本邦初の仏教説話集である『日本霊異記』を、その編者・景戒の思想を表現した作品として内在的に読み込み、そこから独自の見解をいくつか導き出した本である。霊異記には、一見すると「仏教説話」のカテゴリーに収まらないようなお話が複数含まれている。著者はこれを、同書をとりまく時代的な問題として解釈したり、説話集としての面白さを追及した結果として説明したりするのではなく、それは景戒が、「日本国」に固有の様式であらわれている仏教的因果のかたちを、この国で生きる読者に示し、そうすることで彼らを仏法に導こうとしたことの帰結である、という、景戒の抱えていた思想的な課題として捉える。そしてそうした前提から、この独自の「仏教説話」集が、読者に対して具体的にどのようなメッセージを届けているのかを、丁寧に考察していく。
霊異記には、「仏」や「聖人」ではないふつうの人間=「凡夫」である読者らが、「'今・ここ」の肉体に限定されながら生きていることを自覚させるための不思議な話に満ちている。あるいは、「'今・ここ'」で様々な因果の網の目にとらわれながら世界に対峙している自分という存在の、その不思議さに気付くための話がたくさんある。そして、それらの話にはしばしば、「聖」としての天皇の姿が、「凡夫」と「仏」をつなぐ存在としてあらわれてくる。「日本国」において人が仏の縁に覚醒するとき、そこでは天皇の存在が極めて重要な役割を果たす場合が多い。それが、景戒の考えた「日本国」における仏法の本質の一種であった。
古代において「日本」と「仏教」をつないだものとは何であったか。あくまでも思想史的なアプローチからの研究書であるが、こうした問いについて考える際には非常に多くの示唆を与えてくれる作品であろう。
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仏と天皇と「日本国」――『日本霊異記』を読む 単行本 – 2013/12/13
伊藤 由希子
(著)
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822年頃、薬師寺の僧侶・景戒の手で編まれた説話集『日本霊異記』。雄略-嵯峨天皇時代の日本の説話を漢文で著したものである。表面上は因果応報的な仏教思想を読み取り難い説話も少なくないが、景戒には釈迦の在世から遠く隔たった「末法辺土」である日本において、自国の説話を例に仏の教えを広めようとする意図があった。また、各説話に天皇の治世が明記されるなど、仏の教えと人々を媒介する存在として天皇が意識されている。『霊異記』原文に平易な現代語訳を付し「日本国」「天皇」というキーワードを元に『霊異記』に表れた景戒の思想を読み解いていく。
- 本の長さ260ページ
- 言語日本語
- 出版社ぺりかん社
- 発売日2013/12/13
- ISBN-104831513695
- ISBN-13978-4831513694
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商品の説明
出版社からのコメント
日本最初の仏教説話集『日本霊異記』を分析し、仏の教えと人々をつなぐ天皇という存在に注目しながら、日常の背後に広がる因果応報と、聖なる存在・作者・各説話がとりもつ「縁」の重層構造を読み解く。
著者について
伊藤 由希子(イトウ・ユキコ)
1975年、神奈川県生。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。現在、東京大学大学院人文社会系研究科死生学応用倫理センター研究員。専攻―倫理学・日本思想史。
論文―「「聖」と「凡人」」(『倫理学年報』第58集)「死生を位置づけるということ」(『死生学研究特集号「東アジアの死生学へ」III』)「日本女性の生のかたち」(『死生学・応用倫理研究』第18号)。
1975年、神奈川県生。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。現在、東京大学大学院人文社会系研究科死生学応用倫理センター研究員。専攻―倫理学・日本思想史。
論文―「「聖」と「凡人」」(『倫理学年報』第58集)「死生を位置づけるということ」(『死生学研究特集号「東アジアの死生学へ」III』)「日本女性の生のかたち」(『死生学・応用倫理研究』第18号)。
登録情報
- 出版社 : ぺりかん社 (2013/12/13)
- 発売日 : 2013/12/13
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 260ページ
- ISBN-10 : 4831513695
- ISBN-13 : 978-4831513694
- Amazon 売れ筋ランキング: - 493,003位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 3,749位仏教 (本)
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2013年12月19日に日本でレビュー済み
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2014年1月2日に日本でレビュー済み
震災後、あらためて日本人は、この世界は科学や近代合理では語りきれないものであることを痛感した。が、かといって、ひとは、不合理・不条理のままでは生きることはできない。何ほどかであれ「ことわり(理)」のようなものを見いだし、語ることによってのほか生きることはできないからである。
1200年前、時は末法、場は辺土のこの国に新たな「ことわり」を見いだそうとした『日本霊異記』の編纂者、「景戒の問いは、そのまま現代を生きるわたしたち自身の問いでもあるだろう」(著者「あとがき」より)。「霊異」とは語りえない「ことわり」の謂いなのである。
仏教と天皇という、現代では重ねにくいふたつの事柄をキーワードに「日本国」の「霊異」を読み解こうとした、この『日本霊異記』論は、それ自体が一個の魅力的な「物語」でもあるように思う。
1200年前、時は末法、場は辺土のこの国に新たな「ことわり」を見いだそうとした『日本霊異記』の編纂者、「景戒の問いは、そのまま現代を生きるわたしたち自身の問いでもあるだろう」(著者「あとがき」より)。「霊異」とは語りえない「ことわり」の謂いなのである。
仏教と天皇という、現代では重ねにくいふたつの事柄をキーワードに「日本国」の「霊異」を読み解こうとした、この『日本霊異記』論は、それ自体が一個の魅力的な「物語」でもあるように思う。