冷静に世界不況を捉え、何がどのように起こったのかを捉えることが出来る傑作だ。うまく章立てとトピックを割り振ることで、対談集のデメリットである散漫さを適度に除き、メリットである分かりやすさを生かしている。
また、本作は市場原理主義を擁護する対談集ではない。二人とも必要な規制は必要と述べている。二人の目的は「強欲資本主義」というような単純な対立フレームワークを拘泥することではなく、人類や市場が過去に何を体験してきたからこそ、今回のような対処が取られ、この対策が何を引き起こしたか、の冷静なレビューを作ることだったのだろう。その過程で、安易な解決策が出がちなケインズ経済学を批判しているのであって、他にもフリードマンにしても、クルーグマンにしても過去にこのような誤りを主張し、取り下げたという事例の紹介がされている。
細かなテクニカルなミスはチラホラ見受けられる。他のレビュアーが指摘していらっしゃるようにLBOのジャンクボンドのくだりなどがそうだ。それでも世界不況を本質的かつ総括的にまとめた本対談の存在意義は揺るがないだろう。3年後、5年後にあの世界不況は何だったのかと思い出すときに再び手に取りたい本だ。
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なぜ世界は不況に陥ったのか 単行本 – 2009/2/26
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日本の知的レベルの劣化については、既に多くの識者が警鐘を鳴らしている。未曾有の世界同時不況に直面した現在、各国の対応を見てみると、彼我の「格差」がよくわかる。各国の政治家、官僚、学者、そしてマスメディアは何を問題とし、どんな論議をしているのだろうか。それに対して、わが日本は?
ケインズは『一般理論』の結びで、世の政治家や実業家は何十年も前の古い経済思想の奴隷であると書いた。本書は、「市場原理主義」か否かといったメディアが好む粗雑な議論を排し、世界標準となっている経済学の知識をわかりやすく政治家、官僚など政策に携わる人々に提供しよう狙いで、2008年末に4回にわたる対談を行い、緊急にまとめたもの。
池田氏が主に聞き手となり、池尾氏が講義するという形になっている。
内容は今回の経済危機の分析だけにとどまらず、マクロ経済学の新しいコンセンサス、エージェンシー問題、コーディネーションの失敗、政策の時間整合性など経済学的知見をフルに活用して、日本の「失われた10年」の原因分析も含めて説明している。
ケインズは『一般理論』の結びで、世の政治家や実業家は何十年も前の古い経済思想の奴隷であると書いた。本書は、「市場原理主義」か否かといったメディアが好む粗雑な議論を排し、世界標準となっている経済学の知識をわかりやすく政治家、官僚など政策に携わる人々に提供しよう狙いで、2008年末に4回にわたる対談を行い、緊急にまとめたもの。
池田氏が主に聞き手となり、池尾氏が講義するという形になっている。
内容は今回の経済危機の分析だけにとどまらず、マクロ経済学の新しいコンセンサス、エージェンシー問題、コーディネーションの失敗、政策の時間整合性など経済学的知見をフルに活用して、日本の「失われた10年」の原因分析も含めて説明している。
- 本の長さ304ページ
- 言語日本語
- 出版社日経BP
- 発売日2009/2/26
- ISBN-104822247236
- ISBN-13978-4822247232
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商品の説明
著者について
池尾和人(いけお・かずひと):
慶応義塾大学経済学部教授。1975年京都大学経済学部卒業、80年一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了。岡山大学、
京都大学を経て94年慶応義塾大学経済学部助教授に就任。
95年から現職。経済学博士。著書に『日本の金融市場と組
織』『現代の金融入門』『開発主義の暴走と保身』など。
池田信夫(いけだ・のぶお):
上武大学大学院経営管理研究科教授。1953年京都府生まれ。
東京大学経済学部を卒業後、NHK入社。1993年退職後、国際
大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て現
職。学術博士(慶應義塾大学)。著書に『電波利権 』『ウェブは資本主義を超える 』『ハイエク 知識社会の
自由主義 』など。
慶応義塾大学経済学部教授。1975年京都大学経済学部卒業、80年一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了。岡山大学、
