美術館巡りをしようと思い立った20代前半、最初に行きたいと思ったのが、山種美術館でした。
勿論、速水御舟「炎舞」が見たかったからです。
なぜか、記憶に残っているのは、名古屋市美術館の企画展で見た際のこと、そして、豊田市美術館の速水御舟展。
この書には、速水御舟が語りかけてくるような文章や語録が編まれていて、髄にあたる内容となっています。
「無駄を省くと真実が残る。」
「絵画修業の道程に於て私が一番恐れることは型が出来ると云ふことである。何故なれば型が出来たという事は
一種の行き詰まりを意味するからである。藝術は常により深く進展して行かねばならない。
だからその中道にて出来た型はどんどん破壊して行かねばならない。」
時代思潮にあたるのか、安田靫彦論では「眼界の狭い私が安田さんのやうな方について論じたところで、
どうせ一面的な見かたしか出来ないだらうと思ふ。」と書出しています。
こういう配慮が、私には非常に新鮮で、また自分自身への戒めともなり、
それが旧弊な殻を破って新しい世界へ入っていくことが出来る心構えとなりました。
私自身が画廊に勤務した時期は、日本の画廊が古美術から始まっていたこともあり、
為来りのようなものの意味が分からないときで、息苦しさだけを感じて辞去する事となりましたが、
今振り返ると、社会構造や複雑な人間関係で必要な配慮や嗜みであったこと、それも時代と共に変遷があります。
「品がない」「elegantでないっていうか」ということで厳しく親に統制された結婚前を経て、氾濫する自由を潜った今は、
節度が自由と豊かさを保障してくれることを体感しました。
この御舟語録は、窮屈さよりも、洗練を感じるものばかりとなっています。
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絵画の真生命 単行本 – 1996/8/1
- 本の長さ321ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論美術出版
- 発売日1996/8/1
- ISBN-104805503130
- ISBN-13978-4805503133
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
僅か四十歳の生涯にも関らず、数多くの名作によって近代日本美術史上に燦然と輝いている速水御舟。緊張感に満ちた画業一筋の折り折りに発表された60余篇の文章・語録も優れた芸術論・絵画論。
登録情報
- 出版社 : 中央公論美術出版 (1996/8/1)
- 発売日 : 1996/8/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 321ページ
- ISBN-10 : 4805503130
- ISBN-13 : 978-4805503133
- Amazon 売れ筋ランキング: - 345,387位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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2016年1月3日に日本でレビュー済み
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2015年4月19日に日本でレビュー済み
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絵を描くときの基本の心構えを簡潔に述べてくれる。自然を描く。感じた心を大事に。御舟の思いが正直に書かれている。願ってもない本。このたび入手出来て、本当にうれしい。
2013年1月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
その圧倒的な美と画力の源泉...彼が絵画について、そして真実や美に対して
どのように捉え、考え、実践していたのかが記されています。
自己に対して大変厳しく、絶えず実践を通して真の美に迫ろうとする様は、
読んでいて自然と尊敬の想いを抱きます。
画家を目指している人や彼の作品に惹かれる人はもちろん、そうでない人も
読んでいて新鮮な発見や静かな感動を感じることが出来るのではないでしょうか。
どのように捉え、考え、実践していたのかが記されています。
自己に対して大変厳しく、絶えず実践を通して真の美に迫ろうとする様は、
読んでいて自然と尊敬の想いを抱きます。
画家を目指している人や彼の作品に惹かれる人はもちろん、そうでない人も
読んでいて新鮮な発見や静かな感動を感じることが出来るのではないでしょうか。
2013年8月31日に日本でレビュー済み
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昭和初期の日本画を代表する画家は、多くのライバルに恵まれたが、激動の時代の為、ライバルも彼自身も若くして亡くなった。
絵に真摯に取り組む様子が、本人の文章からよみがえる。
下町育ちの軽やかさで、様々な画題に挑んだ姿に感心するが、唯一人物画に傑作を残せなかった点に私の関心は集中している。
絵に真摯に取り組む様子が、本人の文章からよみがえる。
下町育ちの軽やかさで、様々な画題に挑んだ姿に感心するが、唯一人物画に傑作を残せなかった点に私の関心は集中している。
2009年5月3日に日本でレビュー済み
確か小学生の時、美術館で『炎舞』を見た時の、これは本当に絵だろうか、でも写真ではこんなシーンはあり得ないし…夢の中を描ける人がいるんだ!という驚きは今でも忘れない。この本は御舟が日常考えている事を淡々と記していて、人間像がとても解りやすい。作品の技巧から、美術界の長老的な人かと思っていたのは大きな間違いで、40年と言う短い生涯に、絵画の可能性の極限を極めるような作品を遺してくれたのだった。そしてこの本によって、技術以前の、心の姿勢が素晴らしい人だった事が分かった。制作する人の語る芸術論には、はっとすることが多く、絵画の見方が変る。しかも美術界だけの狭い議論ではなく、御舟は普通の日常の中で、常に真摯に「絵画の真生命」という最高峰を目指して歩んだ人なんだという事が解って、生き方を変えなくてはと思わせられた。