現今においては、天文趣味参入に当たって、決して「最初の一冊」とは言えません。
初版当時(1994年)の時代背景は、ビクセンとタカハシ以外にもミザールも盛んに天体望遠鏡を製造している一方で、天体望遠鏡はまだまだ高級品とされていた時代と思われます。新参の人たちも清水の舞台から飛び降りる覚悟をして双眼鏡や天体望遠鏡を購入したことでしょう。
言い換えると、天文は本書くらいの内容を勉強することなどものともしない、少なくとも食いつく覚悟のある人たちの趣味だったと思われます。
しかし、時代は変わり、安価な中国製光学機器が初版刊行当時の普及品の品質に追いついて(もしくは追い越して)良質の製品が安価に入手できるようになりました。具体例を挙げますと、ビクセン製ポルタ2A80Mfなどは4万円程度(本レビュー執筆時点でAmazonで38536円、ヨドバシカメラで41970円でポイント還元を考慮するとAmazonより安い)で購入できます。今日においてはエントリーモデルとして売られていますが、初版刊行当時においてはハイアマチュア向けとされるスペックの製品です。
このように天体望遠鏡が多くの人に手が届くようになった2020年の令和の時代にあっては、より幅広いユーザーのための本が必要です。本書初版当時の常識からは想像もつかないようなライトなユーザーが、コアなファンたちの前に現れていることでしょう。
そうしたライトな人たち向けガイドは今日たくさんあります。一例としては、浅田英夫『誰でも使える天体望遠鏡』が良書でしょう。同書は初めて望遠鏡を手にする、もしくはこれから買いたいというくらいの人には良いガイド役になります。本書を片手にしばらくは星の世界の美しさを堪能できることでしょう。またカラー写真を使った写真集さながらの星空ガイドなども多数刊行されており、星空愛好家を増やしたいという意味では、誠に喜ばしい時代になったというべきでありましょう。
しかし、木星、土星、アンドロメダ星雲、プレヤデス星団、プレセペ星団などの主立った天体を見た後には、もう少しいろんな星や天文現象を見たくなることでしょう。そのときによいガイド役となってくれるのが『初歩の天体観測』です。
本書でも機種選定や屈折式と反射式の違いなど、初歩に部類されていることも網羅はされているのですが、それ以上に重要なことは第2部以降にあります。恒星時の求め方や星図の見方など、近年の入門者向けの本では掲載を見送られたり「上級」とされることが詳細に解説されています。
第3部の内容なども、天文現象の見どころが写真が中心に解説される入門書が溢れる昨今において図解による解説は硬派ですが、そのぶんライトなスターウォッチングから一歩進んで、どの資料を見れば見ごろがわかるか、何をすれば観測したことになるのかが詳述されています。
第4部は天体の紹介で主要な情報が略号や赤道座標で表されているので、お世辞にもお気軽スターウォッチングをしたい人向けの内容とは言えません。しかし、天文学的な意味での観測に当たっては、ぜひこれらの読み方は身につけておいてほしいものです。読めるようになると、各種天文情報や天文雑誌なども写真を眺めて楽しむだけではない、天体観測という趣味の奥深さを楽しむことができるでしょう。
誤解のないように書いておきますが、これはお気軽スターウォッチングを程度の低い趣味と言っているのではありません。私自身、どちらかというと天文現象を追求するよりは星の美しさを愛でたい立場ですし、星の美しさにつられて多くの新参がやってくるのは望ましいことです(新参をバッシングして追い出した趣味の世界を私自身見たことがありますが、それは本当に惨めなものです)。それが企業にとってはビジネスチャンスを生みますし、観測活動に転じてくる人たちも出てくることでしょう。
その観測活動に興味を持ち始めた時、ぜひ手にしてほしい本が本書なのです。スターウォッチングで星座早見盤や天体望遠鏡に慣れ、いくつかの主要な天体は把握しているくらいになったとき、本書の説明はだいぶ飲み込みやすくなっているはずです。もちろん、そのままスターウォッチングをお気軽に楽しみたい人にも「奥の手」的な意味では有用な本ですし、この程度の内容は気合で飲み込む!というガッツのある人には文句なしにお勧めの本です。
なお、本書は別の点でお薦めできることがあります。それは紙面で白黒なので、夜に屋外へ行った時にも赤い光で照らした時に見やすいことです。コストの問題でそうなっているのだと思うのですが、実際に星を観ているときは、照明用に赤い光を使うことが多いので、白黒の紙面だと助かります。