京都大学を経て94年慶応義塾大学経済学部助教授に就任。
95年から現職。経済学博士。著書に『日本の金融市場と組
織』『現代の金融入門』『開発主義の暴走と保身』など。
池田信夫(いけだ・のぶお):
上武大学大学院経営管理研究科教授。1953年京都府生まれ。
東京大学経済学部を卒業後、NHK入社。1993年退職後、国際
大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て現
職。学術博士(慶應義塾大学)。著書に『電波利権 』『ウェブは資本主義を超える 』『ハイエク 知識社会の
自由主義 』など。
登録情報
- 出版社 : 日経BP (2009/2/26)
- 発売日 : 2009/2/26
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 304ページ
- ISBN-10 : 4822247236
- ISBN-13 : 978-4822247232
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著者について
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経済学者。1953年、京都府生まれ。東京大学経済学部を卒業後、NHK入社。93年に退職後、国際大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て、現在は株式会社アゴラブックス代表取締役、上武大学経営情報学部教授。学術博士(慶應義塾大学)。著書に『使える経済書100冊』『希望を捨てる勇気──停滞と成長の経済学』、共著に『なぜ世界は不況に陥ったのか』など。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2010年8月10日に日本でレビュー済み
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2009年5月16日に日本でレビュー済み
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日経の書評欄で目にして購入しました。
対談形式ということですが、読者へ語りかけるような文章でとっつきやすいです。
ただし、金融用語などはカタカナでの標記が多く、ネットで調べながら読むことをお薦めします。決して難解な表現をしているわけではないのでその点はご安心を。
なぜアメリカの投資銀行破綻が世界に不況を引き起こしてしまったのかをアカデミックに理解したい方にはお勧めです。
対談形式ということですが、読者へ語りかけるような文章でとっつきやすいです。
ただし、金融用語などはカタカナでの標記が多く、ネットで調べながら読むことをお薦めします。決して難解な表現をしているわけではないのでその点はご安心を。
なぜアメリカの投資銀行破綻が世界に不況を引き起こしてしまったのかをアカデミックに理解したい方にはお勧めです。
2021年5月3日に日本でレビュー済み
リーマンショック後に行われた大規模な金融緩和は2020年代に繋がっている。その意味で、リーマンショックはなぜ発生し、その後の世界経済の状況をどのように見ればよいかという問題意識を持つ人は読んでみる価値がある本だろう。
表題の「なぜ世界は不況に陥ったのか」という問いに対する回答は、一昔前であれば「需要が不足しているから」だった。しかし、経済に対する見方をわれわれはアップデートしなければならない。市場の失敗の原因をとらえて、その原因を除くためにどのような政策的対応がありうるのかという事象の根本原因を考える姿勢が経済学には求められるのだろう。その例が本書で記載されている「最近の経済学では、賃金が硬直的だということから出発するのではなくて、それよりもうちょっと手前の世界を考えて、市場の失敗、あるいはコーディネーションの失敗が起こるような外部性とか、情報の非対称性とか、何かの原因を考えることによって結果として内生的に賃金が硬直化することを示すわけです」の部分。
本書では実証分析は示されていないので、経済学的な分析が行われているとはいえない。しかし、本書を読むと、われわれはまだ十分に経済学を使いこなしていないのではないだろうかという感想を持つ。
表題の「なぜ世界は不況に陥ったのか」という問いに対する回答は、一昔前であれば「需要が不足しているから」だった。しかし、経済に対する見方をわれわれはアップデートしなければならない。市場の失敗の原因をとらえて、その原因を除くためにどのような政策的対応がありうるのかという事象の根本原因を考える姿勢が経済学には求められるのだろう。その例が本書で記載されている「最近の経済学では、賃金が硬直的だということから出発するのではなくて、それよりもうちょっと手前の世界を考えて、市場の失敗、あるいはコーディネーションの失敗が起こるような外部性とか、情報の非対称性とか、何かの原因を考えることによって結果として内生的に賃金が硬直化することを示すわけです」の部分。
