決められたことをきちんとやれば必ず成功する――
多くの名著とされるビジネス本は一貫性を重んじ、複雑な世界を整頓してくれる。
シリーズ累計1000万部を売り上げた「ビジョナリーカンパニー」は、まさにこの典型例といえる。
本書はこうしたビジネス書に対して明確なNOを突きつけた。
記事も雑誌も論文も…経営の成功にはもろ手を挙げて賛美し、失敗には非難の集中砲火。
こうした事例はわれわれの社会に腐るほどあるため、この本を読む前と後では、世界を見る目が変わってしまう。
「レディと花売り娘の違いはどう扱われるか」という作中の引用は言い得て妙だ。
結果と原因を強引にでも結び付けてしまう、確からしい講釈をつねに求めてしまうヒトの”弱さ”を、鮮やかに解説している良書だ。
とりわけ「ビジョナリーカンパニー」の著者・ジムコリンズ氏に対しては、親でも殺されたのかというほどの痛烈な批判を展開している。
「ビジョナリーカンパニー」を読まれた方は大いに楽しめるだろう。
私は、「↑を入力すればその通り動いてくれるだろう」みたいな、人をゲームのNPC扱いするビジネス書の世界観は嫌いだ。
だからこそ、この本は肌に合った。
人間はそれほど単純でもなければ、合理的でもない。
300ページ程度の本を読んだだけで他人を思いのままに動かせると思うことが何よりも傲慢だ。
ビジネス本や自己啓発本に感化されては正義を振りかざすような人間にこそ、この本の一読を薦めたい。
ただ一つ不満な点は、運がどれほど業績を左右しうるかの説明が少ないこと。
筆者が考える、幸運(or 悪運)に恵まれただけの企業を紹介しても良かったのではないだろうか?
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なぜビジネス書は間違うのか 単行本 – 2008/5/15
フィル・ローゼンツワイグ
(著),
桃井 緑美子
(翻訳)
マネジメントに関する本の大半は「企業パフォーマンスを向上させるにはどうすればよいか」をテーマにしている。本書はそれに対し、「こうすれば成功する」というような公式は存在しないと主張する。著者は、経営戦略のプロやコンサルタントや教授や記者などの専門家がなぜ頻繁に間違いを犯すのかを示し、ビジネス誌や学術調査や最近のベストセラーなど、あちこちに見られる妄想を暴いてみせる。「ハロー効果」とは、企業の全体的な業績を見て、それにもとづいてその企業の文化やリーダーシップや価値観などを評価する傾向のこと。業績のよい企業が、すべての面で高く評価されがちな妄想を、後光(ハロー)が射していることになぞらえた表現である。
- 本の長さ312ページ
- 言語日本語
- 出版社日経BP
- 発売日2008/5/15
- ISBN-104822246663
- ISBN-13978-4822246662
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商品の説明
著者について
フィル・ローゼンツワイグ:
スイスのローザンヌにあるIMD(国際経営開発研究所)の教授。IMDでは世界をリードする多国籍企業の戦略について研究している。北カリフォルニア出身の同氏はカリフォルニア大学サンタバーバラ校で経済学を、カリフォルニア大学ロサンゼルス校で経営学を学んだ。ヒューレット・パッカード社で6年間働いた後、フィラデルフィアに移り、ペンシルベニア大学ウォートンスクールで博士号を取得する。ハーバードビジネススクールで6年間過ごした後、1996年にIMDの一員に加わった。
スイスのローザンヌにあるIMD(国際経営開発研究所)の教授。IMDでは世界をリードする多国籍企業の戦略について研究している。北カリフォルニア出身の同氏はカリフォルニア大学サンタバーバラ校で経済学を、カリフォルニア大学ロサンゼルス校で経営学を学んだ。ヒューレット・パッカード社で6年間働いた後、フィラデルフィアに移り、ペンシルベニア大学ウォートンスクールで博士号を取得する。ハーバードビジネススクールで6年間過ごした後、1996年にIMDの一員に加わった。
登録情報
- 出版社 : 日経BP (2008/5/15)
- 発売日 : 2008/5/15
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 312ページ
- ISBN-10 : 4822246663
- ISBN-13 : 978-4822246662
