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人は原子、世界は物理法則で動く: 社会物理学で読み解く人間行動 単行本 – 2009/6/1
人間を原子と考えると、世界はこんなにわかりやすい!
金融市場の推移を予測できる経済学者はひとりもいなかったが、
物理学者であれば、それがある程度まで可能になるかもしれない、
と本書の著者、マーク・ブキャナンは言います。
つまり、社会を物理学的な視点で眺め、
人間を「原子」と見立てるのならば、
そのような社会的な難問の解決の糸口が見つかるかもしれない、
というのです。
本書ではまた、人種差別や少子化の原因、
金持ちがますます豊かになる理由など、
さまざまな問題に隠された驚くべき事実も明らかにします。
大ヒット作『複雑な世界、単純な法則』(草思社)の著者が贈る
世界観が変わること間違いなしの話題の書です。
- ISBN-104826901550
- ISBN-13978-4826901550
- 出版社白揚社
- 発売日2009/6/1
- 言語日本語
- 寸法13.4 x 2.5 x 19.8 cm
- 本の長さ310ページ
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商品の説明
抜粋
人間よりもパターンのほうが重要だとする発想を論じるなかで、ニューヨーク証券取引所などの金融市場の論理を突き止め、どのようにして何らかの考え方がひとりでに主流になって勢いを増し、だれが目論んだわけでもないのに株価の暴落と反騰が生じるのかを明らかにしたいと思う。噂、流行、異常な興奮の広がりの不思議で自動的と言ってもいい働きを見れば、人間の集団行動が驚くほど正確な数学的パターンに従っていることがわかるだろう。自民族中心主義へと駆り立てる論理を明るみに出すために、旧ユーゴスラヴィアとルワンダで起きた事件を検討し、さらに、人類の進化の歴史をはるか過去にまでさかのぼり、アフリカの草原地帯で繰り広げられた異なる集団間の果てしない争いが、人間のもっとも基本的な社会的習性----特に、まったく見知らぬ相手であっても、力を合わせたり援助の手を差し伸べたりすることができる資質----に消すことのできない痕跡をとどめていることを示すつもりである。
その過程で、人間を社会という「物質」を作る原子と見なせば、社会階級の存在、つねにごく少数の者の手に集まる富の流れなど、あらゆる人間社会に繰り返し現われるパターンの多くを説明するうえでどれほど資するところが大きいかも見ていく。現在では研究者たちはますます、人間の社会的世界を理解しようという企ては、原子がどのように集まって既知のあらゆる物質を作るのかを理解しようとする物理学の取り組みと同類のものであると見なすようになってきている。物質には、ねばねばしているものもあればつるつるしているものもあるし、電気を通すものも通さないものもある。ダイヤモンドがきらきら光るのは、ダイヤモンドを構成している原子が光るからではなく、特別なパターンを作りだす原子の集まり方のせいなのだ。構成要素ではなく、パターンがもっとも重要になる場合が多いが、同じことは人間についても言える。
本書は富、権力、政治、階級間の憎悪、人種間の分離について書いたもので、一時的なブーム、流行、暴動、共同体内に自然に生まれる好意や信頼、金融市場に押し寄せる落胆のムードと高揚感も取りあげている。語る内容は、主として、社会における驚くべき出来事----どこからともなく生じて人々の暮らしを変えてしまう事件や変化----と、われわれがそうした出来事の原因に気づく能力にひどく欠けているように思われる理由である。
(第1章「人間ではなく、パターンを考える」より)
その過程で、人間を社会という「物質」を作る原子と見なせば、社会階級の存在、つねにごく少数の者の手に集まる富の流れなど、あらゆる人間社会に繰り返し現われるパターンの多くを説明するうえでどれほど資するところが大きいかも見ていく。現在では研究者たちはますます、人間の社会的世界を理解しようという企ては、原子がどのように集まって既知のあらゆる物質を作るのかを理解しようとする物理学の取り組みと同類のものであると見なすようになってきている。物質には、ねばねばしているものもあればつるつるしているものもあるし、電気を通すものも通さないものもある。ダイヤモンドがきらきら光るのは、ダイヤモンドを構成している原子が光るからではなく、特別なパターンを作りだす原子の集まり方のせいなのだ。構成要素ではなく、パターンがもっとも重要になる場合が多いが、同じことは人間についても言える。
