周藤氏はこれまでも「隙間学」において優れた業績を上げ、尚且つそれを非専門家に開示できる能力においても甚だ優れている。この大著も、日本の世界史学会(日本の学会では世界史は"受験用語"らしく、専門家の間では「西洋史」と称するものらしいが、、「西洋」の歴史なんて百年遅れた分野じゃなかろうか?)において、中高生の教科書にも当たり前のように登場する「ヘレニズム」だが実は専門家による専門的レベルの研究書が全く無い(日本ではそもそもヘレニズムの専門家が存在しないのだろう)と言ってもいいような現状の欠を埋め、更にヘレニズム時代の「共通語」などといとも簡単に説明されるコイネー・ギリシャ語にしてからがギリシャ語の専門家からは新約聖書言語と片付けられて、聖書以外に万巻存在したはずの、約350年間のヘレニズム・ギリシャ語(コイネー)文献はほぼほぼ😔 まともな研究対象ともされて来なかった日本の今日的学的状況に一石を投ずることにもなっており、本書のテーマが自ずから秀逸なものと評されるべきなのは決して間違いではない。
ただし、ストラボンなど基本文献の情報が雑なので、☆一つマイナス。
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ナイル世界のヘレニズム―エジプトとギリシアの遭遇― 単行本 – 2014/11/10
周藤 芳幸
(著)
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地中海世界の新時代 ——。西洋最古のグローバル化の時代であったヘレニズム期、エジプトとギリシアという二つの高文化の交錯は何をもたらしたのか。中心都市アレクサンドリアに見るプトレマイオス朝の表象戦略から在地社会の文化変容まで、エジプトでの長期発掘調査をもとに、物質史料と文字史料を総合して新たな像を提示する労作。
【書 評】
・読売新聞(2022年6月12日付、読書欄「空想書店」、評者:河江肖剰氏)
“…… 調査現場の生の声とデータが豊富。ロゼッタストーンの重要性は実は書かれた内容そのものだという。”(第11面)
・『史学雑誌』(第125編第7号、2016年7月、評者:髙橋亮介氏)
・『西洋史学』(第258号、評者:石田真衣氏)
・『週刊読書人』(2014年12月19日号、評者:髙木勇夫氏)
【目 次】
序 章
第Ⅰ部 ヘレニズム史の再構築に向けて
第1章 プトレマイオス朝エジプト史研究の新展開
——「オリエント的デスポティズム」を越えて
はじめに
1 グローバル化の時代としてのヘレニズム時代
2 歴史の中のプトレマイオス朝
3 プトレマイオス朝エジプト像の変遷
おわりに
第2章 アコリス遺跡の考古学
—— ヘレニズム時代を中心として
はじめに
1 アコリス遺跡の調査前史
2 都市域北端部の発掘調査(1997年~2001年)
3 アコリス及びその周辺の碑文の調査(2002年~2004年)
4 採石場のグラフィティ調査(2005年~2012年)
おわりに
第3章 ヘレニズムへの道
—— アレクサンドロス以前のナイル世界とエーゲ海世界
はじめに
1 エジプトとクレタ島のミノア文明
2 エジプトとエーゲ海のミケーネ文明
3 前一千年紀におけるギリシア人のエジプトへの定住
4 交易拠点ナウクラティスとサイス朝の繁栄
おわりに
第Ⅱ部 ナイルのほとりのヘレニズム王国
第4章 都市アレクサンドリアの成立
—— ヘレニズム文明の磁場の創造
はじめに
1 アレクサンドロス大王と都市アレクサンドリアの建設
2 アレクサンドリアの都市景観
3 ストラボンの見たアレクサンドリア
おわりに
第5章 セーマ・大灯台・図書館
—— 表象とモニュメントの世界
はじめに
1 セーマ
2 大灯台
3 図書館
おわりに
第6章 初期プトレマイオス朝の宗教政策
—— 支配者崇拝から王朝祭祀へ
はじめに
1 支配者崇拝
2 サラピス神信仰の確立
3 プトレマイオス朝の王朝祭祀
おわりに
第Ⅲ部 領域部の文化変容
第7章 プトレマイオス朝とエジプト領域部の開発
