近代社会の根幹をなすのはイエス・キリストの哲学、福音書に記されたその普遍的な思想である。という視点から、キリスト教の歴史的展開を大局的に振り返りつつ、その近代における影響力の拡がり、特に、不可視化されたがしかし一向に重要な部分のそれについて論考している本である。このところ著書が立て続けに翻訳出版されているフレデリック・ルノワールの2007年作品。
既存の社会規範を否定しながら人々の心を解放し、自由で自律した個人の誕生を導いたキリスト。虐げられた人々の側に立ち誰もが神に愛され認められことの真理を語ったキリスト。その哲学は、キリスト教の制度化の権威化のなかでやがて埋没していった。ときに修道会の運動が福音書の理想に立ち返ろうとして改革を試みたが、しかし他方では異端審問や植民地での強制改宗のようなキリストの教えからはかけ離れた暴力と収奪の実践が神の名のもとに行われたりもした。こうして宗教的権威の中で埋もれていったキリストの哲学を歴史の中に再生させたのが、ルネサンス期のユマニストたちであった。彼らは人間の基本的自由を抑圧してきた権威に対し、人々の精神的な解放を要求した。人間の自由や平等や社会正義を尊ぶ精神は、キリスト教の核心に共感したユマニストたちによって近代にもたらされたのである。「後に「近代主体」とも呼ばれる、自由で自律した人間の誕生は、この運動なくしてはあり得なかった」。やがて、進歩主義の信念と人間理性への信頼が、こうした運動を基礎づけていたキリスト教への信心を払しょくしていくが、その二段階目の近代化の背後にもやはりキリスト教の影響は根深くあった…。
といったように、近代社会の形成においてキリストの哲学が果たした(あるいはいまなお果たしつつある)決定的な役割を鮮明に論じた作品となっている。狭義のキリスト教(教会)の後退が進んでいるフランスにおける読者の目の鱗がターゲットであることは明らかだが、キリスト教≒イエスの言動の世界思想史的な意義と力の大きさを学びたい向きにも非常に刺激的な論述に満ちている。なぜ現代の日本人が福音書の記述に魅了されることが少なくないのか、その答えの片りんのようなものが書かれているように思われるのである。
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哲学者キリスト 単行本 – 2012/7/1
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イエスの革命的な哲学を、その後のキリスト教会が信仰の名において覆い隠す。しかしルネサンスのユマニストたちが掲げた人間主義こそは、その教えの真骨頂であり、現代の民主主義と人権思想の土台となるものだった。人間としてのイエスと、宗教の枠をはるかに超えた叡知を論じたフランスのベストセラー。
- 本の長さ356ページ
- 言語日本語
- 出版社トランスビュー
- 発売日2012/7/1
- 寸法13.8 x 3.5 x 19.5 cm
- ISBN-104798701254
- ISBN-13978-4798701257
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商品の説明
著者について
1962年生まれ。スイスのフリブール大学で哲学を専攻。雑誌編集者、社会科学高等研究院(EHESS)客員研究員などを経て、2004年に『ル・モンド』の宗教専門誌『ル・モンド・デ・ルリジオン(宗教の世界)』編集長に就任。2006年、『精神性小叢書』(プロン社)を創刊。宗教学、哲学、社会学から小説、脚本まで多彩な分野で活躍し、フランスの思想界、読書界で最も注目される著者の一人。数十冊の著書は25カ国で翻訳され、日本語訳に『仏教と西洋の出会い』『人類の宗教の歴史 9大潮流の誕生・本質・将来』(トランスビュー)、『ソクラテス・イエス・ブッダ』『生きかたに迷った人への20章』(柏書房)『イエスはいかにして神となったか』(春秋社)など。vv
登録情報
- 出版社 : トランスビュー (2012/7/1)
- 発売日 : 2012/7/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 356ページ
- ISBN-10 : 4798701254
- ISBN-13 : 978-4798701257
- 寸法 : 13.8 x 3.5 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 592,916位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2012年11月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「人間の尊厳、個人の自由、万人の平等、非暴力などの諸原理がキリストの教えである普遍的倫理から生まれた」を読めば、人間社会がいかに多くのものをキリストに負っているかを実感する。人類の歴史に途方もない天才「哲学者」を持ったことは大いなる幸であった。その天才の哲学がどのような曲折をへて現代社会の礎となっているかを明らかにした本である。宗教に無関心な人にも勧めたい。
本筋とははなれるが、引用されている「宗教は人間の本質を神に投影しているにすぎない(略)その本質を想像上の至高者のものとしてきた」というフォイエルバッハの説は、腑に落ちる。人間の理解しえない存在としての神まで否定はできないとしても。
本筋とははなれるが、引用されている「宗教は人間の本質を神に投影しているにすぎない(略)その本質を想像上の至高者のものとしてきた」というフォイエルバッハの説は、腑に落ちる。人間の理解しえない存在としての神まで否定はできないとしても。
2017年9月19日に日本でレビュー済み
余計な事かもしれないが、日本語でキリストというと、
ハリストスはメシア→救世主であるから、この場合、キリストというのは
人格は表さない、固有名詞で、もはや神の代理人、もしくは神そのものである。
従ってキリストとした場合はもはや復活されたとされている神の右に座する者であり、人の子と称していた生前のイエスが人間であられた状態では無いので哲学者というのは相応しくない表現であり、
哲学者とするならば、哲学者イエス、なんですのい♫
ハリストスはメシア→救世主であるから、この場合、キリストというのは
人格は表さない、固有名詞で、もはや神の代理人、もしくは神そのものである。
従ってキリストとした場合はもはや復活されたとされている神の右に座する者であり、人の子と称していた生前のイエスが人間であられた状態では無いので哲学者というのは相応しくない表現であり、
哲学者とするならば、哲学者イエス、なんですのい♫