この著者も高齢にもかかわらず、微生物の緑藻とかの生態やアメーバのこととかを結構専門的ながら、知らない知見を語るところは該博な知性と教養が伺える。イギリス生まれのアメリカ人の様で、ミルトンの「
失楽園(上)
」、「
失楽園(下)
」に章頭に引用が必ず入るところが面白く思えた。
こと微生物学に限っては、エネルギッシュな著者による本の方が読んでいて清々しい。この本よりはデイビッド・モントゴメリーの「
土の文明史
」やその妻アン・ビグレーとの共著「
土と内臓 (微生物がつくる世界)
」とか、アランナ・コリン「
あなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた
」、マーティン・J・ブレイザー「
失われてゆく、我々の内なる細菌
」、フランク・ライアン「
破壊する創造者――ウイルスがヒトを進化させた
」とかの若手の書き手の方が良い。あと、この本の冒頭で戸惑うなら、参考に日本植物病理学会「
植物たちの戦争 病原体との5億年サバイバルレース
」もおすすめ。
この本を読んで、高齢の方でも今まで学んだことに対する新しい知見をすぐに取り入れるのに、流石に抵抗感があることが如実に分かる。特に翻訳者のあとがきがとにかくいけない。翻訳の中にも直訳している(直喩を意訳するとか)ことへの読みやすくする努力があまり見受けられない。緑内障を患って手術後に翻訳を開始したらしい。それは流石に出版社も考えてやれ言いたい。訳者も下手したら失明になるし、気持ちも後ろ向きになるのは、仕方がないし同情も出来るが、翻訳者もそれほど大変なら、若手に翻訳をしっかりやらせて、監修者の立場の方がよかった気もする。この本で頻繁に引用されていた、ミルトンも同様に失明してから叙事詩「
失楽園(上)
」、「
失楽園(下)
」を着手するのだから、若手に研究を引き継ぐ「良い機会」だったかとも思える。
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生物界をつくった微生物 単行本 – 2015/11/17
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DNAの大部分はウィルス由来。
植物の葉緑体はバクテリア。
生きものは、微生物でできている!
何世紀もの間、我々人類は自分が目にした動物や植物をもとにして、生物の世界を描いてきた。顕微鏡が微生物の隠れた世界を垣間見せてくれたが、微生物世界の真の大きさとその重要性に光が当てられたのは、ここ10年ばかりのことである。
人体、樹木、海水や海底の泥、土壌や湖沼や河川、大気などのすべてが、微生物に満ちあふれている。しかも、その活動は地球の歴史とともに、生物圏を形作り、維持するのに必要不可欠なものなのだ。微生物は、我々自身にとっても必須の存在であり、食べ物を消化するという点で膨大な数の微生物に頼っているのだ。
著者のニコラス・マネーは、地球上の生物に対する考え方を、ひっくり返さなければならないと説く。葉緑体からミトコンドリアまで、生物界は微生物の集合体であり、動物や植物は、微生物が支配する生物界のほんの一部にすぎないのだ。
著者は単細胞の原核生物や藻類、菌類、バクテリア、古細菌、ウイルスなど、その際立った働きを紹介しながら、我々を驚くべき生物の世界へ導いてくれる。また、繊細で美しい植物プランクトンから、空気中の菌の胞子や土の中にいる空中窒素固定細菌、海底の黒い噴出孔にくらす極限環境微生物の古細菌に至るまで、地球上のあらゆる場所に微生物が満ちあふれていることも教えてくれる。
肉眼では見えない小さな生物の大きな世界へ想像の翼をひろげよう。
植物の葉緑体はバクテリア。
生きものは、微生物でできている!
