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著者の中村保男氏はコリン・ウィルソン『
アウトサイダー
』やJ・G・バラード『
結晶世界
』などの翻訳を手掛けた翻訳家。併せて様々な翻訳指南書も書いてきた人物です。先日、この著者の『
翻訳の秘訣: 理論と実践
』(新潮選書)を読み、翻訳のための技術論を惜しげもなく披露していることに大いに感銘をうけました。
そこでこの『英和翻訳の原理・技法』を手にしてみました。著者の中村氏は巻頭の「はじめに」で、「かねてから、何冊かの本に分散していた私なりの翻訳論や教則本的な著作を1巻の総集編にまとめたいとひそかに念じていた」という思いから出発した書であることを明らかにしています。また、巻末の「むすび」で、「本書をもって、わたしの翻訳指南書執筆は打ち切りとする」と記しているだけあって、翻訳の細かな技術論だけではなく、英文精読の心構え、そして翻訳書として目指すべき姿勢にまで言及していて、なかなか読みごたえがあります。2003(平成15)年の著作であり、その5年後の2008年に著者が鬼籍に入られているので、まさに翻訳家人生の集大成的著作といえます。
以下の点が勉強になりました。
◆「as」で始まる従属節が主節の後に置かれている文章も、主節から訳すことが支障なくできれば、原作者の発想をそのままの順序で追うことができる。
(例)He kept his hands in his pockets as he played the trick.
「両手をポケットにいれたままで手品をやった。」
◆描出話法の末尾を「というわけだ」と訳すと、著者が主張しているのではないことが明確に表せる。
◆I am afraid...と中断された言葉を訳すときは、「あにくですが」「せっかくですが」「残念ですけど」とすると自然な感じが出る。
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英和翻訳の原理・技法 単行本 – 2003/3/25
英語学習の盲点から翻訳の奥義まで、著者の半世紀にわたる経験から得られた翻訳理論・実践技法を伝授。豊富な文例・訳例により、「勘」と「こつ」を詳細に解説する貴重な一冊。
- 本の長さ275ページ
- 言語日本語
- 出版社日外アソシエーツ
- 発売日2003/3/25
- ISBN-104816917675
- ISBN-13978-4816917677
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商品の説明
出版社からのコメント
翻訳指南書の決定版!翻訳家を目指す人ばかりでなく、英語学習者や英語そのものに興味がある人にも
『英和翻訳の原理・技法』は、著者中村保男氏が自らの半世紀にわたる経験をもとに書き下ろした翻訳指南書の決定版です。中村氏は刊行された翻訳書が100冊を超える文芸翻訳の大家で、また言語・語学への造詣も深く、英語翻訳指導書や表現辞典など十指に余る関連書籍も執筆されています。本書『英和翻訳の原理・技法』はこうした執筆活動の集大成といえるもので、豊富な文例・訳例を交えつつ、英和翻訳のコツをわかりやすく系統立てて述べており、翻訳家を目指す人ばかりでなく、英語学習者や英語そのものに興味がある方にもお勧めの一冊です。
本書では、「原文解読」→「直訳文作成」→「和文和訳による中間訳」→「精製された決定訳」→「全体の推敲」という翻訳のステップを掲げ、英語読解力とともに「日本語を磨く」ことの重要性を強く訴えています。「日本語を磨く」というのは誰でも頭では理解できるのですが、本書の大きな特徴は“磨かれていない日本語文”と“磨かれた日本語文”の違いの実際を、さまざまな場面での具体的な実例を挙げて詳細に解説していることにあります。本書により読者は、もちろん英和翻訳の技術を向上させられますが、同時に日本語に対する感性や言葉への細心の注意力も高められます。
そして著者は、原文を単に正しく美しい日本語にするための個々の「技法」の修得だけではなく、さらなる高みへと読者を誘います。すなわち――その文が全体の中で占める位置や前後関係・文脈にも配慮する「全体感覚」を保ち、文の「意味内容」を正確に訳するにとどまらず「表現形態」も充分に咀嚼して、原文に密着するのでもなく安易な“意訳”に逃避するのでもない「不即不離」の態度を会得してこそ最適訳に到達できる――著者は本書の中でこの翻訳の基本的な「原理」を噛んで含めるように読者に伝授しているのです。
本書は、一読して終わるのではなく、何度も何度も読み込むことで自分の「言語感覚」を磨くことに役立つ、本当の意味での“参考書”といえるでしょう。
『英和翻訳の原理・技法』は、著者中村保男氏が自らの半世紀にわたる経験をもとに書き下ろした翻訳指南書の決定版です。中村氏は刊行された翻訳書が100冊を超える文芸翻訳の大家で、また言語・語学への造詣も深く、英語翻訳指導書や表現辞典など十指に余る関連書籍も執筆されています。本書『英和翻訳の原理・技法』はこうした執筆活動の集大成といえるもので、豊富な文例・訳例を交えつつ、英和翻訳のコツをわかりやすく系統立てて述べており、翻訳家を目指す人ばかりでなく、英語学習者や英語そのものに興味がある方にもお勧めの一冊です。