- Amazon 売れ筋ランキング: - 410,358位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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- - 1,835位マネジメント・人材管理
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2023年9月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2013年1月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書の目的は、表面的にはビジネス書が犯しがちな誤りを指摘して、経営学者やコンサルタントではない一般読者に「考えること」を促すことであります。
しかし、よりいっそう重要なメッセージの一つは、本書きとしての経営学者やコンサルタントへの警句なのではないでしょうか。
とりわけ、重要なメッセージは、社会調査を行う際に陥りがちな過ちとしてのハロー効果(より一般的には、インタビュイーや質問票の回答者が陥っている認知的不協和)を頭に入れ、リサーチ設計をすべきということと、
結果を解釈する際に陥りがちな視野狭窄について、書き手はより反省的に自分の研究を見直さなければならないということ。
一般読者にとって、多くの学術的研究はつまらなく見えるものだし、さらに言えば学者は基本的に「学者コミュニティに対して」論文ないし本を書いているから一般読者からはとっつきにくい。
そういう背景もあって、「分かり易い」ビジネス書はウケがいいものです。
しかし、「分かり易い」ビジネス書であればあるほど、上記のような過ちに陥っている可能性も高い。それは、厳密な科学的手法に依らずに「(エセ科学ではあるが)ある程度分かり易い証拠」に基づいていたり、「読者の読みたいもの・耳触りのいいもの」を書き手が書こうとしているから生じるわけでもあります。
ビジョナリーカンパニーを読めば、元気が出るかもしれません。
しかし、厳密な科学とはいえない分析を行っているビジョナリーカンパニーの提言に従って経営を行えば、「good to great」どころか「good to bad」に陥る可能性すらあります。
当然、社会科学としての経営学という領域で一般法則が見出されるなどと期待するのもおかしな話ですが、経営学の科学的側面に基づくセオリーや定石を無視してエセ科学に飛びつく方がよほど危険なのは自明でしょう。
この点について、エセ科学的ビジネス書の書き手は反省すべきであると同時に、
また一般読者に伝えなければならないメッセージを(相対的に)軽視してきた経営学者も反省しなければならないと思われます。
また、多くの一般読者も耳心地のいいビジネス書ばかり読んでしまう(確証バイアス的な?)傾向を反省的に見つめ直し、批判的に読む癖・自分で考える癖を身につけなければならないでしょう。この点について、本書『なぜビジネス書は間違うのか』はよいとっかかりになるのではないでしょうか。
ただ、本書を読んでいて、最終章では肩すかしをくらった気分になります。
本書の貢献は、読者と書き手(学者・コンサルタント)に反省を促す点にあったのですから、敢えて筆者の考える「よい経営」という部分にまで踏み込む必要はなかったと思われます。
むろん、批判に終始していては、「じゃああなたはどうなのか」という批判もあるでしょうから、この最終章を書いたのだとは思いますが、
私的には「経営の基本は『自分で考えること』だ」という結論でよかったのではないか、とも思うのです。その考えるためのフレームワークを提供するのが経営学の一つの役割なのですから。
これを踏まえて、☆4つとしました。
しかし、よりいっそう重要なメッセージの一つは、本書きとしての経営学者やコンサルタントへの警句なのではないでしょうか。
とりわけ、重要なメッセージは、社会調査を行う際に陥りがちな過ちとしてのハロー効果(より一般的には、インタビュイーや質問票の回答者が陥っている認知的不協和)を頭に入れ、リサーチ設計をすべきということと、
結果を解釈する際に陥りがちな視野狭窄について、書き手はより反省的に自分の研究を見直さなければならないということ。
一般読者にとって、多くの学術的研究はつまらなく見えるものだし、さらに言えば学者は基本的に「学者コミュニティに対して」論文ないし本を書いているから一般読者からはとっつきにくい。
そういう背景もあって、「分かり易い」ビジネス書はウケがいいものです。
