日本と欧米の捕鯨通史、捕鯨文化史を古今の文献を駆使して論じた良書。私は本書で初めて捕鯨の面白さ、奥深さを知りました。また巻末に収められた文献一覧はとても参考になりまし
た。捕鯨関係の古書の蒐集を始めるきっかけになったのも本書です。捕鯨史を学びたい方に広く推薦したいと思います。
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鯨と捕鯨の文化史 単行本 – 1994/7/20
森田 勝昭
(著)
鯨は人間にとって重要な生活財であると同時に、その巨体はいつの時代にも人の心を魅了し、意味の産出を促す「文化的」存在でもあった。本書は、捕鯨活動400年の歴史を通じて、東西の捕鯨文化を浮彫りにするとともに、自然と人間の関係を鋭く問い直した力作である。
【受 賞】
・第48回「毎日出版文化賞本賞」
【受 賞】
・第48回「毎日出版文化賞本賞」
- 本の長さ466ページ
- 言語日本語
- 出版社名古屋大学出版会
- 発売日1994/7/20
- ISBN-104815802378
- ISBN-13978-4815802370
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
時代とともに次々と姿を変える鯨は、常に人間社会を映し出す鏡だった。近代捕鯨の誕生から現在の捕鯨問題まで、400年にわたる歴史を解読し、東西の捕鯨文化を浮彫りにするとともに、自然と人間の関係を鋭く洞察。
レビュー
【圧倒的な”品揃え”で迫ってくれる】
……そうそう、ゆうべ、本ってもの読んでみたんだ。僕らとニンゲン様とのおつきあいの歴史の本。おつきあいったって、最近こそ、エコロジーっていうの、やたら僕らを持ち上げるのが流行ってるけど、それまでは、一方的に追っかけまわされ殺されるだけだったんだから、そんな本読んでも腹が立つだけだよって、じっちゃんは言ったけど、でもね、けっこうそうでもなかったんだ。
……ニンゲンの格闘ぶりを跡づけながら、捕鯨という行為を通して近代文明っつうお化けの正体をとらえようって趣向。まあ、こうまとめちゃうと、なんか、もう先が見えちゃう気もするけど、そこは気鋭の学者さんらしく、圧倒的な品揃えで迫ってくれる。北極海から南氷洋から紀州太地浦まで、航海日誌に給与規定に各種統計、と探索の範囲がメチャ広くって、おかげで、船室の臭いやら銛撃ちの興奮やら蘭学者の当惑やら、リアルな情景がいっぱい味わえたよ。なかでも、そうだなあ、日米の対比ってのが、印象ぶかかったな。……
油か肉か。会社組織か共同体か。ガンガン攻めるか、じっと待つか。つまりは、近代か伝統か。じつにきれいなコントラストをしめすってわけ。
でもって、近代文明に懐疑的なこの著者さんは、後者に好感持っておられるみたいだけど、うーん、どっちもどっちだよねえ。「110バーレル」と数えられようが、「エビス神」と拝まれようが、殺されるのはおんなじだし、戒名付けたりお墓建ててもらったりするより、ロンドンやボストンの夜をギンギンに照らしまくって昇天するほうが、カッコいい気もするし。
それにしても、あいつら、ほんとおもしろいやつらだね。近頃じゃチャーター船仕立てて、わざわざ海上ジャンプ眺めにきたりさ。忙しくって、ややこしくって、元気いっぱいで、いつまで見てても飽きないよ。……【山室 恭子氏】 --「毎日新聞」書評欄(1994年8月22日)より
【思想史の視点で近代問う】
我が国における捕鯨の研究は、これまでに主に水産学者と経済史家によって行われてきた。80年代後半になって人類学者がこれに加わり比較文化的な視点が導入されたが、今また森田勝昭氏の手によって思想史的な観点が新たにつけ加えられた。森田の見る捕鯨の歴史とは、西洋と日本の近代の歴史を象徴的に反映したものであり、捕鯨の思想史的解釈とは、近代の意味を問い直す作業でもある。……
本書の魅力のひとつは、東西の研究書のみならず、捕鯨船の航海日誌や乗員の手記にまで細かく目を通した、緻密で確実な史料的裏づけである。学術書でありながら行間に海水と古い鯨油の臭いが感じられるのは、豊富な一次資料の駆使にその理由がある。
包括的な捕鯨史はこれまでにも西洋の研究者によって何冊か書かれたが、みな西洋中心の世界観に立ち、日本の捕鯨は周辺的な存在として小さく扱われていた。しかし森田は日本人の視点から世界の捕鯨史を描き、それを通じて世界史における日本の近代について内省の目を向けることを我々に促している。類似した事実と主張のくり返しになりがちな捕鯨史の分野で、久しぶりに知る喜びを味わわせてくれる、充実した一冊である。【桜美林大学教授 高橋 順一氏】 --「日本経済新聞」書評欄(1994年8月7日)より
……そうそう、ゆうべ、本ってもの読んでみたんだ。僕らとニンゲン様とのおつきあいの歴史の本。おつきあいったって、最近こそ、エコロジーっていうの、やたら僕らを持ち上げるのが流行ってるけど、それまでは、一方的に追っかけまわされ殺されるだけだったんだから、そんな本読んでも腹が立つだけだよって、じっちゃんは言ったけど、でもね、けっこうそうでもなかったんだ。