何世紀もの間、我々人類は自分が目にした動物や植物をもとにして、生物の世界を描いてきた。顕微鏡が微生物の隠れた世界を垣間見せてくれたが、微生物世界の真の大きさとその重要性に光が当てられたのは、ここ10年ばかりのことである。
人体、樹木、海水や海底の泥、土壌や湖沼や河川、大気などのすべてが、微生物に満ちあふれている。しかも、その活動は地球の歴史とともに、生物圏を形作り、維持するのに必要不可欠なものなのだ。微生物は、我々自身にとっても必須の存在であり、食べ物を消化するという点で膨大な数の微生物に頼っているのだ。
著者のニコラス・マネーは、地球上の生物に対する考え方を、ひっくり返さなければならないと説く。葉緑体からミトコンドリアまで、生物界は微生物の集合体であり、動物や植物は、微生物が支配する生物界のほんの一部にすぎないのだ。
著者は単細胞の原核生物や藻類、菌類、バクテリア、古細菌、ウイルスなど、その際立った働きを紹介しながら、我々を驚くべき生物の世界へ導いてくれる。また、繊細で美しい植物プランクトンから、空気中の菌の胞子や土の中にいる空中窒素固定細菌、海底の黒い噴出孔にくらす極限環境微生物の古細菌に至るまで、地球上のあらゆる場所に微生物が満ちあふれていることも教えてくれる。
肉眼では見えない小さな生物の大きな世界へ想像の翼をひろげよう。
- 本の長さ252ページ
- 言語日本語
- 出版社築地書館
- 発売日2015/11/17
- ISBN-104806715034
- ISBN-13978-4806715030
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商品の説明
著者について
ニコラス・P・マネー(Nicholas P. Money)イギリス生まれ、エクセター大学で菌類学を学ぶ。アメリカ合衆国オハイオ州オックスフォードにあるマイアミ大学で、植物学の学部長を務める。70報を超える菌類学に関する研究論文を書き、『ふしぎな生きものカビ・キノコ』(築地書館、2007年)『チョコレートを滅ぼしたカビ・キノコ』(築地書館、2008年)などの菌学の教養書を執筆。彼の研究は『ネイチャー』誌上で「素晴らしい科学的・文化的な探求」と称賛された。
小川 真(おがわ・まこと)1937年京都府生まれ。京都大学農学部卒業。同博士課程修了。農学博士。森林総合研究所土壌微生物研究室長、環境総合テクノス生物環境研究所所長を経て、大阪工業大学工学部環境工学科客員教授。日本林学賞、ユフロ(国際林業研究機関連合)学術賞、日経地球環境技術賞、愛・地球賞(愛知万博)、日本菌学会教育文化賞など、数々の賞を受賞。著書に『マツタケの生物学』『マツタケの話』『きのこの自然誌』『炭と菌根でよみがえる松』『森とカビ・キノコ』『菌と世界の森林再生』(築地書館)、『菌を通して森を見る』(創文)、『作物と土をつなぐ共生微生物』(農山漁村文化協会)、『キノコの教え』(岩波書店)、訳書に『ふしぎな生きものカビ・キノコ』『チョコレートを滅ぼしたカビ・キノコの話』(築地書館)、『キノコ・カビの研究史』(京都大学学術出版会)など多数。
小川 真(おがわ・まこと)1937年京都府生まれ。京都大学農学部卒業。同博士課程修了。農学博士。森林総合研究所土壌微生物研究室長、環境総合テクノス生物環境研究所所長を経て、大阪工業大学工学部環境工学科客員教授。日本林学賞、ユフロ(国際林業研究機関連合)学術賞、日経地球環境技術賞、愛・地球賞(愛知万博)、日本菌学会教育文化賞など、数々の賞を受賞。著書に『マツタケの生物学』『マツタケの話』『きのこの自然誌』『炭と菌根でよみがえる松』『森とカビ・キノコ』『菌と世界の森林再生』(築地書館)、『菌を通して森を見る』(創文)、『作物と土をつなぐ共生微生物』(農山漁村文化協会)、『キノコの教え』(岩波書店)、訳書に『ふしぎな生きものカビ・キノコ』『チョコレートを滅ぼしたカビ・キノコの話』(築地書館)、『キノコ・カビの研究史』(京都大学学術出版会)など多数。