—— ファイユームの水利事業を中心として
はじめに
1 領域部の景観
2 領域部の集落組織
3 領域部の開発
4 栽培作物の変化
5 領域部におけるギリシア人の活動
おわりに
第8章 採石場のヘレニズム
—— ニュー・メニア古代採石場の調査成果から
はじめに
1 ニュー・メニア古代採石場とその調査
2 グラフィティの基本構造
3 グラフィティの年代
4 時系列上の変化
おわりに
補 論 ローマ帝政期の軍団と採石場
第9章 ケファラスの子ディオニュシオスとその世界
—— 前二世紀末エジプト在地社会の一断面
はじめに
1 史料の概要
2 ケファラスの子ディオニュシオスの家族構成と生活空間
3 史料解釈の方法論
4 ケファロスによるワインの購入
5 ディオニュシオスによる小麦の貸借
6 ディオニュシオスの二つの顔
おわりに
第Ⅳ部 在地エリートの対応
第10章 トゥナ・エル・ジェベルの「ペトシリスの墓」
—— イメージの文化変容
はじめに
1 「ペトシリスの墓」とそのレリーフ彫刻
2 プロナオスのワイン生産レリーフ
3 「ペトシリスの墓」の二系統のアンフォラ
4 領域部におけるギリシア系物質文化の浸透
おわりに
第11章 ヘルモポリスのアーキトレイヴ碑文
—— 王権・軍団・在地エリート
はじめに
1 古代ギリシアの碑文文化
2 ヘルモポリスのアーキトレイヴ碑文
3 碑文と建築プログラム
4 碑文成立の歴史的背景
おわりに
第12章 ヘルゲウスの子ハコリスの磨崖碑文
—— 甦る在地エリートの素顔
はじめに
1 モニュメンタルな碑文の誕生
2 アコリス磨崖碑文とそのテクスト
3 ヘルゲウスの子ハコリスのプロソポグラフィ
4 ハコリスとプトレマイオス朝
おわりに
第13章 ロゼッタ・ストーン再考
—— 王権と在地神官団との相互交渉
はじめに
1 プトレマイオス朝と神官団決議
2 アレクサンドリア決議
3 カノーポス決議
4 ラフィア決議
5 メンフィス決議
6 フィラエ第二決議
おわりに
第Ⅴ部 東地中海とナイル世界
第14章 初期プトレマイオス朝とエーゲ海世界
—— ギリシア諸都市との関係を中心として
はじめに
1 「海上帝国」としてのプトレマイオス朝
2 アテネのカリアス
3 クニドスのソストラトス
4 サモスのカリクラテス
5 マケドニアのパトロクロス
おわりに
第15章 地中海の構造変動とナイル世界
—— 南部エジプト大反乱をめぐって
はじめに
1 南部大反乱への歴史的な評価
2 南部大反乱時代の地中海世界
3 南部大反乱の経緯
4 南部大反乱とプトレマイオス朝の対外政策
5 南部大反乱の展開と地中海世界の動向
おわりに
第16章 地中海の海上交易とナイル世界
—— アコリス遺跡出土アンフォラからの考察
はじめに
1 ロドス産アンフォラの特徴
2 ロドス産アンフォラの編年をめぐる問題
3 アコリス出土のロドス産アンフォラ
4 前二世紀のエジプトと東地中海世界
おわりに
第17章 東地中海コイネー文化の成立
—— 物質文化のヘレニズムをめぐって
はじめに
1 アコリス遺跡出土の飲食用土器
2 ナイル世界の他遺跡の状況
3 東地中海世界における生活文化の画一化
4 東地中海コイネー文化の普及とそのメカニズム
おわりに
終 章
あとがき / 注 / 参考文献 / 図版一覧 / 索 引
【書 評】
・読売新聞(2022年6月12日付、読書欄「空想書店」、評者:河江肖剰氏)
“…… 調査現場の生の声とデータが豊富。ロゼッタストーンの重要性は実は書かれた内容そのものだという。”(第11面)
・『史学雑誌』(第125編第7号、2016年7月、評者:髙橋亮介氏)
・『西洋史学』(第258号、評者:石田真衣氏)
・『週刊読書人』(2014年12月19日号、評者:髙木勇夫氏)
【目 次】
序 章
第Ⅰ部 ヘレニズム史の再構築に向けて
第1章 プトレマイオス朝エジプト史研究の新展開
——「オリエント的デスポティズム」を越えて
はじめに
1 グローバル化の時代としてのヘレニズム時代