本書では実証分析は示されていないので、経済学的な分析が行われているとはいえない。しかし、本書を読むと、われわれはまだ十分に経済学を使いこなしていないのではないだろうかという感想を持つ。
2009年2月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
金融危機の報道は毎日溢れかえっているものの、情報が多い分だけ、頭の中を素通りしていきます。
本書は、そういう情報を頭の中できっと体系化してくれるでしょう。高度に論理的な中身を読み進めるうちに、理論偏重の私のような院生でさえ、雑然とした部屋がきれいに整理されていくように感じました。
お二人とも常に現実への発信を続けてきた研究者です。現実と理論をうまく架橋しているし、一般人にもわかるレベルでの説明力も素晴らしい。このような時代に、こうやって一般に語りかける意思と能力を持ってこそ、本当に社会的な存在意義のある研究者といえるのではないでしょうか。
米国では超一流の学者が、はやくも熱い論争を始めています。それなのに日本で売れているのは、説明能力はあっても論理のしっかりしない金融系エコノミストの本ばかり。あとは自分の分析は出さないで人を批判ばかりする人も多いですね。
こうした書が続いて高度で白熱した議論が活発化することを期待します。
本書は、そういう情報を頭の中できっと体系化してくれるでしょう。高度に論理的な中身を読み進めるうちに、理論偏重の私のような院生でさえ、雑然とした部屋がきれいに整理されていくように感じました。
お二人とも常に現実への発信を続けてきた研究者です。現実と理論をうまく架橋しているし、一般人にもわかるレベルでの説明力も素晴らしい。このような時代に、こうやって一般に語りかける意思と能力を持ってこそ、本当に社会的な存在意義のある研究者といえるのではないでしょうか。
米国では超一流の学者が、はやくも熱い論争を始めています。それなのに日本で売れているのは、説明能力はあっても論理のしっかりしない金融系エコノミストの本ばかり。あとは自分の分析は出さないで人を批判ばかりする人も多いですね。
こうした書が続いて高度で白熱した議論が活発化することを期待します。
2015年2月13日に日本でレビュー済み
発売当初に購入したのですが、本棚に埋もれていて6年後になってやっと読みました。その意味では、金融危機のメカニズムなどだいぶわかってきている中で本書を読んだのですが、特に池尾先生の解説は極めて明確で、自分の頭の中で整理できていなかった面も本書で整理できました。他の方が指摘されているように細かい箇所で間違いはあるのかもしれませんが、これだけの内容を2009年時点で明快に解説されているのはすごいと思います。良い本の定義は「何年後、何十年後に読んでも面白い本」だと思うのですが、その意味で本書はこれを満たしています。ビジネスマンにとっても読みやすいので、今読んでも面白く感じると思います。
対談方式も読みやすさの点で良かった。本書を通じて池田先生が問いを投げかけて池尾先生が答えるパターンが多いですが、内容的にはそれで良い。申し訳ないですが池田先生のコメントは質的には池尾先生に劣る。池田先生は政治家や官僚の批判をたくさんされているのですが、感情的かつ抽象的なので、私は納得すると言うより気分が悪くなりました。「自分の考えが全部正しい」という傲慢さも見え隠れする。一方、池尾先生は、官僚は具体的にどこそこができなかったのが問題だが、しかし当時の世論は官僚にその策を実行させなかったのも事実だ、というように客観的に分析されていて共感できました。池尾先生などは大学生に教えるのもいいけれど、ビジネスエグゼクティブや政治家中心にティーチングした方が世のためになるんじゃないでしょうか。米国だとハーバード大学はケネディスクールやビジネススクールで一流のエコノミストがまさに政策実務担当者や企業のエグゼクティブを短期間プログラムで啓蒙しているわけで、日本にもそういう場が必要ではないでしょうか。