登録情報
- 出版社 : 築地書館 (2015/11/17)
- 発売日 : 2015/11/17
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 252ページ
- ISBN-10 : 4806715034
- ISBN-13 : 978-4806715030
- Amazon 売れ筋ランキング: - 173,295位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,626位生物・バイオテクノロジー (本)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2020年4月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
核兵器と原子力発電を開発し作り上げたことで代表される科学技術及び工業と、焼き畑農業に代表される大地の利用・活用について、人間の利己的なふるまいや、政治体制や政治家の己のかねだけが主な生きる目的になり下がってしまった結果である状況を脱する視点を提供している。人の利益とは何なのかについて、微生物の生存を追求した研鑽の結果をもって批判を示している。要点は次の言葉につきる。第8章に引用するトーマス・カーティス ニューキャッスル大学環境工学教授の言葉である。「もし、最後のシロナガスクジラが最後のパンダに続いて息絶えて死んだら、それはおそろしいことだが、それが地球の終わりではない。しかし、もし我々がたまたま最後に残った二種類のアンモニア分解菌を汚染で消してしまったら、問題は別だ。それは今起こっていることなのに、誰も知ろうともしない。」(2006年) 表層に囚われず、より根源的な本質を追求する姿勢が、啓蒙になっている。
Savage 無頼 より
Savage 無頼 より
2024年1月27日に日本でレビュー済み
生物学、科学、厳密性が問われる。
各章の書き出しは具体的な記述ではなく、
情景やイメージの表現から入る。
書き出しが詩的表現から入り、具体的な例に導いていく。
一見、関係ない題材から問題の核心に迫っていく。
動物や植物はあくまでも、
生物界を構築する上でほんの一部分であり、
微生物こそが生物界を構築する主役であると著者は説く。
厳密さが求められる科学の世界とは裏腹に、
著者の語り口はまるで、
詩を読んでいくかの如く軽快な語り口で読者をいざなうも、
最終的には広くそして、深く生物学の大きな世界へいざなってくれる。
例えば、
本書の序章は以下の文から始まる。
《さて、今回は「動物や植物は生物全体の中で最も小さなグループだ」という、
ちょっと風変わりな見方で話を進めてみよう。
この一見突飛な考え方をわかりやすくするには、
たとえ話が役に立つかもしれない。それは亡くなった家主がつけていたカツラのことなのだ。》P1
「動物や植物は生物全体の中で最も小さなグループだ」という主張は分かるのだが、
たとえ話が「亡くなった家主がつけていたカツラ」のことだと言われても、
それが何につながっているのだろうか?見当もつかない。
その後、以下のように文章は展開していく。
《カツラだけからランディーのことをわかろうとするのは馬鹿げている。
その通期のよい鳥の巣のようなカツラをいくら調べても、誰も彼が先の大戦の英雄で、
裸のパラグライダー乗りとして有名だったことなどわかりもしない。
同じような見当違いのとらえ方が、現代生物学の弱点にもなっているのだ。》P1
「家主のカツラ」の例えが一転して、いつの間にか現代生物学の弱点という壮大なテーマに発展している。
人類や植物はあくまでも進化の上では後発のグループ群であって、
著者が言う所の「部屋の中のアメーバ」が生物学における本来の主役にも関わらず、