本書は富、権力、政治、階級間の憎悪、人種間の分離について書いたもので、一時的なブーム、流行、暴動、共同体内に自然に生まれる好意や信頼、金融市場に押し寄せる落胆のムードと高揚感も取りあげている。語る内容は、主として、社会における驚くべき出来事----どこからともなく生じて人々の暮らしを変えてしまう事件や変化----と、われわれがそうした出来事の原因に気づく能力にひどく欠けているように思われる理由である。
(第1章「人間ではなく、パターンを考える」より)
著者について
マーク・ブキャナン(Mark Buchanan)
1961年クリーブランド生まれ。物理学で博士号を取得。『ネイチャー』、『ニューサイエンティスト』等の編集者を経て、現在フリーのサイエンスライター。著書に『歴史の方程式』(早川書房)、『複雑な世界、単純な法則』(草思社)。
1961年クリーブランド生まれ。物理学で博士号を取得。『ネイチャー』、『ニューサイエンティスト』等の編集者を経て、現在フリーのサイエンスライター。著書に『歴史の方程式』(早川書房)、『複雑な世界、単純な法則』(草思社)。
阪本芳久(さかもと・よしひさ)
1950 年神奈川県生まれ。慶應義塾大学工学部卒業。出版社勤務を経て現在は翻訳業。主な訳書に、ブキャナン『複雑な世界、単純な法則』(草思社)、リンドリー『そして世界に不確定性がもたらされた』(早川書房)、アーリック『怪しい科学の見抜きかた』(共訳、草思社)など。
About this Title
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登録情報
- 出版社 : 白揚社 (2009/6/1)
- 発売日 : 2009/6/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 310ページ
- ISBN-10 : 4826901550
- ISBN-13 : 978-4826901550
- 寸法 : 13.4 x 2.5 x 19.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 387,978位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 7,324位社会学概論
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2017年11月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
よみやすく奥が深い。いま読んでもなお新鮮、というより、あれこれ類書を読みあさったあとだからこそ腑に落ちる。
2018年1月8日に日本でレビュー済み
人間は複雑な感情や思考を持ち、時に、本人でさえ、思いもつかないような行動を取ったりします。
その人間が集まって構成されるこの社会は、どれほど複雑なことでしょう。
と私は思っていたのですが、この本は、それと真逆のことを言っていて、とても新鮮でした。
もちろん、人間は複雑な存在なのですが、その集団運動はシンプルな法則で説明できる場合が多い、と言うのです。
この本の冒頭には、それを示す例として、アメリカにおける人種ごとの居住区があげられています。
根深い差別意識を反映したものだとよく批判されるわけですが、必ずしもそうではないと著者は主張します。
それを示すコンピュータシミュレーションがあります。
ランダムに2つの人種を仮想空間内に大勢配置し、ランダムに移動させるのですが、
その際、「極端な少数派にはなりたくない」という緩い制約を与えます。
例えば、自分の周りに異なる人種ばかりいると、居心地が悪くなり、同じ人種の方に移動する、というものです。
10人中1人なら居心地が悪くなるけれど、5人中1人までなら気にしない、というような緩くおおらかなものです。
このプログラムを走らせると、何回やっても、人種ごとに分かれた居住区が現れるそうです。
なるほど、これは、コンピュータシミュレーションの経験がある私も合点がいきます。
ランダムな配置の中で、居住区の卵のような領域が発生してしまうのだと思います。
そして、その卵は、次第に同じ人種を吸収し、成長していくのでしょう。
この実験は、強烈な差別意識が存在しなくても、あるいは、差別を煽る扇動者がいなくても、
誰もが持っている自然な感情‐極端な少数派にはなりたくない‐から、社会の分断が発生することを示しているのです。
つまり、誰が意図したわけでもなく、集団におけるヒトの行動パターンから自然と発生する現象かもしれないのです。
