歴史社会学に数理モデルを当てはめる過程をまとめた内容となっています。
文系科目とされる歴史に、(理系科目である)数理を用いてモデルを構築するという視点が面白く、
歴史好き、数学好きなら、どこかしら琴線に触れる内容があるのではないでしょうか。
個人的には、
・数理で用いる数学が、大学1~2年生レベル(微分方程式の初期で習う内容)であること
・数理モデルが実際にどう利用されるのかが学べる内容になっていること
・論述が論文の形式に似ており、学術研究を行う練習になること
から、特にこれから工学・理学で数理を学ぶ学部生・院生に推薦したい内容に感じました。
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国家興亡の方程式 歴史に対する数学的アプローチ 単行本 – 2015/8/27
歴史を自然科学のように研究することはできるだろうか?
本書の著者、ピーター・ターチンは、歴史×数学という新しい枠組みで、この問いへの回答を試みる。
このようなアプローチの重要性を示すことからはじめ(1章 取り組むべき課題・問題を明らかにする)、
数学の簡単な紹介の後(2章地政学)、歴史文献の圧倒的なレビューと精緻なモデル化で理論の検証を行う。
まずは「地政学」である。
国境線や国家の置かれた地形によって国家の興亡を説明できるだろうか?
社会学的な記述を数式に落とし込んで分析した結果、
国家の興亡が繰り返されてきた過去の歴史を再現するには何かが足りないことが示唆された(3章 集合的連帯)。
そこで注目したのが記号的に区分された集団(エトニー)が連帯して行動を起こす力である。
これをもとに、メタエトニー辺境理論という新たな理論を提案する(4章 メタエトニー辺境理論)。
これを実際の歴史と照らし合わせることで、高い説明力を持つ理論であることが確認された(5章 メタエトニー辺境理論の実証検証)。
次に、記号的に区分された集団であるエトニーがいかにして形成されるかを考察するために「民族運動学」を展開する。
これは、ある民族がいかにして帝国に取り込まれるか、あるいは新たな宗教に改宗するかといったことを説明するための理論である。
複数のモデルを作成し、それを実データと対比することで、自分の周囲の人の動向に歩調を揃える「自己触媒モデル」の説明力が高いことが示された(6章 民族運動学)。
そして、人口と国家の動態とを結びつける「人口構造理論」を展開する。
人口をエリートと農民の2階級に分けて考えることで、エリートのふるまいが国家の衰退に対して強い影響をあたえることが明らかとなった(7章 人口構造理論)。
また、この「人口構造理論」から、長期にわたる人口の増減が歴史上普遍的な流れであることが示唆され、
再び実データと対比することによってその傾向を確認した(8章 永年サイクル)。
本書のしめくくりとして、ここまでに築きあげた理論を用いて、フランスとロシアの歴史を紐解いていく。
ここで作り上げた3つの理論が、両国家の歴史をみごとに描くことが示されると同時に、理論の改善すべき点も示唆された(9章 ケーススタディ)。
最後に、本書の全体を振り返るとともに、この新しい研究分野を「動的経済史」と呼ぶことが提案される(10章 結論)。
<目次>
第1章 取り組むべき課題・問題を明らかにする
第2章 地政学
第3章 集合的連帯
第4章 メタエトニー辺境理論
第5章 メタエトニー辺境理論の実証検証
第6章 民族運動学
第7章 人口構造理論
第8章 永年サイクル
第9章 ケーススタディ
第10章 結論
本書の著者、ピーター・ターチンは、歴史×数学という新しい枠組みで、この問いへの回答を試みる。
このようなアプローチの重要性を示すことからはじめ(1章 取り組むべき課題・問題を明らかにする)、
数学の簡単な紹介の後(2章地政学)、歴史文献の圧倒的なレビューと精緻なモデル化で理論の検証を行う。
まずは「地政学」である。
国境線や国家の置かれた地形によって国家の興亡を説明できるだろうか?
