「スーパーマン」誕生から70年以上に渡るアメリカン・ヒーロー・コミックスの歴史を
DCコミックス等で活躍する現役ライター、グラント・モリソン氏が自身の体験を交えて時に冷静に、時に大げさに綴る一冊。
スーパーマン・バットマン・ワンダーウーマンといった”元祖”スーパーヒーローコミックス第一話の分析、
コミックス・コードの影響、同年代の同業者から見たアラン・ムーアやフランク・ミラーといった巨匠の登場の衝撃等、
日本語書籍ではなかなか得られない貴重な情報を網羅。
個人的にはジャック・カービィのただならぬ才能・実績に紙面を多く費やし、語られていることが嬉しい。
ただ中盤からはそういった『アメコミ史』的な内容は鳴りを潜め、著者の自伝史、自著の創作秘話といったエピソードの比重が大きくなり、
真っ当な『アメコミ史』と並んで著者のやや変態的な奇行記という側面も顔を出す。
「『JLA』は各ヒーローを神話の登場人物になぞらえて書いた」というナルホド！とヒザを叩くお話や
「『ドゥーム・パトロール』は幻覚剤をやりながら書いてた」というああやっぱりそうでしたかと妙に納得してしまうお話や
「新作に悩んでいた時期にコミコンで『完璧な』スーパーマンのコスプレイヤーに出会い、これは運命だと感じた」という
モリソンあなた疲れてるのよというお話の数々は非常に面白いがためにはならない。…個人的には大歓迎でしたが。
著者とは趣味が合わないところがあったり、ツッコみたくなる所もなくはないが
それを補って余りある情報量と面白エピソードをこれでもかと堪能できる。
読後は『オールスタースーパーマン』や『ドゥーム・パトロール』、『アニマルマン』等の著者の代表作にも触れたくなる憎い一冊です。
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