このように、この本では、集団におけるヒトを、原子のように、特定の法則に従いパターン化された存在として扱っています。
前述した実験では、ヒトは皆善人で差別意識はありませんでしたが、では、一定の割合で人種差別主義者がいたら、集団はどういう行動をとるようになるか‐この本の中盤で大変興味深いコンピュータシミュレーションが紹介されています。
そのような場合、偏見なくどのような人種とも付き合うという戦略を持った人は、偏見のある人(同じ人種としか付き合わない)よりも、うまく事を運べない(他人の協力を得られない)ということが分かりました。
そのため、当初は偏見のなかった人も、偏見のある人に習ってしまう結果となることが分かりました。
(もちろん、コンピュータシミュレーションですから、人種ごとに能力の違いは全くありません)
「ほうら、あいつらと付き合うと損するんだ」
という言葉が説得力を持ってしまう、ということですね。
とても考えさせられる実験です。
差別問題が、倫理観だけでは解決できない問題だということがよく分かります。
そして、この本で訴えていることが、もう一つ、あります。
人間は、必ずしも合理的な判断をするわけではない、ということです。
例として、株式市場が挙げられています。
人間が合理的な判断をするならば、株価の変動は、0を中心とした正規分布になるはずです。
しかし、経験的によく知られているように、株価の変動は、正規分布ではなく、べき乗分布になります。
経済学は長い間、人間を神様のごとく合理的な存在として扱ってきたため、べき乗分布の問題は長い間謎でしたが、経済学の前提に疑問を持ったある研究者がコンピュータシミュレーションにより解決したのです。
それは次のようなものです。
株式に投資する場合、ランダムにいくつかの作戦を事前に用意し、そのどれが効果的か常に検証しながら、最も良いと思われる作戦を採用するようにします。
そして、一定の期間、その作戦は有効で、利益をもたらしますが、その作戦が利益を上げていることが分かると、皆その作戦を採用するため、最終的には、その作戦を採用した人は皆大損してしまいます。
そして、ごくまれに、市場の大暴落まで発生したそうです。
大事件や戦争など全くないにも関わらず。
そして、この実験で得られた株式市場の変動は、実際の株式市場のそれと近いべき乗分布だったのです。
つまり、全体が見えない場合、ヒトは合理的な判断はできず、周囲に同調したり、反発したり、といった行動を取り、皮肉にも、それが全体のダイナミズムを生んでいるというわけです。
そして、コンピュータシミュレーションでも、(ヒトは全く同じ能力にも関わらず)貧富の差は発生し、その分布は実際のそれと良く似たものだったそうです。
つまり、ヒトは、神様のような神秘的な存在ではなく、動物の一種に過ぎないのだ、ということですね。
おそらく、西洋では、ヒトは特別、という意識が強いので、このような主張が新鮮に感じるのでしょう。
著者も、個人としてのヒトが複雑な存在であることは認めているのですが、集団を扱う場合、統計力学的な手法でヒトをパターン化して近似することが有効だと言いたいのだと思います。
私も、院生時代、原子核理論を研究していたのですが、陽子や中性子間の相互作用(核力、強い力とも言います)は非常に複雑で扱いにくいのですが、陽子や中性子が集団運動する原子核では、平均場近似という大胆な近似でパターン化する手法が非常に有効だったことを思い出しました。
もしかすると、ヒトの知能も、シンプルなパターンの集合に過ぎないのかもしれませんね。
そうは思いたくありませんが。
その人間が集まって構成されるこの社会は、どれほど複雑なことでしょう。
と私は思っていたのですが、この本は、それと真逆のことを言っていて、とても新鮮でした。
もちろん、人間は複雑な存在なのですが、その集団運動はシンプルな法則で説明できる場合が多い、と言うのです。
この本の冒頭には、それを示す例として、アメリカにおける人種ごとの居住区があげられています。
根深い差別意識を反映したものだとよく批判されるわけですが、必ずしもそうではないと著者は主張します。
それを示すコンピュータシミュレーションがあります。
ランダムに2つの人種を仮想空間内に大勢配置し、ランダムに移動させるのですが、
その際、「極端な少数派にはなりたくない」という緩い制約を与えます。
例えば、自分の周りに異なる人種ばかりいると、居心地が悪くなり、同じ人種の方に移動する、というものです。
10人中1人なら居心地が悪くなるけれど、5人中1人までなら気にしない、というような緩くおおらかなものです。
このプログラムを走らせると、何回やっても、人種ごとに分かれた居住区が現れるそうです。
