あえていえば、血液型性格判断のような根拠の薄いことを科学的に語っているだけのトンデモ本だと、私は思いました。読者によっては見えるものもあるのでしょうが、私には見えませんでした。
例えば三島由紀夫に関する部分ですが、非常に都合の良い部分だけ取り上げているではありませんか。また、あれだけの文学少年が、高級官僚の家に生まれたということもあって、卒業後のレールが敷かれているに等しい帝大に入学し、卒業後は大蔵官僚になるわけですが、それを今の感覚で「順風満帆」と表現する筆者は、きっとある程度以上の家柄や家業に生まれた者の閉塞感と苦悩を理解していない。あの時の平岡少年(後の三島由紀夫)には、早稲田へ行って留年しながら演劇やら文筆活動なんてできる自由がなかったのです。
三島を小説家としてのみ決めつけている著者の視点にも問題があります。三島は小説家でもありましたが、名作戯曲をいくつも残した、劇作家でもありました。今でも繰り返し上演され映画化さえされた『鹿鳴館』や死を覚悟していた時期と重なる部分もあったであろう最後の歌舞伎用戯曲『椿説弓張月』といった、単なる思春期の性を超越した人間の運命をどのように表現し、また『弓張月』では演出まで深く関わった最晩年の力作であるのに、まったく触れて解き明かそうとしない62歳の著者が書く大学生のレポート的なエッセー集は、あまり誉められたものではないと思います。
それより何より、人間なんだからハッピーにノーマルに生きるのが本来の姿なんだと言わんばかりの著者の「前提」のほうこそ、見方によれば、かなり病んでいると思うのは私だけだろうか。
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鬱力 単行本 – 2003/6/26
柏瀬 宏隆
(著)
〈鬱の力〉は才能を目覚めさせる発電機だった。黒澤明、J・レノン、宮澤賢治、三島由紀夫、ゴッホ、モーツァルトなど天才たちの〈鬱〉と創作力を検証しポジティブな生きかたを探るニュー病跡学。
- 本の長さ248ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社インターナショナル
- 発売日2003/6/26
- ISBN-104797670797
- ISBN-13978-4797670790
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
「鬱の力」は才能を目覚めさせる発電機だった。黒沢明、J・レノン、宮沢賢治、三島由紀夫、ゴッホ、モーツァルトなど天才たちの「鬱」と創作力を検証し、ポジティブな生き方を探るニュー病跡学。
登録情報
- 出版社 : 集英社インターナショナル (2003/6/26)
- 発売日 : 2003/6/26
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 248ページ
- ISBN-10 : 4797670797
- ISBN-13 : 978-4797670790
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,451,750位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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