広げてわくわくシリーズに写楽が登場しました。他の企画では拡げることで広がりが感じられましたが、写楽の場合は大判の錦絵ですから、必ずしも広げなくてもよいのですが、同じ歌舞伎に登場した人物を並べて見ることで対比しながら理解をしやすくさせようという意図なのでしょう。
最初に書かれているように「ストーリーに沿って、芝居を観るような臨場感で『写楽』が楽しめます!」とあり、「写楽の魅力が最も発揮されている第一期、第二期の作品に絞って紹介」してありました。写楽の個性や特徴はそれで十二分につかめますし、代表的な作品はここに集まっていますので。
江戸の大歌舞伎の役者絵28図は何時見ても見飽きません。寛政6年(1794)5月興行の芝居の演目を取り上げ、そのストーリーを、イラストを使いながら説明を加えています。登場人物相関図とあらすじを最初に説明し、その後、写楽の作品をずらっと掲載することで描かれた人物像や役割を明瞭にしていました。
写楽に関する本は沢山出版されてきましたが、芝居のブロマイドの役割を果たした役者絵だということを念頭に置けばこの企画の意図も見えてくるでしょう。
22ページに浮世絵師によって同じ役者をどのように描き分けたのかを比較して掲載してありました。その違いが絵師の個性でしょうし、特徴なのでしょう。
本書の内容を記します。
第１期 写楽のデビュー（「花菖蒲文禄曾我」 特集 江戸の敏腕プロデューサー！蔦屋重三郎 特集 浮世絵師対決！同じ役者がこんなに違う 「敵討乗合話」「恋女房染分手綱・義経千本桜」）
第２期 写楽の挑戦（「けいせい三本傘」「二本松陸奥生長」「神霊矢口渡・四方錦故郷旅路」）
第３期 凋落の始まり
第４期 写楽の終焉（特集 写楽とは何者だったのかそして、なぜ消えたのか）
なお、筆者の浅野 秀剛氏は、千葉市美術館学芸課長を経て、現在、財団法人大和文華館館長を務められています。
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