かつて福武書店(現:ベネッセ)から文庫だったものを読んだ際、作品と生理が合わず読むのを止めてしまった記憶がある。だが、おそらく十数年ぶりに読んでみてあまりに素晴らしいので驚いている。他のレビュアの方の指摘にあるようこの作品は内容に立ち入るレビューは避けるべきだ。スティーブ・エリクソンの重厚で力感あるれる文体によって不穏な響きをたてながら小説は進んでゆく。この作品の力は我々の「知」ではなく「生理」の根源を揺さぶる。現在進行形の重層的な言葉は、読み手である私達の作品を読むことと生きる事を完全に合致させる。小説を読みながら『この作品とともに生きた』と感じたのは故・中上健次氏の『地の果て至上の時』以来の体験だ。
若い時は感受性が豊かで小説を読む印象も細やか、であるかのように言われるが-僕個人の経験則だが-ある年齢を経てからの方が小説を読む体験は、何故か深くなるように思える。
この年齢になってから本作を読み直して良かった。そう思える不穏で幸福(?)な読書体験だった。
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黒い時計の旅 単行本 – 1990/10/1
スティーヴ エリクソン
(著),
柴田 元幸
(翻訳)
- 本の長さ284ページ
- 言語日本語
- 出版社ベネッセコーポレーション
- 発売日1990/10/1
- ISBN-104828840087
- ISBN-13978-4828840086
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登録情報
- 出版社 : ベネッセコーポレーション (1990/10/1)
- 発売日 : 1990/10/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 284ページ
- ISBN-10 : 4828840087
- ISBN-13 : 978-4828840086
- Amazon 売れ筋ランキング: - 297,327位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2011年7月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2018年5月28日に日本でレビュー済み
面白かったけど疲れるな。平行世界が滅茶苦茶にもつれ合う。そしてちりばめられたストーリーが終盤つながっていく。
2010年4月24日に日本でレビュー済み
人間という生き物が持ちうる想像力の凄みは、『黒い時計の旅』でひとつの到達点を見せる。
本書があまりに面白すぎて、私は本当に参った。小説を「お金を払ってでも聞くに値する与太話」と定義するなら、私はこの与太話を、上等の嗅ぎタバコ入れに収めて持ち歩きたい。いつでもそのエッセンスを嗅いで恍惚とした気分になれるように。
1945年以降もヒトラーが生きている、パラレルワールド。「あちら側」と現実の20世紀を往来する主人公。「それ何ていう姫ちゃんのリボン?」。違う、全然違う。こちらの姫ちゃんは、足の付け根に世界の中心がある、グロテスクな大男だ。おまけに、ナチス総統閣下専用のポルノグラファーだ。
この本がすごいのは、この荒唐無稽な設定が単なる掴みに過ぎないところ。小説の魅力的なあらすじに胸を膨らませて、実際に読んでみたらがっかりした、という経験は山ほどある。この本は、全く逆。事前に期待していた以上の興奮を与えてくれる。人が持ちうるあらゆる欲望が跳梁跋扈する。次の一文字が気になって仕方が無い、巧みにこちらを酔わせる筆致。読み手のペースはどんどん崩されていく。
それでいて最後は、胸がしめつけられるようで、やりきれない。人類二大徒労である、恋愛と戦争が大きな軸になっているからだろう。他人を乞うことは、正義を標榜することは、とてもむなしい。わかっていることだけど、それを見事に見せつけられると、コンプレックスを否応なく映す鏡の前で途方に暮れたような気分になる。そのような欲があるからこそ、このような素晴らしい物語もまた、生まれ得るのだろうけど。
理性は現実と折り合いをつけるためにある。感性は、現実を易々と跳躍するためにある。モノなんかで、人間はトべない。欲望という跳ね台を踏み、わたしたちはおのれの頭だけを使って、信じられない高みまでトリップすることが、できる。それを痛感させられる小説だ。(byちゅら@<おとなの社会科>)
本書があまりに面白すぎて、私は本当に参った。小説を「お金を払ってでも聞くに値する与太話」と定義するなら、私はこの与太話を、上等の嗅ぎタバコ入れに収めて持ち歩きたい。いつでもそのエッセンスを嗅いで恍惚とした気分になれるように。
1945年以降もヒトラーが生きている、パラレルワールド。「あちら側」と現実の20世紀を往来する主人公。「それ何ていう姫ちゃんのリボン?」。違う、全然違う。こちらの姫ちゃんは、足の付け根に世界の中心がある、グロテスクな大男だ。おまけに、ナチス総統閣下専用のポルノグラファーだ。
この本がすごいのは、この荒唐無稽な設定が単なる掴みに過ぎないところ。小説の魅力的なあらすじに胸を膨らませて、実際に読んでみたらがっかりした、という経験は山ほどある。この本は、全く逆。事前に期待していた以上の興奮を与えてくれる。人が持ちうるあらゆる欲望が跳梁跋扈する。次の一文字が気になって仕方が無い、巧みにこちらを酔わせる筆致。読み手のペースはどんどん崩されていく。