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初歩の天体観測 新訂 単行本 – 1994/9/1
平沢 康男
(著)
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購入オプションとあわせ買い
- 本の長さ215ページ
- 言語日本語
- 出版社地人書館
- 発売日1994/9/1
- ISBN-104805204729
- ISBN-13978-4805204726
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内容(「MARC」データベースより)
星空に興味を持ち始めた人向けの天体観測の本格的入門書。つまり、初期段階で留まらず、自分の器械の能力を最大限まで生かして専門家に負けない活躍をするアマチュア天文家を念頭においた入門書である。
登録情報
- 出版社 : 地人書館 (1994/9/1)
- 発売日 : 1994/9/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 215ページ
- ISBN-10 : 4805204729
- ISBN-13 : 978-4805204726
- Amazon 売れ筋ランキング: - 654,331位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,082位宇宙学・天文学(一般)関連書籍
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2018年1月14日に日本でレビュー済み
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初歩の本と言ううたい文句ですがまだ私には難しく感じました、ただこの一冊で範囲を広く書かれているのでこの本を読んで行けばそこそこの色んな事がらが解るのでは無いでしょうか。不明な事柄は別にネット検索するしかしょうがないかな。
2012年12月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
タイトルの通り天体観測をマスターする為の足がかりが
書かれた本です。
天体望遠鏡の構造から始まって、星図の読み方や観測の知識の
初歩的な事が広く浅く書かれています。
最初は読んでも意味が分からない部分が多いですが、
星座早見盤などとにらめっこして根気よく星を観察してゆく内に
この本に書いてある知識の意味がパズルのピースのように
繋がって行きます。
初級と中級の間ぐらいの内容の本です。
書かれた本です。
天体望遠鏡の構造から始まって、星図の読み方や観測の知識の
初歩的な事が広く浅く書かれています。
最初は読んでも意味が分からない部分が多いですが、
星座早見盤などとにらめっこして根気よく星を観察してゆく内に
この本に書いてある知識の意味がパズルのピースのように
繋がって行きます。
初級と中級の間ぐらいの内容の本です。
2015年4月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
自分天文好きでいろんな本を買ったけれどこの本が一番わかりやすく自宅に望遠鏡がある人にとっては最高の一冊だと思います
ほんといろいろ勉強になりました。天体観測が趣味ですがこの本を読んでもっと楽しくなりました
ほんといろいろ勉強になりました。天体観測が趣味ですがこの本を読んでもっと楽しくなりました
2009年10月21日に日本でレビュー済み
1979年発行の本書の前身である「図解 初歩の天体観測」は、初めて天体望遠鏡を手にする人を対象に書かれたもので、天体望遠鏡の取り扱い方をわかりやすく解説し、また、天体観測の面白さを知って趣味として長く楽しめるように具体的な観測方法を含めてわかりやすく解説される優れた本でした。
本書は「図解〜」と目次の第1〜4部の題名は同じですが、内容は項目の増と最新データの収録など、大幅にアップデートされています。「図解〜」同様に初めて天体望遠鏡を手にする人へ最初に薦めたい本です。
本書は「図解〜」と目次の第1〜4部の題名は同じですが、内容は項目の増と最新データの収録など、大幅にアップデートされています。「図解〜」同様に初めて天体望遠鏡を手にする人へ最初に薦めたい本です。
2018年5月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
分かりやすく初歩的な内容の確認しました。まだ全部見ていないです