忘れられているか、ほとんど無視されている事を著者は嘆く。
軽妙な語り口も本書の魅力の一つだが、
やはり科学書である以上、科学的厳密性、
生物界についての深い洞察についても触れずにはいられない。
例えば、「クリプトモナス」というのは、入れ子人形の如く、
多くの生物が融合してできた複雑な構造の生物の例として取り上げられているが、
それだけではない更に秘密の部分を持っていると著者は述べている。
《しかし、クリプトモナスという人形には、まだ多くの中身がある。
葉緑隊体はミトコンドリア同様、否定の余地がない細菌起源で、真ん中に細菌の染色体を持っている。
これがゲノムⅢである。
植物細胞はどれも同じ光合成のための細菌小器官を持っているのだから、
この藻類と同じ三つのゲノム複合体を持っていることになる。
クリフトモスにはもう一つのゲノム、ゲノムⅣがあって、
それは緑葉体の周りを包んでいる複層幕の間にはさまれている。
ゲノムⅣはそれ自身の膜の中におさまっており、
ヌクレオモルフ(訳注:二次共生起源の色素体で共生したものの核が残存した構造)と呼ばれ、
五〇〇ほどの遺伝子をコードしている三つの染色体を小型化した核である。》P23
微生物の世界はかくも複雑で、かつその世界観は大きく、そしてまた深い。
その厳密さ、複雑さゆえに、最初のハードルを高く感じがちだが、
本著はその入り口のハードルを軽妙な語り口で下げて、
徐々にその深い世界への橋渡しをしてくれる。
科学的、厳密性と、詩的、軽妙な筆致が見事に融合した傑作だと思う。
各章の書き出しは具体的な記述ではなく、
情景やイメージの表現から入る。
書き出しが詩的表現から入り、具体的な例に導いていく。
一見、関係ない題材から問題の核心に迫っていく。
動物や植物はあくまでも、
生物界を構築する上でほんの一部分であり、
微生物こそが生物界を構築する主役であると著者は説く。
厳密さが求められる科学の世界とは裏腹に、
著者の語り口はまるで、
詩を読んでいくかの如く軽快な語り口で読者をいざなうも、
最終的には広くそして、深く生物学の大きな世界へいざなってくれる。
例えば、
本書の序章は以下の文から始まる。
《さて、今回は「動物や植物は生物全体の中で最も小さなグループだ」という、
ちょっと風変わりな見方で話を進めてみよう。
この一見突飛な考え方をわかりやすくするには、
たとえ話が役に立つかもしれない。それは亡くなった家主がつけていたカツラのことなのだ。》P1
「動物や植物は生物全体の中で最も小さなグループだ」という主張は分かるのだが、
たとえ話が「亡くなった家主がつけていたカツラ」のことだと言われても、
それが何につながっているのだろうか?見当もつかない。
その後、以下のように文章は展開していく。
《カツラだけからランディーのことをわかろうとするのは馬鹿げている。
その通期のよい鳥の巣のようなカツラをいくら調べても、誰も彼が先の大戦の英雄で、
裸のパラグライダー乗りとして有名だったことなどわかりもしない。
同じような見当違いのとらえ方が、現代生物学の弱点にもなっているのだ。》P1
「家主のカツラ」の例えが一転して、いつの間にか現代生物学の弱点という壮大なテーマに発展している。
人類や植物はあくまでも進化の上では後発のグループ群であって、
著者が言う所の「部屋の中のアメーバ」が生物学における本来の主役にも関わらず、
忘れられているか、ほとんど無視されている事を著者は嘆く。
軽妙な語り口も本書の魅力の一つだが、
やはり科学書である以上、科学的厳密性、
生物界についての深い洞察についても触れずにはいられない。
例えば、「クリプトモナス」というのは、入れ子人形の如く、
多くの生物が融合してできた複雑な構造の生物の例として取り上げられているが、
それだけではない更に秘密の部分を持っていると著者は述べている。