社会学的な記述を数式に落とし込んで分析した結果、
国家の興亡が繰り返されてきた過去の歴史を再現するには何かが足りないことが示唆された(3章 集合的連帯)。
そこで注目したのが記号的に区分された集団(エトニー)が連帯して行動を起こす力である。
これをもとに、メタエトニー辺境理論という新たな理論を提案する(4章 メタエトニー辺境理論)。
これを実際の歴史と照らし合わせることで、高い説明力を持つ理論であることが確認された(5章 メタエトニー辺境理論の実証検証)。
次に、記号的に区分された集団であるエトニーがいかにして形成されるかを考察するために「民族運動学」を展開する。
これは、ある民族がいかにして帝国に取り込まれるか、あるいは新たな宗教に改宗するかといったことを説明するための理論である。
複数のモデルを作成し、それを実データと対比することで、自分の周囲の人の動向に歩調を揃える「自己触媒モデル」の説明力が高いことが示された(6章 民族運動学)。
そして、人口と国家の動態とを結びつける「人口構造理論」を展開する。
人口をエリートと農民の2階級に分けて考えることで、エリートのふるまいが国家の衰退に対して強い影響をあたえることが明らかとなった(7章 人口構造理論)。
また、この「人口構造理論」から、長期にわたる人口の増減が歴史上普遍的な流れであることが示唆され、
再び実データと対比することによってその傾向を確認した(8章 永年サイクル)。
本書のしめくくりとして、ここまでに築きあげた理論を用いて、フランスとロシアの歴史を紐解いていく。
ここで作り上げた3つの理論が、両国家の歴史をみごとに描くことが示されると同時に、理論の改善すべき点も示唆された(9章 ケーススタディ)。
最後に、本書の全体を振り返るとともに、この新しい研究分野を「動的経済史」と呼ぶことが提案される(10章 結論)。
<目次>
第1章 取り組むべき課題・問題を明らかにする
第2章 地政学
第3章 集合的連帯
第4章 メタエトニー辺境理論
第5章 メタエトニー辺境理論の実証検証
第6章 民族運動学
第7章 人口構造理論
第8章 永年サイクル
第9章 ケーススタディ
第10章 結論
- 本の長さ375ページ
- 言語日本語
- 出版社ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日2015/8/27
- 寸法15.7 x 3 x 22.3 cm
- ISBN-104799317563
- ISBN-13978-4799317563
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商品の説明
著者について
ピーター・ターチン (Peter Turchin)
コネチカット大学教授(生態学・進化生物学、人類学、数学)
理論生物学者として研究をはじめ、近年はCliodynamicsという歴史動態を数学的にモデル化する学際領域で活動している。特に、社会文化的進化、歴史のマクロ社会学、経済の歴史と計量経済史の交点に興味を持って取り組んでいる。
水原文 (Bun Mizuhara)
技術者として通信キャリアやメーカーに勤務した後、フリーの翻訳者となる。震災を機に埼玉県から宮城県へ転居。訳書に『1びょうでわかる世界の「今」』『ビッグクエスチョンズ 宇宙』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『Cooking for Geeks』(オライリー・ジャパン)など。フランス車(シトロエン)とコントラクトブリッジ(カードゲーム)、お茶(表千家)を愛してやまない。日夜Twitter(@bmizuhara)に出没している。
コネチカット大学教授(生態学・進化生物学、人類学、数学)
理論生物学者として研究をはじめ、近年はCliodynamicsという歴史動態を数学的にモデル化する学際領域で活動している。特に、社会文化的進化、歴史のマクロ社会学、経済の歴史と計量経済史の交点に興味を持って取り組んでいる。
水原文 (Bun Mizuhara)
技術者として通信キャリアやメーカーに勤務した後、フリーの翻訳者となる。震災を機に埼玉県から宮城県へ転居。訳書に『1びょうでわかる世界の「今」』『ビッグクエスチョンズ 宇宙』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『Cooking for Geeks』(オライリー・ジャパン)など。フランス車(シトロエン)とコントラクトブリッジ(カードゲーム)、お茶(表千家)を愛してやまない。日夜Twitter(@bmizuhara)に出没している。
登録情報
- 出版社 : ディスカヴァー・トゥエンティワン (2015/8/27)
- 発売日 : 2015/8/27
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 375ページ