なるほど、これは、コンピュータシミュレーションの経験がある私も合点がいきます。
ランダムな配置の中で、居住区の卵のような領域が発生してしまうのだと思います。
そして、その卵は、次第に同じ人種を吸収し、成長していくのでしょう。
この実験は、強烈な差別意識が存在しなくても、あるいは、差別を煽る扇動者がいなくても、
誰もが持っている自然な感情‐極端な少数派にはなりたくない‐から、社会の分断が発生することを示しているのです。
つまり、誰が意図したわけでもなく、集団におけるヒトの行動パターンから自然と発生する現象かもしれないのです。
このように、この本では、集団におけるヒトを、原子のように、特定の法則に従いパターン化された存在として扱っています。
前述した実験では、ヒトは皆善人で差別意識はありませんでしたが、では、一定の割合で人種差別主義者がいたら、集団はどういう行動をとるようになるか‐この本の中盤で大変興味深いコンピュータシミュレーションが紹介されています。
そのような場合、偏見なくどのような人種とも付き合うという戦略を持った人は、偏見のある人(同じ人種としか付き合わない)よりも、うまく事を運べない(他人の協力を得られない)ということが分かりました。
そのため、当初は偏見のなかった人も、偏見のある人に習ってしまう結果となることが分かりました。
(もちろん、コンピュータシミュレーションですから、人種ごとに能力の違いは全くありません)
「ほうら、あいつらと付き合うと損するんだ」
という言葉が説得力を持ってしまう、ということですね。
とても考えさせられる実験です。
差別問題が、倫理観だけでは解決できない問題だということがよく分かります。
そして、この本で訴えていることが、もう一つ、あります。
人間は、必ずしも合理的な判断をするわけではない、ということです。
例として、株式市場が挙げられています。
人間が合理的な判断をするならば、株価の変動は、0を中心とした正規分布になるはずです。
しかし、経験的によく知られているように、株価の変動は、正規分布ではなく、べき乗分布になります。
経済学は長い間、人間を神様のごとく合理的な存在として扱ってきたため、べき乗分布の問題は長い間謎でしたが、経済学の前提に疑問を持ったある研究者がコンピュータシミュレーションにより解決したのです。
それは次のようなものです。
株式に投資する場合、ランダムにいくつかの作戦を事前に用意し、そのどれが効果的か常に検証しながら、最も良いと思われる作戦を採用するようにします。
そして、一定の期間、その作戦は有効で、利益をもたらしますが、その作戦が利益を上げていることが分かると、皆その作戦を採用するため、最終的には、その作戦を採用した人は皆大損してしまいます。
そして、ごくまれに、市場の大暴落まで発生したそうです。
大事件や戦争など全くないにも関わらず。
そして、この実験で得られた株式市場の変動は、実際の株式市場のそれと近いべき乗分布だったのです。
つまり、全体が見えない場合、ヒトは合理的な判断はできず、周囲に同調したり、反発したり、といった行動を取り、皮肉にも、それが全体のダイナミズムを生んでいるというわけです。
そして、コンピュータシミュレーションでも、(ヒトは全く同じ能力にも関わらず)貧富の差は発生し、その分布は実際のそれと良く似たものだったそうです。
つまり、ヒトは、神様のような神秘的な存在ではなく、動物の一種に過ぎないのだ、ということですね。
おそらく、西洋では、ヒトは特別、という意識が強いので、このような主張が新鮮に感じるのでしょう。
著者も、個人としてのヒトが複雑な存在であることは認めているのですが、集団を扱う場合、統計力学的な手法でヒトをパターン化して近似することが有効だと言いたいのだと思います。
私も、院生時代、原子核理論を研究していたのですが、陽子や中性子間の相互作用(核力、強い力とも言います)は非常に複雑で扱いにくいのですが、陽子や中性子が集団運動する原子核では、平均場近似という大胆な近似でパターン化する手法が非常に有効だったことを思い出しました。
もしかすると、ヒトの知能も、シンプルなパターンの集合に過ぎないのかもしれませんね。
そうは思いたくありませんが。
2022年9月18日に日本でレビュー済み
著者の『歴史の方程式(歴史は「べき乗則」で動くで再出版)』『複雑な世界、単純な法則』に続く「べき乗則」の本です。
本書では「べき乗則」を社会現象にあてはめ、(著者が選定した)社会現象は「べき乗則」で説明できるとし、様々な解説を試みています。
既存の社会科学の成果では社会現象をモデル化することはできないと結論づけ(いいすぎの感はありますが、確かに動的なモデル化はできていないようです)、物理学の知見である「べき乗則」を社会科学でも上手く活用すべきと提言しています。