それでいて最後は、胸がしめつけられるようで、やりきれない。人類二大徒労である、恋愛と戦争が大きな軸になっているからだろう。他人を乞うことは、正義を標榜することは、とてもむなしい。わかっていることだけど、それを見事に見せつけられると、コンプレックスを否応なく映す鏡の前で途方に暮れたような気分になる。そのような欲があるからこそ、このような素晴らしい物語もまた、生まれ得るのだろうけど。
理性は現実と折り合いをつけるためにある。感性は、現実を易々と跳躍するためにある。モノなんかで、人間はトべない。欲望という跳ね台を踏み、わたしたちはおのれの頭だけを使って、信じられない高みまでトリップすることが、できる。それを痛感させられる小説だ。(byちゅら@<おとなの社会科>)
2014年12月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
純文学作家の描くプロテウス・オペレーション!!…つまりゴミ。
文学系の悪いところと、SFの悪いところを融合した悪夢の一冊だった。
映像系の現代芸術ってあるじゃないですか。
こう、意味不明な映像が、意味不明なパターンで流れ続けるやつ。
あれに似てる。
アートの世界に与えた影響は大きいけど、一般人からしたらまったく意味不明な感じ。
コカインをやりながら書いてやったぜヒャッハー!な感じ。
文学系の悪いところと、SFの悪いところを融合した悪夢の一冊だった。
映像系の現代芸術ってあるじゃないですか。
こう、意味不明な映像が、意味不明なパターンで流れ続けるやつ。
あれに似てる。
アートの世界に与えた影響は大きいけど、一般人からしたらまったく意味不明な感じ。
コカインをやりながら書いてやったぜヒャッハー!な感じ。
2016年3月31日に日本でレビュー済み
今年開かれた「東京国際文芸フェス」の新聞記事を読みスティーヴ・エリクソンという作家がいることを知った。一番おもしろそうなこの小説を読んだら期待した以上の傑作でした。途中で語り手が女性に代わったところは、少しまどろっこしかったですが、終盤の逃避行は最高に面白いです。
2006年8月3日に日本でレビュー済み
冒頭から読者を圧倒する鮮烈なイメージと混交するストーリーは、登場人物たちを時の狭間で翻弄する。
そして彼らがついに家路に着いたとき、歴史は語られることで生まれるのだと読者は思い知らされる。
物語への、歴史への妄想的欲望が炸裂する傑作。
祝・復刊!
そして彼らがついに家路に着いたとき、歴史は語られることで生まれるのだと読者は思い知らされる。
物語への、歴史への妄想的欲望が炸裂する傑作。
祝・復刊!
2011年9月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私にはこの本の良さが分からない。読み進めるのが苦痛でした。
レビューでの評価が高いので読んでみたが、実際に書店で現物をみていればパラパラと中味を見て購入をためらったであろう。通販の難しい点の一つ。
一般人にはお勧めしません。
レビューでの評価が高いので読んでみたが、実際に書店で現物をみていればパラパラと中味を見て購入をためらったであろう。通販の難しい点の一つ。
一般人にはお勧めしません。
2013年10月10日に日本でレビュー済み
戦争の世紀に翻弄される人類を描いたと思われる作品。まず、船頭の話から始まり、その次に戦時下でのドイツでのある人物が辿る数奇な運命が語られていく・・・というお話。
ここで著者が何を描こうとしてかははっきり言って私には手にあまりますが、20世紀をその個人的な幻視で解体、再構築してみせたのではないかとおもいましたがどうでしょうか。主要登場人物にヒットラーらしき人物を配しながらも史実などは無視して勝手な使い方をしている所をみるとそう思わざるを得ません。そしてここで登場人物が書かされているのがポルノということで、戦後社会がエロに走ったことも踏まえて書いているらしいです。題名から内容を要約してみると20世紀全体を黒い時計と見立てて、暗雲たれこめる昏い時代にその歯車のなかで生きざるを得ない、前に進まざるを得ない状況に立ち至った人類の悲劇を独自の視点の元、書いたエリクソンによる20世紀史に思えました。
分量は違うけど、ピンチョンでいえば「V.」にあたる質量とも膨大な作品。機会があったら読まれよ。
ここで著者が何を描こうとしてかははっきり言って私には手にあまりますが、20世紀をその個人的な幻視で解体、再構築してみせたのではないかとおもいましたがどうでしょうか。主要登場人物にヒットラーらしき人物を配しながらも史実などは無視して勝手な使い方をしている所をみるとそう思わざるを得ません。そしてここで登場人物が書かされているのがポルノということで、戦後社会がエロに走ったことも踏まえて書いているらしいです。題名から内容を要約してみると20世紀全体を黒い時計と見立てて、暗雲たれこめる昏い時代にその歯車のなかで生きざるを得ない、前に進まざるを得ない状況に立ち至った人類の悲劇を独自の視点の元、書いたエリクソンによる20世紀史に思えました。
分量は違うけど、ピンチョンでいえば「V.」にあたる質量とも膨大な作品。機会があったら読まれよ。