- ISBN-10 : 4799317563
- ISBN-13 : 978-4799317563
- 寸法 : 15.7 x 3 x 22.3 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 665,749位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2015年9月14日に日本でレビュー済み
経済史研究や人口史研究から始まった歴史過程への数理的解析手法の適用の潮流はついにここまで来たか。紀元500年から1900年までに現れては消えていった数々の王朝の領土の消長過程をシミュレーションで再現してしまおうという一見すると無謀で壮大な野心的試み。
コンピューターに計算させるプログラムの核となる中心的な仮説は「メタエトニー辺境理論」。中世イスラムの思想家イヴンハルドゥーンの国家盛衰理論の中に現れる「アサビーヤ」の概念(社会の成員が社会連帯的な行動を行える能力を当該社会がどれだけ有しているか)を導きの糸にして著者ターチン博士は次のような仮説を提唱する。国家の中心地滞と周縁地帯とを区別し、外敵と接するがゆえに厳しい生存競争環境となっている周縁地帯においては、国境の内側と外側双方に集合的連帯の能力を高めた集団を生み出し新たな国家形成が促されるが、中心地帯においてはそうした外敵の脅威が希薄なため集合的連帯能力が弱体化していく結果、しまいには新興国に取って代わられてしまうのではないかと。他にも計算に組み込まれる仮説はありますが、この仮説が一番重要なファクターだと著者は考えているようです。
驚くべきは、シミュレーションの結果です。確かにヨーロッパの国々の分布がかなりよく再現されている!実際にはシミュレーションするたびに大きく違った結果が出てくるそうなので(数学的にはカオスのふるまいらしい)、多数の試行結果の中に現実によく近似したものが含まれていただけとも言えますが、それでもなかなかの一致であり、理論自体の蓋然性の高さも相まって「これは本物かもしれない!」という気持ちになります。必見です。
思うに、1000年以上に渡る国家盛衰の歴史過程が比較的単純で直観的に納得のいく仮説群から導かれることがシミュレーションで確認できるということは非常に感動的ではありますが、しかし、逆に言えば、コンピューターに頼らずとも従来通りの歴史学的・社会科学的洞察でもほとんど事足りることが証明されてしまったというようにも理解できなくはない。とてもではないがにわかには信じがたいような非直観的仮説から現実が再現されるようなことでもない限り、コンピューターは世界を理解したいという人間の知的欲望に本当の意味で革命的な寄与をしたことにはならないのではないかという思いもぬぐえない。
しかし他所ではお目にかかれないすごい内容であることは間違いない。繰り返しますが、必見です。
コンピューターに計算させるプログラムの核となる中心的な仮説は「メタエトニー辺境理論」。中世イスラムの思想家イヴンハルドゥーンの国家盛衰理論の中に現れる「アサビーヤ」の概念(社会の成員が社会連帯的な行動を行える能力を当該社会がどれだけ有しているか)を導きの糸にして著者ターチン博士は次のような仮説を提唱する。国家の中心地滞と周縁地帯とを区別し、外敵と接するがゆえに厳しい生存競争環境となっている周縁地帯においては、国境の内側と外側双方に集合的連帯の能力を高めた集団を生み出し新たな国家形成が促されるが、中心地帯においてはそうした外敵の脅威が希薄なため集合的連帯能力が弱体化していく結果、しまいには新興国に取って代わられてしまうのではないかと。他にも計算に組み込まれる仮説はありますが、この仮説が一番重要なファクターだと著者は考えているようです。
驚くべきは、シミュレーションの結果です。確かにヨーロッパの国々の分布がかなりよく再現されている!実際にはシミュレーションするたびに大きく違った結果が出てくるそうなので(数学的にはカオスのふるまいらしい)、多数の試行結果の中に現実によく近似したものが含まれていただけとも言えますが、それでもなかなかの一致であり、理論自体の蓋然性の高さも相まって「これは本物かもしれない!」という気持ちになります。必見です。
思うに、1000年以上に渡る国家盛衰の歴史過程が比較的単純で直観的に納得のいく仮説群から導かれることがシミュレーションで確認できるということは非常に感動的ではありますが、しかし、逆に言えば、コンピューターに頼らずとも従来通りの歴史学的・社会科学的洞察でもほとんど事足りることが証明されてしまったというようにも理解できなくはない。とてもではないがにわかには信じがたいような非直観的仮説から現実が再現されるようなことでもない限り、コンピューターは世界を理解したいという人間の知的欲望に本当の意味で革命的な寄与をしたことにはならないのではないかという思いもぬぐえない。
しかし他所ではお目にかかれないすごい内容であることは間違いない。繰り返しますが、必見です。