対談方式も読みやすさの点で良かった。本書を通じて池田先生が問いを投げかけて池尾先生が答えるパターンが多いですが、内容的にはそれで良い。申し訳ないですが池田先生のコメントは質的には池尾先生に劣る。池田先生は政治家や官僚の批判をたくさんされているのですが、感情的かつ抽象的なので、私は納得すると言うより気分が悪くなりました。「自分の考えが全部正しい」という傲慢さも見え隠れする。一方、池尾先生は、官僚は具体的にどこそこができなかったのが問題だが、しかし当時の世論は官僚にその策を実行させなかったのも事実だ、というように客観的に分析されていて共感できました。池尾先生などは大学生に教えるのもいいけれど、ビジネスエグゼクティブや政治家中心にティーチングした方が世のためになるんじゃないでしょうか。米国だとハーバード大学はケネディスクールやビジネススクールで一流のエコノミストがまさに政策実務担当者や企業のエグゼクティブを短期間プログラムで啓蒙しているわけで、日本にもそういう場が必要ではないでしょうか。
2010年6月2日に日本でレビュー済み
池尾和人さんと池田信夫さんの対談形式の本で、リーマン・ショック以降の不況を中心として解説されている。全体的には、やや池尾さん主導で話が進む。ケインズ経済学の生い立ちや問題点など、基礎的な部分も解説されている。
資本主義や金融工学の問題点は多々ある。しかし、結局は、人間が「歴史を忘れる」ことが問題の根源なのかもしれない。グリーンスパンの経済運営は非常にうまく行ったせいで、アメリカ人のリスク感度が徐々ににぶり、それが伏線となって大きなクラッシュを起こしてしまった、という考察はおもしろい。
読者には多少の金融常識が求められるが、池尾さんの解説はとてもわかりやすい。
資本主義や金融工学の問題点は多々ある。しかし、結局は、人間が「歴史を忘れる」ことが問題の根源なのかもしれない。グリーンスパンの経済運営は非常にうまく行ったせいで、アメリカ人のリスク感度が徐々ににぶり、それが伏線となって大きなクラッシュを起こしてしまった、という考察はおもしろい。
読者には多少の金融常識が求められるが、池尾さんの解説はとてもわかりやすい。
2009年2月27日に日本でレビュー済み
これは経済学の論理の明晰さとその勝利を明かすものなのだろうか?
現今の世界的な不況のみならず、平成大不況(失われた10年)以来、様々な経済学の首領たち(アンドレ・グリュックスマンの『思想の首領たち』を想起)が、様々な論を展開してきた。百家争鳴、まことに「価値観の争闘」である。一方がこれが科学の真理だと主張し、他方はイデオロギーだと返す。それが相互に繰り返される有様は、経済論戦やエコノミスト・ミシュランなる格付け本まで出て、一般の読者は何が本当かトンとわからん。
本書の結論は、現在の不況は日本の経済構造が改革不足のためにもたらした必然的なもので、アメリカ発の金融パニックは単なるきっかけ。円安バブルが崩壊し、日本の産業の本来持っている実力に戻ったに過ぎず、これを打破するためには民間経済のチャレンジングな投資とそれを可能にする金融市場整備、労働規制緩和(政治による規制緩和)が欠かせない。景気浮揚へは3年どころか、もっとかかるし、もっと血を見なければなるまい。現在の諸政策は、こうした経済学的知見からは逆行している。
―――というものだ。規制緩和は全然足らないし、構造改革不足がいけないのである。
そうなのか?
最早、一読者のサラリーマンには手に負えない。学者さんのなかでも、議論百出なのだ。
吉川洋の『いまこそケインズとシュンペーターに学べ』(当サイトでは予約受付中となっているが、都心の大型書店店頭で購入)では、本書でほぼ全否定されているケインズが甦ったと断言している。
吉川本でも言及されているケインズの「我々は長い眼で見れば、みな死んでしまう」という言葉は、いま目の前で死に行く人々がいるときの経済学者の処方箋を問うているのではないだろうか。
「構造改革」を座して待つしかないのだろうか? チャレンジングと言われてもなあ。勿論、これ他人事ではありません。でも、こういう態度がイケナイということなのでしょうね。
現今の世界的な不況のみならず、平成大不況(失われた10年)以来、様々な経済学の首領たち(アンドレ・グリュックスマンの『思想の首領たち』を想起)が、様々な論を展開してきた。百家争鳴、まことに「価値観の争闘」である。一方がこれが科学の真理だと主張し、他方はイデオロギーだと返す。それが相互に繰り返される有様は、経済論戦やエコノミスト・ミシュランなる格付け本まで出て、一般の読者は何が本当かトンとわからん。
本書の結論は、現在の不況は日本の経済構造が改革不足のためにもたらした必然的なもので、アメリカ発の金融パニックは単なるきっかけ。円安バブルが崩壊し、日本の産業の本来持っている実力に戻ったに過ぎず、これを打破するためには民間経済のチャレンジングな投資とそれを可能にする金融市場整備、労働規制緩和(政治による規制緩和)が欠かせない。景気浮揚へは3年どころか、もっとかかるし、もっと血を見なければなるまい。現在の諸政策は、こうした経済学的知見からは逆行している。
―――というものだ。規制緩和は全然足らないし、構造改革不足がいけないのである。
そうなのか?