しかし、「分かり易い」ビジネス書であればあるほど、上記のような過ちに陥っている可能性も高い。それは、厳密な科学的手法に依らずに「(エセ科学ではあるが)ある程度分かり易い証拠」に基づいていたり、「読者の読みたいもの・耳触りのいいもの」を書き手が書こうとしているから生じるわけでもあります。
ビジョナリーカンパニーを読めば、元気が出るかもしれません。
しかし、厳密な科学とはいえない分析を行っているビジョナリーカンパニーの提言に従って経営を行えば、「good to great」どころか「good to bad」に陥る可能性すらあります。
当然、社会科学としての経営学という領域で一般法則が見出されるなどと期待するのもおかしな話ですが、経営学の科学的側面に基づくセオリーや定石を無視してエセ科学に飛びつく方がよほど危険なのは自明でしょう。
この点について、エセ科学的ビジネス書の書き手は反省すべきであると同時に、
また一般読者に伝えなければならないメッセージを(相対的に)軽視してきた経営学者も反省しなければならないと思われます。
また、多くの一般読者も耳心地のいいビジネス書ばかり読んでしまう(確証バイアス的な?)傾向を反省的に見つめ直し、批判的に読む癖・自分で考える癖を身につけなければならないでしょう。この点について、本書『なぜビジネス書は間違うのか』はよいとっかかりになるのではないでしょうか。
ただ、本書を読んでいて、最終章では肩すかしをくらった気分になります。
本書の貢献は、読者と書き手(学者・コンサルタント)に反省を促す点にあったのですから、敢えて筆者の考える「よい経営」という部分にまで踏み込む必要はなかったと思われます。
むろん、批判に終始していては、「じゃああなたはどうなのか」という批判もあるでしょうから、この最終章を書いたのだとは思いますが、
私的には「経営の基本は『自分で考えること』だ」という結論でよかったのではないか、とも思うのです。その考えるためのフレームワークを提供するのが経営学の一つの役割なのですから。
これを踏まえて、☆4つとしました。
2018年7月17日に日本でレビュー済み
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いかにビジネス書が役に立たないか。
いかに業績予想があてにならないか。
よく分かりました。
この本が世の中に出回れば、世の中のビジネス書は、ほとんど必要無くなり、書店から消えるでしょう。
いかに業績予想があてにならないか。
よく分かりました。
この本が世の中に出回れば、世の中のビジネス書は、ほとんど必要無くなり、書店から消えるでしょう。
2017年8月3日に日本でレビュー済み
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これまでビジネス書はそれなりに多く読んできたが、ベストケースとして紹介されてた企業がその後衰退を辿っているという事実とどう折り合えばいいのか考えていた時に出会った1冊。本書が指摘する経営学のリサーチ上の弱点は、槍玉に挙がっているビジュアリー・カンパニーやエクセレント・カンパニーに限らず、ビジネス書、いや社会科学全般に言えるのではないだろうか。
教材の作成やセミナー講師、資格試験の経営学の講師をしている関係上、よく「オススメの1冊はなにか」と聞かれることがあるが、そういった際には本書をオススメしている。クリティカル・シンキングのテキストとしてもよい。
教材の作成やセミナー講師、資格試験の経営学の講師をしている関係上、よく「オススメの1冊はなにか」と聞かれることがあるが、そういった際には本書をオススメしている。クリティカル・シンキングのテキストとしてもよい。
2010年5月22日に日本でレビュー済み
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経営のパフォーマンスを向上させる手法は
定型的なものは全くなく、
結局は戦略と実行を状況に応じて選択していくしかない
という、ある意味身も蓋もない結論を述べています。
300ページ以上を費やして
そのことを述べているだけではありますが、
不確実な環境や条件の下、
もっとも確実性の高い手段を選択していくという
経営の要諦を改めて
強く感じることができ、
(経営チームの末席で経験してきた自分としても)
とても参考になるものでした。
私自身、『ビジョナリーカンパニー2』を読んで
とても感動しましたし、
いまだに大切なビジネス書の一つと思っておりますが、
