラーの蓄積や東南アジアのイスラームの中産階級勃興もグローバル資本主義の所産である。そこから生まれたイスラーム金融は、日本で協同組織の生協が株式会社の流通業と共存するように、現代資本主義を否定するより共存する存在のように見える。だからこそ欧米の金融機関は発展著しいイスラーム金融を押さえ込むのではなく、そこに進出し、発展させ、そこから利潤を得ようとしているし、イスラーム金融側もグローバル金融を否定するのではなく、現実と倫理の折り合いのための真摯な努力をしているのではないか。
あるいは、「イスラームに学ぼう」「互助と互恵関係に結ばれていた昔の社会を見直そう」「欧米一辺倒はやめよう」「人間同士の直接的なふれあいを取り戻そう」こそが筆者のメッセージかもしれない。だとしたら、まずそこから書き始め、題名も変えた方がよかったように思う。
ただし後半になると新自由主義に基づく現代社会を批判したい心情が全面に出てきて、イスラーム金融は現代の欧米中心の経済制度を批判するための道具に過ぎなくなる。「唯我的な欧米型の個人」に対して「仏教とイスラームは似ている」と述べるくだりや、「新自由主義」批判にはもう少し肉付けが必要に感じた。
政教分離によって前近代的な社会から抜け出した欧州で科学や産業が発展し、それが世界を席巻して今日のグローバル経済が生まれた。20世紀後半のオイルダラーの蓄積や東南アジアのイスラームの中産階級勃興もグローバル資本主義の所産である。そこから生まれたイスラーム金融は、日本で協同組織の生協が株式会社の流通業と共存するように、現代資本主義を否定するより共存する存在のように見える。だからこそ欧米の金融機関は発展著しいイスラーム金融を押さえ込むのではなく、そこに進出し、発展させ、そこから利潤を得ようとしているし、イスラーム金融側もグローバル金融を否定するのではなく、現実と倫理の折り合いのための真摯な努力をしているのではないか。
あるいは、「イスラームに学ぼう」「互助と互恵関係に結ばれていた昔の社会を見直そう」「欧米一辺倒はやめよう」「人間同士の直接的なふれあいを取り戻そう」こそが筆者のメッセージかもしれない。だとしたら、まずそこから書き始め、題名も変えた方がよかったように思う。