実際に本書で提示された社会現象では「べき乗則」は上手く当てはまりますし、経済学ではブライアン・アーサーらが複雑系理論を取り入れることに孤軍奮闘していますので、社会科学の世界ではこれからもっと注目され、研究が進んでいくのだと思われます。
社会現象の複雑性はもともと人間の複雑性に起因するとされてきましたが(これからもそうだと思いますが)、人間の複雑性を持ちださずに説明できる部分があるのであれば、それはそれで秀逸な知見なのだと思います。
ただ残念なのは、社会現象が「べき乗則」で説明『できる』ことは説明していますが、『なぜ』「べき乗則」となるのかや、「べき乗則」を『いかに』政策に活かしていくのか、については説明がありません。
社会科学は社会現象を理解するだけでなく、よりよき政策を立案することも目的でしょうから、このあたりの解説が欲しかったところです。
それでも取り上げられた社会現象については見事に「べき乗則」でモデル化できているようですので、本書はそれだけでも価値あるものといえるでしょう。
2010/4/16読了
本書では「べき乗則」を社会現象にあてはめ、(著者が選定した)社会現象は「べき乗則」で説明できるとし、様々な解説を試みています。
既存の社会科学の成果では社会現象をモデル化することはできないと結論づけ(いいすぎの感はありますが、確かに動的なモデル化はできていないようです)、物理学の知見である「べき乗則」を社会科学でも上手く活用すべきと提言しています。
実際に本書で提示された社会現象では「べき乗則」は上手く当てはまりますし、経済学ではブライアン・アーサーらが複雑系理論を取り入れることに孤軍奮闘していますので、社会科学の世界ではこれからもっと注目され、研究が進んでいくのだと思われます。
社会現象の複雑性はもともと人間の複雑性に起因するとされてきましたが(これからもそうだと思いますが)、人間の複雑性を持ちださずに説明できる部分があるのであれば、それはそれで秀逸な知見なのだと思います。
ただ残念なのは、社会現象が「べき乗則」で説明『できる』ことは説明していますが、『なぜ』「べき乗則」となるのかや、「べき乗則」を『いかに』政策に活かしていくのか、については説明がありません。
社会科学は社会現象を理解するだけでなく、よりよき政策を立案することも目的でしょうから、このあたりの解説が欲しかったところです。
それでも取り上げられた社会現象については見事に「べき乗則」でモデル化できているようですので、本書はそれだけでも価値あるものといえるでしょう。
2010/4/16読了
2020年11月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
変数は、
・自然界環境の変動の系 ( べき乗分布で発生するような事象)
・生存バイアスで生き残っている人の分離と、その性向による少数派の密着化
と挙げられるであろうか。
本書では局所論である実験内容が多く述べられている。
宗教等のような主観解釈も生存バイアスの中の一種といえる。
資本主義というシステムの中では、
歴史は循環サイクルを辿るように思われるのだが。
・自然界環境の変動の系 ( べき乗分布で発生するような事象)
・生存バイアスで生き残っている人の分離と、その性向による少数派の密着化
と挙げられるであろうか。
本書では局所論である実験内容が多く述べられている。
宗教等のような主観解釈も生存バイアスの中の一種といえる。
資本主義というシステムの中では、
歴史は循環サイクルを辿るように思われるのだが。
2016年3月7日に日本でレビュー済み
文句なしに面白い。
もとネイチャー編集者による、行動経済学、エージェントベースシミュレーションのまとめ。
しかし「社会物理学」と呼ぶには原理や基礎方程式があまりにも貧弱で、理論的な洗練もされていない。
単に「少ない仮定をもとに多くの複雑現象を説明する」ということの「たとえ」として物理学といっているにすぎない。
引用もちゃんとあり、より高度な教科書に進むまえの入門編としてとてもよかった。
もとネイチャー編集者による、行動経済学、エージェントベースシミュレーションのまとめ。
しかし「社会物理学」と呼ぶには原理や基礎方程式があまりにも貧弱で、理論的な洗練もされていない。
単に「少ない仮定をもとに多くの複雑現象を説明する」ということの「たとえ」として物理学といっているにすぎない。
引用もちゃんとあり、より高度な教科書に進むまえの入門編としてとてもよかった。
2012年6月26日に日本でレビュー済み
これは面白い!