それゆえに本書を読んで
客観的な立ち位置で『ビジョナリーカンパニー2』
を捉えることができるようになりました。
定型的なものは全くなく、
結局は戦略と実行を状況に応じて選択していくしかない
という、ある意味身も蓋もない結論を述べています。
300ページ以上を費やして
そのことを述べているだけではありますが、
不確実な環境や条件の下、
もっとも確実性の高い手段を選択していくという
経営の要諦を改めて
強く感じることができ、
(経営チームの末席で経験してきた自分としても)
とても参考になるものでした。
私自身、『ビジョナリーカンパニー2』を読んで
とても感動しましたし、
いまだに大切なビジネス書の一つと思っておりますが、
それゆえに本書を読んで
客観的な立ち位置で『ビジョナリーカンパニー2』
を捉えることができるようになりました。
2009年10月13日に日本でレビュー済み
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『ビジョナリーカンパニー2』(以下、ビ2とする)といったいわゆる名著を批判する目的で書かれた本(以下、本著とする)。
もっともらしいことを言っているが、的外れな指摘が非常に多い。本著の筆者は名著を読んで理解できるだけの読解力があるのかを疑う。
例えばp229に、コリンズ(ビ2の著者)の解釈は逆で、『選考基準が「15年連続して好業績をあげた」ということなら、安定した業界の企業だけが偉大な企業になれるといったほうが正確だろう』と本著の著者が結論を下しているが、この結論自体が間違っている。
本著の著者は、ハイテク企業が15年も連続して高い業績をあげられる可能性は低かったというが、ビ2が出版されたのは、2001年だから少なくとも1986年以前から存在している会社でなければならず、さらにいえばビ2が対象としているのはそれよりもさらに15年前は「市場平均以下の会社」でなければならず、合計すると創業から30年を経ている会社、すなわち創業が1971年より前の会社しか対象にしていない。その前提がビ2には書いてあるのに、それを本著では述べずに無視して結論を書いている。
そもそも、今でいうハイテク企業の代表格であるマイクロソフトの創業は1975年、アップルは1976年、グーグルは1998年。インテルはかろうじて1970年に創業しているが、インテル一社がビ2に入っていないからといってビ2を否定する理由にはならないだろう。ビ2が対象としているのは、その出版より30年以上前から存在している会社を対象としているのだから、これらがビ2に入らないのは当然である。
また、ハイテク企業が入っていない理由を本著の著者が曲解して「安定した業界の企業だけが偉大な企業になれるといったほうが正確だろう」と述べているが、ビ2の対象期間には今でいうところのハイテク企業が存在すらしていないのだから、この解釈は明らかに間違っているだろう。もっといえば、創業から30年連続して市場平均を上回っている会社も「対象としていない」ということを考えれば、なおさら今をときめくハイテク企業のような急成長企業(例えばマイクロソフト)は対象になりにくいのである。
こういった前提を読者に提示することなく、批判を繰り返している本著は、ビ2の著者に対して失礼だし、本著の読者がビ2を批判的に見るようになっても仕方がないだろう。引用のルールを犯しているのだから・・・本当に教授なの?といいたくなる(まぁ、ハーバードビジネススクールを出ている教授らしいが、それこそハロー効果でごまかそうとしているのではないか?)。
上記などは一例に過ぎないが、こういった点一つとっても、名著をしっかり読み込んでいない、あるいは読んだことがない人にとっては検証できない文章・指摘が点在しており、それこそ、名著を読んだことがない人たちにとっては得るものが少ない著書であり愚作である。なにより、本著で取り上げられ、批判されている名著と比べ、得るものが少なすぎる。
また、本著も「名著を超える」といわんばかりの経営のアドバイスを自信満々に書いてあるが、そちらのほうが名著たちと比べて見劣りするし、レベルが低い。いや、間違っているというべきか・・・。本著の著者は経営経験がないのだろう。まさにこれぞ『なぜビジネス書は間違うのか』のタイトルどおりだ。
名著といわれるビジネス書を批判したい気持ちはわかる。万能でないことも確かだ。いうなれば、経営は科学ではない。だからといって、真理を解き明かそうとビジネス書としてまとめようとする努力を否定してもよいのだろうか?
