開発者、とくにベテランのアーキテクトから見れば、本書は目新しいと思うかも知れない。
実際、私も帯の文句にひかれて購入した。確かにモデリングや開発の留意点で製造業が良く使う5ゲン(もともとはトヨタ生産方式の三現(現場、現物、現実))や戦略的アプローチでよく使われるBSCについて記述されている本は珍しいし、斬新な試みであろう。
しかし、ではと問いたくなる。そもそも「要求」とは何か。「業務の本質」とは何か。「パッケージの採用」は何を意味するのか。こういったキーワードに関する厳密な定義なしに、いきなりモデリングや開発方法論の詳細説明に入ってしまっている点が残念である。
これでは砂上の楼閣であり、実際にこの本を読んで戦略からIT構築につなげようとした場合、はたと困ってしまうであろう。要するに業務担当者(本書ではそう記述されている)と開発者で視点を共有できる事業・業務のフレームワークが提示されていないのである。
たとえば、シーケンス図でサプライチェーンを表現できるであろうか。やったことのある方は即座にNO!と言われるであろう。
製造業でアジャイル開発でSCMを構築した方も著者の中にいらっしゃるので、次作はぜひとも、「業務をいかにシステマティックに捉えるか」「捉えた業務から何を展開するのか。開発者とユーザの役割分担はどうあるべきか」「要求とは何で、それが正しいことをいかに判断する基準・方法は何か」「要求開発」から「ニーズ開発」に展開するにはどうすればよいか」というような、具体的にプロジェクトに反映できるものを期待する。コンサルタントを悪者に決め付けず、その活用方法も提示されてはどうか。事業の付加価値ではない機能を常時持つことは「ムダ」であり、コンサルタントはうまく活用できればムダを保持せず、JITで必要な知見を得られる。要は使い方である。
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要求開発~価値ある要求を導き出すプロセスとモデリング 単行本 – 2006/3/2
「要求定義」から「要求開発」へ――本書は、システムと同様、「要求」自体も「開発」するものであるという新しい考え方を提示し、これまでの「要求定義」本とは一線を画す方法論を紹介します。要求開発アライアンスが独自に考案した方法論Openthologyがベースになっており、開発の手順(プロセス)や途中過程の成果物を解説します。「開発」という複数フェーズからなるプロセスを通して、仮説と検証を繰り返しながらビジネス要求からシステム要求を導き出していきます。本書は、要求開発アライアンス発足メンバーの共同執筆による経験と知識とノウハウとメッセージにあふれた一冊。
- 本の長さ280ページ
- 言語日本語
- 出版社日経BP
- 発売日2006/3/2
- ISBN-104822282686
- ISBN-13978-4822282684
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登録情報
- 出版社 : 日経BP (2006/3/2)
- 発売日 : 2006/3/2
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 280ページ
- ISBN-10 : 4822282686
- ISBN-13 : 978-4822282684
- Amazon 売れ筋ランキング: - 726,261位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 343位一般経営工学関連書籍
- - 14,639位ビジネス実用本
- - 32,598位投資・金融・会社経営 (本)
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著者について
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平鍋健児(ひらなべけんじ)
株式会社永和システムマネジメント代表取締役社長、株式会社チェンジビジョンCTO、Scrum Inc. Japan 取締役。
福井での受託開発を続けながら、オブジェクト指向設計、組込みシステム開発、アジャイル開発を推進し、UMLエディタastah*を開発。現在、国内外で、モチベーション中心チームづくり、アジャイル開発の普及に努める。ソフトウェアづくりの現場をより生産的に、協調的に、創造的に、そしてなにより、楽しく変えたいと考えている。
2009 年から10年開催している、アジャイルジャパン初代実行委員長。
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2007年4月19日に日本でレビュー済み
「要求はもともとあるものではなく、上位の目的(ビジネス要求)をもとに合理的かつ能動的に開発するべきものである」(本書、第一章より)という主張は、変化の激しい時代だからこそ起こることではないかと感じた。従来は、現状の延長として予測可能なことも多かったが、昨今のシステム開発の現場では、予測不可能な事柄に頻繁に出くわす経験を持っている人も多いことであろう。
筆者らは、「要求開発アライアンス」という団体を立ち上げ、要求開発の方法論としてOpenthologyを考案した。すでにこのアライアンスには、50社以上、170名以上の会員が登録されているという。本書は、この「要求開発アライアンス」の発足メンバーの共同執筆(そうそうたるメンバーである)であり、Openthologyの解説(プロセスや成果物など)と実際の適用事例が述べられている。内容は、SE経験者向けで、入門書としてはやや難しいかもしれない。しかし、システム要求を明らかにするというもっとも人間的な作業を、科学的にとらえ、体系化していこうという活動は大いに賛同できる。一読に値する本だと思う。
筆者らは、「要求開発アライアンス」という団体を立ち上げ、要求開発の方法論としてOpenthologyを考案した。すでにこのアライアンスには、50社以上、170名以上の会員が登録されているという。本書は、この「要求開発アライアンス」の発足メンバーの共同執筆(そうそうたるメンバーである)であり、Openthologyの解説(プロセスや成果物など)と実際の適用事例が述べられている。内容は、SE経験者向けで、入門書としてはやや難しいかもしれない。しかし、システム要求を明らかにするというもっとも人間的な作業を、科学的にとらえ、体系化していこうという活動は大いに賛同できる。一読に値する本だと思う。