2 歴史の中のプトレマイオス朝
3 プトレマイオス朝エジプト像の変遷
おわりに
第2章 アコリス遺跡の考古学
—— ヘレニズム時代を中心として
はじめに
1 アコリス遺跡の調査前史
2 都市域北端部の発掘調査(1997年~2001年)
3 アコリス及びその周辺の碑文の調査(2002年~2004年)
4 採石場のグラフィティ調査(2005年~2012年)
おわりに
第3章 ヘレニズムへの道
—— アレクサンドロス以前のナイル世界とエーゲ海世界
はじめに
1 エジプトとクレタ島のミノア文明
2 エジプトとエーゲ海のミケーネ文明
3 前一千年紀におけるギリシア人のエジプトへの定住
4 交易拠点ナウクラティスとサイス朝の繁栄
おわりに
第Ⅱ部 ナイルのほとりのヘレニズム王国
第4章 都市アレクサンドリアの成立
—— ヘレニズム文明の磁場の創造
はじめに
1 アレクサンドロス大王と都市アレクサンドリアの建設
2 アレクサンドリアの都市景観
3 ストラボンの見たアレクサンドリア
おわりに
第5章 セーマ・大灯台・図書館
—— 表象とモニュメントの世界
はじめに
1 セーマ
2 大灯台
3 図書館
おわりに
第6章 初期プトレマイオス朝の宗教政策
—— 支配者崇拝から王朝祭祀へ
はじめに
1 支配者崇拝
2 サラピス神信仰の確立
3 プトレマイオス朝の王朝祭祀
おわりに
第Ⅲ部 領域部の文化変容
第7章 プトレマイオス朝とエジプト領域部の開発
—— ファイユームの水利事業を中心として
はじめに
1 領域部の景観
2 領域部の集落組織
3 領域部の開発
4 栽培作物の変化
5 領域部におけるギリシア人の活動
おわりに
第8章 採石場のヘレニズム
—— ニュー・メニア古代採石場の調査成果から
はじめに
1 ニュー・メニア古代採石場とその調査
2 グラフィティの基本構造
3 グラフィティの年代
4 時系列上の変化
おわりに
補 論 ローマ帝政期の軍団と採石場
第9章 ケファラスの子ディオニュシオスとその世界
—— 前二世紀末エジプト在地社会の一断面
はじめに
1 史料の概要
2 ケファラスの子ディオニュシオスの家族構成と生活空間
3 史料解釈の方法論
4 ケファロスによるワインの購入
5 ディオニュシオスによる小麦の貸借
6 ディオニュシオスの二つの顔
おわりに
第Ⅳ部 在地エリートの対応
第10章 トゥナ・エル・ジェベルの「ペトシリスの墓」
—— イメージの文化変容
はじめに
1 「ペトシリスの墓」とそのレリーフ彫刻
2 プロナオスのワイン生産レリーフ
3 「ペトシリスの墓」の二系統のアンフォラ
4 領域部におけるギリシア系物質文化の浸透
おわりに
第11章 ヘルモポリスのアーキトレイヴ碑文
—— 王権・軍団・在地エリート
はじめに
1 古代ギリシアの碑文文化
2 ヘルモポリスのアーキトレイヴ碑文
3 碑文と建築プログラム
4 碑文成立の歴史的背景
おわりに
第12章 ヘルゲウスの子ハコリスの磨崖碑文
—— 甦る在地エリートの素顔
はじめに
1 モニュメンタルな碑文の誕生
2 アコリス磨崖碑文とそのテクスト
3 ヘルゲウスの子ハコリスのプロソポグラフィ
4 ハコリスとプトレマイオス朝
おわりに
第13章 ロゼッタ・ストーン再考
—— 王権と在地神官団との相互交渉
はじめに
1 プトレマイオス朝と神官団決議
2 アレクサンドリア決議
3 カノーポス決議
4 ラフィア決議
5 メンフィス決議
6 フィラエ第二決議
おわりに
第Ⅴ部 東地中海とナイル世界
第14章 初期プトレマイオス朝とエーゲ海世界
—— ギリシア諸都市との関係を中心として
はじめに
1 「海上帝国」としてのプトレマイオス朝
2 アテネのカリアス
3 クニドスのソストラトス
4 サモスのカリクラテス
5 マケドニアのパトロクロス
おわりに
第15章 地中海の構造変動とナイル世界
—— 南部エジプト大反乱をめぐって
はじめに
1 南部大反乱への歴史的な評価
2 南部大反乱時代の地中海世界
3 南部大反乱の経緯