……ニンゲンの格闘ぶりを跡づけながら、捕鯨という行為を通して近代文明っつうお化けの正体をとらえようって趣向。まあ、こうまとめちゃうと、なんか、もう先が見えちゃう気もするけど、そこは気鋭の学者さんらしく、圧倒的な品揃えで迫ってくれる。北極海から南氷洋から紀州太地浦まで、航海日誌に給与規定に各種統計、と探索の範囲がメチャ広くって、おかげで、船室の臭いやら銛撃ちの興奮やら蘭学者の当惑やら、リアルな情景がいっぱい味わえたよ。なかでも、そうだなあ、日米の対比ってのが、印象ぶかかったな。……
油か肉か。会社組織か共同体か。ガンガン攻めるか、じっと待つか。つまりは、近代か伝統か。じつにきれいなコントラストをしめすってわけ。
でもって、近代文明に懐疑的なこの著者さんは、後者に好感持っておられるみたいだけど、うーん、どっちもどっちだよねえ。「110バーレル」と数えられようが、「エビス神」と拝まれようが、殺されるのはおんなじだし、戒名付けたりお墓建ててもらったりするより、ロンドンやボストンの夜をギンギンに照らしまくって昇天するほうが、カッコいい気もするし。
それにしても、あいつら、ほんとおもしろいやつらだね。近頃じゃチャーター船仕立てて、わざわざ海上ジャンプ眺めにきたりさ。忙しくって、ややこしくって、元気いっぱいで、いつまで見てても飽きないよ。……【山室 恭子氏】 --「毎日新聞」書評欄(1994年8月22日)より
【思想史の視点で近代問う】
我が国における捕鯨の研究は、これまでに主に水産学者と経済史家によって行われてきた。80年代後半になって人類学者がこれに加わり比較文化的な視点が導入されたが、今また森田勝昭氏の手によって思想史的な観点が新たにつけ加えられた。森田の見る捕鯨の歴史とは、西洋と日本の近代の歴史を象徴的に反映したものであり、捕鯨の思想史的解釈とは、近代の意味を問い直す作業でもある。……
本書の魅力のひとつは、東西の研究書のみならず、捕鯨船の航海日誌や乗員の手記にまで細かく目を通した、緻密で確実な史料的裏づけである。学術書でありながら行間に海水と古い鯨油の臭いが感じられるのは、豊富な一次資料の駆使にその理由がある。
包括的な捕鯨史はこれまでにも西洋の研究者によって何冊か書かれたが、みな西洋中心の世界観に立ち、日本の捕鯨は周辺的な存在として小さく扱われていた。しかし森田は日本人の視点から世界の捕鯨史を描き、それを通じて世界史における日本の近代について内省の目を向けることを我々に促している。類似した事実と主張のくり返しになりがちな捕鯨史の分野で、久しぶりに知る喜びを味わわせてくれる、充実した一冊である。【桜美林大学教授 高橋 順一氏】 --「日本経済新聞」書評欄(1994年8月7日)より
著者について
森田 勝昭(もりた かつあき)
1951年生まれ。京都大学大学院文学研究科修士課程修了(1981年)。金蘭短期大学講師、名古屋大学助教授を経て、現在は甲南女子大学助教授。専門は海事文化史、アメリカ文学。
(所属等は初版第1刷発行時のものです。)
1951年生まれ。京都大学大学院文学研究科修士課程修了(1981年)。金蘭短期大学講師、名古屋大学助教授を経て、現在は甲南女子大学助教授。専門は海事文化史、アメリカ文学。
(所属等は初版第1刷発行時のものです。)
登録情報
- 出版社 : 名古屋大学出版会 (1994/7/20)
- 発売日 : 1994/7/20
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 466ページ
- ISBN-10 : 4815802378
- ISBN-13 : 978-4815802370
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2015年4月28日に日本でレビュー済み
図書館で置いてあったので読みましたがとても参考になりました。但し、Wikipediaで閲覧して見ると捕鯨が盛んなのは山口県や和歌山県で長野県や滋賀県は捕鯨文化は根付かなかったみたいです。両県とも内陸県なのは言うまでもないですが保存技術や交通機関が未発達なのもあります。また、鯨肉が全国に普及したのも戦後からで鯨肉を売り込みたい業者が盛んに伝統文化だと宣伝したみたいです。良く、欧米諸国は鯨油だけ取って後は破棄したではないかと言いますが日本も南極まで行って鯨油だけ取ったみたいです。また、日本国内でもこういった事があったみたいですがイギリスやノルウェー、オランダも南極まで行ってたみたいです。前は捕鯨賛成派でしたけど復興予算が流用されていた報道を見たり上記の事柄を知ってからは賛成派とは距離を置く事にしました。勿論、牛やカンガルーを食べているアメリカやオーストラリアに日本を非難する権利はありませんけどね!
2020年3月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
今から約32年前、当時名古屋大学から私の大学に英語の講師として来られていた著者に、メルヴィルの白鯨の原文を使い、英語を教えていただきました。やっかいそうな小説だが、何か面白そうな小説だと思いました(講義中、edgeの意味がわからず、講師に意味をきいてしまったのがなつかしい)それより講師の鯨に対する情熱に感動しました。昨年 William Hootkins 朗読の MOBY-DICK CD19枚組の朗読CDをamazonで買ったのをきっかけに再勉強するため、この本を購入しました。