戦後の高度経済成長期においては、大きく発展に寄与した日本型システムが存在していた。システムとしての問題点があったにせよ、問題にもならないような時代だった。企業は生産量を増大し、個人は可処分所得を無限大に拡大していくように思えた。
でも、現在は右肩あがりの時代ではなく、そのような太平楽な時代が再来するなんて誰も思っていない。いつから、どこからシステムと私たちと時代がズレ始めたのだろう。この居心地の悪さは、どこからやってくるのだろう。
そんな問題意識と、時代に対する漠然とした不安がある人にお薦めできる本だと思いました。各論は著者が日常で直面した出来事や、知見したニュースからはじまり、それらに感じる不満やイライラ感が話題として取りあげられています。そこでおわれば単なる愚痴ですが、「何が不満の種で、その不満の種を生み出している原因はなにか、そしてそれはどうすれば改善する可能性があるのか」という点を思考しています。かなり読みやすい上に、自分の時代に対する不満の要因のひとつを知ることが出来た気がしました。また、著者の思考の過程がわかりやすくて、論証するという行為に関しても大変参考になりました。
普段の生活の中で、人の不満や愚痴に耳を傾けるのはしんどいし、無意味であることが多いため、耳をふさぐか相手の口を閉ざすかしていましたが、反省しました。愚痴の背景にあるものに注意を払えるようになれれば、愚痴も同時代の問題点を思考よる機会になるのだと、教えられたからです。
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