本書では、「原文解読」→「直訳文作成」→「和文和訳による中間訳」→「精製された決定訳」→「全体の推敲」という翻訳のステップを掲げ、英語読解力とともに「日本語を磨く」ことの重要性を強く訴えています。「日本語を磨く」というのは誰でも頭では理解できるのですが、本書の大きな特徴は“磨かれていない日本語文”と“磨かれた日本語文”の違いの実際を、さまざまな場面での具体的な実例を挙げて詳細に解説していることにあります。本書により読者は、もちろん英和翻訳の技術を向上させられますが、同時に日本語に対する感性や言葉への細心の注意力も高められます。
そして著者は、原文を単に正しく美しい日本語にするための個々の「技法」の修得だけではなく、さらなる高みへと読者を誘います。すなわち――その文が全体の中で占める位置や前後関係・文脈にも配慮する「全体感覚」を保ち、文の「意味内容」を正確に訳するにとどまらず「表現形態」も充分に咀嚼して、原文に密着するのでもなく安易な“意訳”に逃避するのでもない「不即不離」の態度を会得してこそ最適訳に到達できる――著者は本書の中でこの翻訳の基本的な「原理」を噛んで含めるように読者に伝授しているのです。
本書は、一読して終わるのではなく、何度も何度も読み込むことで自分の「言語感覚」を磨くことに役立つ、本当の意味での“参考書”といえるでしょう。
内容(「MARC」データベースより)
英和和英双方向の翻訳者であり、翻訳の形而上学の理論構築者として実践と理論両面で多くの仕事をこなした著者が明かす、英語学習の盲点と翻訳の奥義。豊富な文例・訳例により、「勘」と「こつ」を詳細に解説。
著者について
翻訳家・評論家。1931年生まれ、東京大学文学部英文科卒、同大学院文学研究科英文学専攻修士課程修了。在学中から現在にいたるまで、さまざまな分野の作品の翻訳にあたるかたわら、翻訳論や言語論に関する著作も多数。最近では語句の訳し方を辞書形式で示した『新編・英和翻訳表現辞典』(研究社2002.8刊)がある。
登録情報
- 出版社 : 日外アソシエーツ (2003/3/25)
- 発売日 : 2003/3/25
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 275ページ
- ISBN-10 : 4816917675
- ISBN-13 : 978-4816917677
- Amazon 売れ筋ランキング: - 482,583位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2017年7月12日に日本でレビュー済み
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素晴らしいの一言に尽きます。翻訳を生業にしている方々は是非ともお読みになるべきです。まぁ、おそらくすでにお読みになっていることでしょう。この本の優れているところは、筆者の中村氏が優れた訳文、訳語をお示しになっているだけでなく、その訳に至るまでの思考の過程を氏が惜しみなく披露しておられることです。いろいろな英文を翻訳するためのアプローチの仕方を項目ごとにまとめて示してくださっています。安西徹雄氏の『英文翻訳術』もあり、こちらは英日翻訳のルールを多岐にわたって示しておられる労作ですが、『英文翻訳術』では訳語訳文を生み出すまでの思考の過程が大方省略され、一つの英文から考えられるいくつかの訳例の中で一つの訳がよりよいといえるのはなぜかを説明しているのに対して、中村氏のこの本は一翻訳者としての氏のブレーンストーミングや思考の一歩一歩に寄り添うことができるように書かれています。筆者はこの本で翻訳論を書くのは最後にするとお書きですが、我々には御氏によるさらなる指南が恋しく思われます。繰り返しますが、翻訳者(および翻訳者志望)には必読の書です!
2016年7月11日に日本でレビュー済み
翻訳の大家、中村保男先生の書かれた英和翻訳の技術書。
優れた翻訳のためには、英文理解力は言うに及ばず、日本語の表現力や書かれている対象に対する深い理解等、様々なものが関係するので、単に翻訳の技術だけを学べばよいということではないが、それでも本書には中村先生が長い翻訳者生活の中で習得したエッセンスが盛り込まれている。
ここに書かれていることも身に着けず翻訳を志すのは、無謀と言うほかない。
買って絶対に損のない参考書。
優れた翻訳のためには、英文理解力は言うに及ばず、日本語の表現力や書かれている対象に対する深い理解等、様々なものが関係するので、単に翻訳の技術だけを学べばよいということではないが、それでも本書には中村先生が長い翻訳者生活の中で習得したエッセンスが盛り込まれている。
ここに書かれていることも身に着けず翻訳を志すのは、無謀と言うほかない。
買って絶対に損のない参考書。
2003年3月19日に日本でレビュー済み
翻訳の勉強をしていて心細く思うのは、日本語らしい文にするにはどこまで自己裁量が許されるのか、という基準が無いことです。本書は原文>直訳>変換>日本語、というステップで、まともな日本語に翻訳するための考え方を様々な例文で紹介しています。とても参考になり、はげまされます。単なる羅列でなく、色々な視点で、系統的な解説が行われ、しかも、各所に著者や他の翻訳者の考え方や生き方がちりばめられていているので、面白い読み物にもなってます。 かん