いじめだの宗教間での軋轢だの、その理由を個人や社会、
歴史に由来させなくても説明できてしまうという本。
それは自分と他者との違いを認識しているから。
凄く大雑把な把握だが、あの人は自分ではないという
文にするとマヌケでさえある事実が同質の者の近くに有りたいという欲求に
そうと、居住地が分離していったりするのだ。
そして行動に対する制約が少なければ少ないほど、
分離は進む。一度手に入れた自由さを行使することができない状況に自ら
戻ることはありえないので、個人レベル以上の強制力がない限り
「誰もが仲良く暮らしていたあの頃」は無理だ。
今は情報の取捨選択が偏りとなって、自分の属する何かが善である云々と
強化する形に進んでいる。互いが互いを分かり合う必要もないとなれば
知ろうともしないだろう。
心理学系生物学系とも違うスタンスが新鮮な「社会物理学」
経済学者が想定している人間像に一番当てはまっていたのが
経済学者だった、というのが爆笑。うん、そこまで合理的じゃないって、普通。
いじめだの宗教間での軋轢だの、その理由を個人や社会、
歴史に由来させなくても説明できてしまうという本。
それは自分と他者との違いを認識しているから。
凄く大雑把な把握だが、あの人は自分ではないという
文にするとマヌケでさえある事実が同質の者の近くに有りたいという欲求に
そうと、居住地が分離していったりするのだ。
そして行動に対する制約が少なければ少ないほど、
分離は進む。一度手に入れた自由さを行使することができない状況に自ら
戻ることはありえないので、個人レベル以上の強制力がない限り
「誰もが仲良く暮らしていたあの頃」は無理だ。
今は情報の取捨選択が偏りとなって、自分の属する何かが善である云々と
強化する形に進んでいる。互いが互いを分かり合う必要もないとなれば
知ろうともしないだろう。
心理学系生物学系とも違うスタンスが新鮮な「社会物理学」
経済学者が想定している人間像に一番当てはまっていたのが
経済学者だった、というのが爆笑。うん、そこまで合理的じゃないって、普通。
2009年11月9日に日本でレビュー済み
「人間世界では、個人に通用する法則はないかもしれないが、それは、
人間集団に通用する法則がないことを意味するものではない(『歴史の方程式』)」を踏まえた新作。
平均や分散(標準偏差)をもった正規分布と違って、
系に特徴的なスケールを決めることができない、スケールフリー(尺度のない)な "べき乗則" の
面白さを教えていただいた『歴史の方程式』には、物凄い興奮を覚えたものですが、本書には落胆。
一番疑問を覚えたのは、245頁の記述・・・
> ベキ乗則が自然に出現する地殻やインターネットなどの系が平衡状態にないことは明らかで、
> こうした系はいつまでも進化しつづけ、けっして一定不変の状態に落ち着くことがない。
著者は、非平衡開放系における散逸構造(プリゴジン)を指していると思われるが、
アルバート=ラズロ・バラバシ著『新ネットワーク思考』、マーク・ブキャナン著『歴史の方程式』、
スティーヴン・ストロガッツ著『SYNC』で言及してきたのは、相転移(平衡孤立系)のはずである。
そもそも、べき乗則に根拠を与えた「スケール不変性(ケネス・ウィルソン)」は、相転移を前提としているのだ。
自己組織化にも2種類あることを混同しているとしか思えない・・・ 残念です。
人間集団に通用する法則がないことを意味するものではない(『歴史の方程式』)」を踏まえた新作。
平均や分散(標準偏差)をもった正規分布と違って、
系に特徴的なスケールを決めることができない、スケールフリー(尺度のない)な "べき乗則" の
面白さを教えていただいた『歴史の方程式』には、物凄い興奮を覚えたものですが、本書には落胆。
一番疑問を覚えたのは、245頁の記述・・・
> ベキ乗則が自然に出現する地殻やインターネットなどの系が平衡状態にないことは明らかで、
> こうした系はいつまでも進化しつづけ、けっして一定不変の状態に落ち着くことがない。
著者は、非平衡開放系における散逸構造(プリゴジン)を指していると思われるが、
アルバート=ラズロ・バラバシ著『新ネットワーク思考』、マーク・ブキャナン著『歴史の方程式』、
スティーヴン・ストロガッツ著『SYNC』で言及してきたのは、相転移(平衡孤立系)のはずである。
そもそも、べき乗則に根拠を与えた「スケール不変性(ケネス・ウィルソン)」は、相転移を前提としているのだ。
自己組織化にも2種類あることを混同しているとしか思えない・・・ 残念です。