しかし、どうせ批判するために名著たちの矛盾をつくなら、それが後だしジャンケンである以上、読者を本当に唸らせるような鋭い指摘をして欲しい。そもそも名著をきちんと読解する能力がこの著者にはないのではないか?と疑う(確信する)くらい、指摘のレベルが低い。指摘に対する著者の反論レベルが低い。名著に対する本著の指摘自体が的外れだし間違っているのだから、それこそ本著の信憑性はさらに低くなる。
名著を何度も繰り返し読んでいないと分からない部分が本著には多いので、本著を好意的に受け止める人たちの気持ちは分かるし、ビジネス書というものに批判的な人にとっては滑稽なのであろう。だが、逆に名著をしっかり読み込んできたものの一人としては、腹立たしい馬鹿げた一冊であるという意見も述べさせていただく。名著をこき下ろしているのだから、本著だって批判されるのを覚悟しているだろうw。本のタイトル自体も矛盾しているし。
暇な人は読んでみるといい。ただし、同時に取り上げられている名著もしっかり読むことをオススメする。
あとは、読み手の力によって同じビジネス書でも得られるものに差が生まれるということも付記しておきたい。
もっともらしいことを言っているが、的外れな指摘が非常に多い。本著の筆者は名著を読んで理解できるだけの読解力があるのかを疑う。
例えばp229に、コリンズ(ビ2の著者)の解釈は逆で、『選考基準が「15年連続して好業績をあげた」ということなら、安定した業界の企業だけが偉大な企業になれるといったほうが正確だろう』と本著の著者が結論を下しているが、この結論自体が間違っている。
本著の著者は、ハイテク企業が15年も連続して高い業績をあげられる可能性は低かったというが、ビ2が出版されたのは、2001年だから少なくとも1986年以前から存在している会社でなければならず、さらにいえばビ2が対象としているのはそれよりもさらに15年前は「市場平均以下の会社」でなければならず、合計すると創業から30年を経ている会社、すなわち創業が1971年より前の会社しか対象にしていない。その前提がビ2には書いてあるのに、それを本著では述べずに無視して結論を書いている。
そもそも、今でいうハイテク企業の代表格であるマイクロソフトの創業は1975年、アップルは1976年、グーグルは1998年。インテルはかろうじて1970年に創業しているが、インテル一社がビ2に入っていないからといってビ2を否定する理由にはならないだろう。ビ2が対象としているのは、その出版より30年以上前から存在している会社を対象としているのだから、これらがビ2に入らないのは当然である。
また、ハイテク企業が入っていない理由を本著の著者が曲解して「安定した業界の企業だけが偉大な企業になれるといったほうが正確だろう」と述べているが、ビ2の対象期間には今でいうところのハイテク企業が存在すらしていないのだから、この解釈は明らかに間違っているだろう。もっといえば、創業から30年連続して市場平均を上回っている会社も「対象としていない」ということを考えれば、なおさら今をときめくハイテク企業のような急成長企業(例えばマイクロソフト)は対象になりにくいのである。
こういった前提を読者に提示することなく、批判を繰り返している本著は、ビ2の著者に対して失礼だし、本著の読者がビ2を批判的に見るようになっても仕方がないだろう。引用のルールを犯しているのだから・・・本当に教授なの?といいたくなる(まぁ、ハーバードビジネススクールを出ている教授らしいが、それこそハロー効果でごまかそうとしているのではないか?)。
上記などは一例に過ぎないが、こういった点一つとっても、名著をしっかり読み込んでいない、あるいは読んだことがない人にとっては検証できない文章・指摘が点在しており、それこそ、名著を読んだことがない人たちにとっては得るものが少ない著書であり愚作である。なにより、本著で取り上げられ、批判されている名著と比べ、得るものが少なすぎる。
また、本著も「名著を超える」といわんばかりの経営のアドバイスを自信満々に書いてあるが、そちらのほうが名著たちと比べて見劣りするし、レベルが低い。いや、間違っているというべきか・・・。本著の著者は経営経験がないのだろう。まさにこれぞ『なぜビジネス書は間違うのか』のタイトルどおりだ。
名著といわれるビジネス書を批判したい気持ちはわかる。万能でないことも確かだ。いうなれば、経営は科学ではない。だからといって、真理を解き明かそうとビジネス書としてまとめようとする努力を否定してもよいのだろうか?
しかし、どうせ批判するために名著たちの矛盾をつくなら、それが後だしジャンケンである以上、読者を本当に唸らせるような鋭い指摘をして欲しい。そもそも名著をきちんと読解する能力がこの著者にはないのではないか?と疑う(確信する)くらい、指摘のレベルが低い。指摘に対する著者の反論レベルが低い。名著に対する本著の指摘自体が的外れだし間違っているのだから、それこそ本著の信憑性はさらに低くなる。
名著を何度も繰り返し読んでいないと分からない部分が本著には多いので、本著を好意的に受け止める人たちの気持ちは分かるし、ビジネス書というものに批判的な人にとっては滑稽なのであろう。だが、逆に名著をしっかり読み込んできたものの一人としては、腹立たしい馬鹿げた一冊であるという意見も述べさせていただく。名著をこき下ろしているのだから、本著だって批判されるのを覚悟しているだろうw。本のタイトル自体も矛盾しているし。
暇な人は読んでみるといい。ただし、同時に取り上げられている名著もしっかり読むことをオススメする。
あとは、読み手の力によって同じビジネス書でも得られるものに差が生まれるということも付記しておきたい。