「カルチュラル・タイフーン」という学術イベントが毎年行われている。本書は2007年に名古屋で行われた大会の記録となっている。
レヴュワー自身はカルチュラル・スタディーズという名付けにはどうも馴染めないのだが、少なくとも、文化を研究することが権力関係や経済過程から切り離せなくなり、そうした複雑な営みのなかに人々のアイデンティティの葛藤が刻み込まれているとする認識には同意できる。意味を求める抗いは、いつもベタな生活の抗いでもある。
だから、名古屋という地で文化研究をやろうというときに、「トヨタ」のなかで、あるいは「トヨタ」とともに、さらには「トヨタ」によって日々の糧を稼ぎ出す人々の姿にアプローチしようとする企画は面白い。実際本書を読んで、名古屋という都市のイメージがふくらんだように思う。
ただし、やや労働で立ち止まってしまった感じは否めない。もう少し文化的なテクストの分析に踏み込んでもらえれば、さらに興味は広がっただろう。
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