最早、一読者のサラリーマンには手に負えない。学者さんのなかでも、議論百出なのだ。
吉川洋の『いまこそケインズとシュンペーターに学べ』(当サイトでは予約受付中となっているが、都心の大型書店店頭で購入)では、本書でほぼ全否定されているケインズが甦ったと断言している。
吉川本でも言及されているケインズの「我々は長い眼で見れば、みな死んでしまう」という言葉は、いま目の前で死に行く人々がいるときの経済学者の処方箋を問うているのではないだろうか。
「構造改革」を座して待つしかないのだろうか? チャレンジングと言われてもなあ。勿論、これ他人事ではありません。でも、こういう態度がイケナイということなのでしょうね。
2009年3月20日に日本でレビュー済み
テーマは標題の通り、世界が不況に陥った事態についての理由と経済学についてです。アメリカのこれまでの動きに多くのページが割かれていて、理解しやすいです。中心的な部分については他の本でも語られているようなことなのですが、対談という形式のためか、学者の本では書かれにくいざっくばらんな話も含まれていて読みやすくなっています。
もうひとつのこの本のテーマは「経済学」です。既存の、教科書に載っているフレームワークを今回の金融危機に当てはめるのではなく、日々の新たな現実によって経済学が更新されていくことを意識して、「金融危機の」ではなく、「金融危機と経済学」と題されているそうです。しかし、理論的な目新しさは特にありませんでした。さらに、それらの理論は他の代替的な理論と比べたときに、必ずしも実証的にサポートされているわけでもありません。主張は好対照をなしていますが、竹森氏の本が評判となっていることと合わせて考えてみると、世間の理論的なアプローチへの要求の高まりが伺えますが、その期待に答えられているかは疑問です。また、著者たちにとっても、アメリカの経済学者が彼岸である日本経済について実体を見ずにあれこれと言っていたのと同じように、他人事のように語られているのも気になります。
本の最後に日本経済についても語られていますが、日本にとっては今回の危機は輸出ショックなので、目新しい視点は出てきません。数年前に池尾氏が書かれた『開発主義の暴走と保身』を読んでいれば、この本をあえて読む必要はありません。前著の方が総じてよく書かれているので、そちらを読まれることをおすすめします。それと池田氏のブログを読めば、もはやこの本は必要ありません。
以上のような点から、この本をあまりおすすめすることはできませんが、アメリカのこれまでの流れを追った部分についてはよく書かれていると思いました。金融危機についての初めの1冊として読む場合には、読みやすさの点からも、よいかもしれません。電車などですらっと読むには、その他の人にも結構いい本です。
最後に、このページにある「内容紹介」は気負い過ぎの感がありますし、気にしない方がいいでしょう。
もうひとつのこの本のテーマは「経済学」です。既存の、教科書に載っているフレームワークを今回の金融危機に当てはめるのではなく、日々の新たな現実によって経済学が更新されていくことを意識して、「金融危機の」ではなく、「金融危機と経済学」と題されているそうです。しかし、理論的な目新しさは特にありませんでした。さらに、それらの理論は他の代替的な理論と比べたときに、必ずしも実証的にサポートされているわけでもありません。主張は好対照をなしていますが、竹森氏の本が評判となっていることと合わせて考えてみると、世間の理論的なアプローチへの要求の高まりが伺えますが、その期待に答えられているかは疑問です。また、著者たちにとっても、アメリカの経済学者が彼岸である日本経済について実体を見ずにあれこれと言っていたのと同じように、他人事のように語られているのも気になります。
本の最後に日本経済についても語られていますが、日本にとっては今回の危機は輸出ショックなので、目新しい視点は出てきません。数年前に池尾氏が書かれた『開発主義の暴走と保身』を読んでいれば、この本をあえて読む必要はありません。前著の方が総じてよく書かれているので、そちらを読まれることをおすすめします。それと池田氏のブログを読めば、もはやこの本は必要ありません。
以上のような点から、この本をあまりおすすめすることはできませんが、アメリカのこれまでの流れを追った部分についてはよく書かれていると思いました。金融危機についての初めの1冊として読む場合には、読みやすさの点からも、よいかもしれません。電車などですらっと読むには、その他の人にも結構いい本です。
最後に、このページにある「内容紹介」は気負い過ぎの感がありますし、気にしない方がいいでしょう。