4 南部大反乱とプトレマイオス朝の対外政策
5 南部大反乱の展開と地中海世界の動向
おわりに
第16章 地中海の海上交易とナイル世界
—— アコリス遺跡出土アンフォラからの考察
はじめに
1 ロドス産アンフォラの特徴
2 ロドス産アンフォラの編年をめぐる問題
3 アコリス出土のロドス産アンフォラ
4 前二世紀のエジプトと東地中海世界
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第17章 東地中海コイネー文化の成立
—— 物質文化のヘレニズムをめぐって
はじめに
1 アコリス遺跡出土の飲食用土器
2 ナイル世界の他遺跡の状況
3 東地中海世界における生活文化の画一化
4 東地中海コイネー文化の普及とそのメカニズム
おわりに
終 章
あとがき / 注 / 参考文献 / 図版一覧 / 索 引
- 本の長さ438ページ
- 言語日本語
- 出版社名古屋大学出版会
- 発売日2014/11/10
- 寸法15.7 x 2.7 x 21.7 cm
- ISBN-10481580785X
- ISBN-13978-4815807856
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商品の説明
著者について
周藤 芳幸(すとう よしゆき)
1962年、神奈川県に生まれる。東京大学文学部卒業(1984年)、ギリシア政府給費留学生としてアテネに留学(1991年まで)、東京大学大学院人文科学研究科博士後期課程単位取得満期退学(1992年)、日本学術振興会特別研究員、名古屋大学文学部助教授を経て、現在は名古屋大学大学院文学研究科教授、博士(文学)。
著 書:
『図説ギリシア エーゲ海文明の歴史を訪ねて』(川出書房新社、1997年)
『ギリシアの考古学』(同成社、1997年)
『物語 古代ギリシア人の歴史』(光文社、2004年)
『古代ギリシア 地中海への展開』(京都大学学術出版会、2006年)
『ギリシアを知る事典』(共著、東京堂出版、2000年)
『古代ギリシア遺跡事典』(共著、東京堂出版、2004年)ほか
(所属等は初版第1刷発行時のものです)
1962年、神奈川県に生まれる。東京大学文学部卒業(1984年)、ギリシア政府給費留学生としてアテネに留学(1991年まで)、東京大学大学院人文科学研究科博士後期課程単位取得満期退学(1992年)、日本学術振興会特別研究員、名古屋大学文学部助教授を経て、現在は名古屋大学大学院文学研究科教授、博士(文学)。
著 書:
『図説ギリシア エーゲ海文明の歴史を訪ねて』(川出書房新社、1997年)
『ギリシアの考古学』(同成社、1997年)
『物語 古代ギリシア人の歴史』(光文社、2004年)
『古代ギリシア 地中海への展開』(京都大学学術出版会、2006年)
『ギリシアを知る事典』(共著、東京堂出版、2000年)
『古代ギリシア遺跡事典』(共著、東京堂出版、2004年)ほか
(所属等は初版第1刷発行時のものです)
登録情報
- 出版社 : 名古屋大学出版会 (2014/11/10)
- 発売日 : 2014/11/10
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 438ページ
- ISBN-10 : 481580785X
- ISBN-13 : 978-4815807856
- 寸法 : 15.7 x 2.7 x 21.7 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,083,373位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 74位古代エジプト史 (本)
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
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