《しかし、クリプトモナスという人形には、まだ多くの中身がある。
葉緑隊体はミトコンドリア同様、否定の余地がない細菌起源で、真ん中に細菌の染色体を持っている。
これがゲノムⅢである。
植物細胞はどれも同じ光合成のための細菌小器官を持っているのだから、
この藻類と同じ三つのゲノム複合体を持っていることになる。
クリフトモスにはもう一つのゲノム、ゲノムⅣがあって、
それは緑葉体の周りを包んでいる複層幕の間にはさまれている。
ゲノムⅣはそれ自身の膜の中におさまっており、
ヌクレオモルフ(訳注:二次共生起源の色素体で共生したものの核が残存した構造)と呼ばれ、
五〇〇ほどの遺伝子をコードしている三つの染色体を小型化した核である。》P23
微生物の世界はかくも複雑で、かつその世界観は大きく、そしてまた深い。
その厳密さ、複雑さゆえに、最初のハードルを高く感じがちだが、
本著はその入り口のハードルを軽妙な語り口で下げて、
徐々にその深い世界への橋渡しをしてくれる。
科学的、厳密性と、詩的、軽妙な筆致が見事に融合した傑作だと思う。
2016年7月20日に日本でレビュー済み
最後まで読みとおすのに忍耐を要した。内容的には最新の知見に基づいたeye openingな実に興味を引かれるものだが、、門外漢の素人には専門用語が多くて実に読みにくい。冗長な表現を削り、写真や図を2,3倍増やしたら著者の意図はもっと的確に伝わると思う。最新の微生物の知見を盛り込んだ素晴らしい啓蒙書なのに残念である。「微生物が地球をつくったー生命40億年史の主人公ー」(ポール・G.フォーコウスキー)を併せて読むことをすすめる。
2015年12月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
最新の分子系統学に裏打ちされた微生物の姿を描く。なじみのない分類群や生物の名前にさえ抵抗がなければ、一般読者にも充分面白みが伝わる、もちろん基礎的な生化学や分子生物学の知識があった方が良いが、なくても楽しめると思う。人間には目に見える物を重視する認知的バイアスがある。そこで、顕微鏡の発明によって多様な微生物世界が明らかになった後でも、どうしても動物や植物だけが生態系の大事な要素と思いがちだった。しかし近年の研究で、腸内細菌叢と人間の健康の重大な関連が明らかになってきて以来、少し潮目が変わってきているようだ。腸内細菌叢は、腸内の炎症や肥満だけではなく、多発性硬化症などの神経疾患とも重大な関連が示唆されている。哺乳動物のみが、このように複雑な細菌叢を有しているらしく、それは腸管内免疫システムと関連して進化してきたらしい。
微生物という枠組みでくくると、そこには単細胞性真核生物である原生生物、カビなどの菌類、原核細胞の細菌、古細菌が含まれる。これらは、見た目があまり変わらないので、分子生物学とゲノミクスが充分に発達してくるまでは、分類としてはおざなりにされてきた。しかし近年の研究は、アメーバなどをはじめとする原生生物の世界が驚くほどの多様性を示す事を明らかにした。真核生物の8つのスーパーグループ(上界)のうち、オピストコンタ(このような面妖な専門語がでてくるが、日本語にはないので、そう言う物だと思ってやり過ごして進んでください)はすべての動物と襟鞭毛虫を含み、アメーバはもう一つのスーパーグループであるアメボゾアに属する。つまり、アメーバと襟鞭毛虫の進化的距離は、ヒトと襟鞭毛虫の距離よりずっと大きいのだ。オピストコンタの特徴は、細胞の後ろの方から一本の鞭毛がのびている点にあるが、ヒトでも精子の細胞はその特徴を残している。
このような話しから始まり、海の、土壌の、大気の、ヒト腸管の、微生物生態系が描かれて行く。そこには、面白いエピソードがいっぱいだ。例えば、チェルノブイリ原発の燃料が溶けて固まっている所は、分厚いセメントで覆われている。強烈な放射線が生物を殺してしまうからだ。しかし、その内側の壁は黒いカビでいっぱいだ。また、デイノコックスという細菌は、ヒトの致死量の1000倍の放射線でも耐えられる仕組みを持っている。こんな強烈な放射線環境は自然界には殆ど存在しないので、なぜこの細菌はそんな仕組みを進化の過程で獲得したのだろうか。恐らくそれは、強い乾燥に耐えるために進化してきたのだと言う。放射線と乾燥で引き起こされる生化学的ダメージは同じような物だからだ。あるいは、海底の熱水噴出口まわりの1メートルにも及ぶ巨大なチューブワーム(ハオリムシ)の体重の半分は共生細菌のものだ。
さらに、今まであまり顧みられなかった生態系のウイルス、光合成細菌であるシアノバクテリアを攻撃するシアノファージの生態的意味合いなどにも目配りする。あるいは、ヒト腸管内生態系でのバクテリオファージの役割にも言及する。
著者の微生物に対する飽くなき興味と愛情が感じられる。一般読者に届くように、専門的な話しを長々とするような無粋は極力避けられているので、ぜひ多くの読者に手に取ってもらいたいし、その価値は充分にある。
微生物という枠組みでくくると、そこには単細胞性真核生物である原生生物、カビなどの菌類、原核細胞の細菌、古細菌が含まれる。これらは、見た目があまり変わらないので、分子生物学とゲノミクスが充分に発達してくるまでは、分類としてはおざなりにされてきた。しかし近年の研究は、アメーバなどをはじめとする原生生物の世界が驚くほどの多様性を示す事を明らかにした。真核生物の8つのスーパーグループ(上界)のうち、オピストコンタ(このような面妖な専門語がでてくるが、日本語にはないので、そう言う物だと思ってやり過ごして進んでください)はすべての動物と襟鞭毛虫を含み、アメーバはもう一つのスーパーグループであるアメボゾアに属する。つまり、アメーバと襟鞭毛虫の進化的距離は、ヒトと襟鞭毛虫の距離よりずっと大きいのだ。オピストコンタの特徴は、細胞の後ろの方から一本の鞭毛がのびている点にあるが、ヒトでも精子の細胞はその特徴を残している。
このような話しから始まり、海の、土壌の、大気の、ヒト腸管の、微生物生態系が描かれて行く。そこには、面白いエピソードがいっぱいだ。例えば、チェルノブイリ原発の燃料が溶けて固まっている所は、分厚いセメントで覆われている。強烈な放射線が生物を殺してしまうからだ。しかし、その内側の壁は黒いカビでいっぱいだ。また、デイノコックスという細菌は、ヒトの致死量の1000倍の放射線でも耐えられる仕組みを持っている。こんな強烈な放射線環境は自然界には殆ど存在しないので、なぜこの細菌はそんな仕組みを進化の過程で獲得したのだろうか。恐らくそれは、強い乾燥に耐えるために進化してきたのだと言う。放射線と乾燥で引き起こされる生化学的ダメージは同じような物だからだ。あるいは、海底の熱水噴出口まわりの1メートルにも及ぶ巨大なチューブワーム(ハオリムシ)の体重の半分は共生細菌のものだ。
さらに、今まであまり顧みられなかった生態系のウイルス、光合成細菌であるシアノバクテリアを攻撃するシアノファージの生態的意味合いなどにも目配りする。あるいは、ヒト腸管内生態系でのバクテリオファージの役割にも言及する。
著者の微生物に対する飽くなき興味と愛情が感じられる。一般読者に届くように、専門的な話しを長々とするような無粋は極力避けられているので、ぜひ多くの読者に手に取ってもらいたいし、その価値は充分にある。
2015年12月6日に日本でレビュー済み
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訳者の専門やお歳を考えるとしょうがないとは思うが、分子生物や分子遺伝の用語の訳が、多分おかしい。でも内容などは面白かった。自分が訳者の年齢だったら絶対読めないと思うし、日本語で読めるありがたさがあるので星4つ。でも、出版社のヒトは、分子生物系の専門のヒトに用語ぐらい監修してもらったほうが良いと思います。