今市子先生は「百鬼夜行抄」など怪奇幻想作品から入りました。けれどそちら系で出版されているものはすべて読みつくして、今市子ロスに落ちいってしまい、仕方ないから手を出したＢＬものでした。が・・・これ、最高です、本当におもしろいです。
父親が自分はゲイだと目覚めてしまい、両親が離婚した直人は母親と2人暮らし。両親は話し合って円満に離婚したので今でも親友のような間柄。
その父親は若い美男の恋人、悟郎と結婚したくて入籍、つまり戸籍上では養子縁組をしたので、建前上、妻（悟郎）は息子ということになっています（ああ、ややこしい・・）。
ガールフレンドの手前、直人は悟郎を義理の兄だと嘘をつくはめに。その後、「同性愛のような異常なことは許せない、直さなければならない」と主張するエリート商社マンの悟郎の兄ハジメが現れ、2人の邪魔をしますが、「独善的すぎる」と怒った直人の母親にボロクソにけなされ、痛いところを突かれて退散。実は彼自身も、離婚問題を抱えて人生初の挫折に直面していました。
もし現実にことんなことがあればかなり深刻ムードになってしまうと思うのですが、悟郎の姉妹たちや母親はみんな変人だし、さめた目線で親族一同のごたごたを見ているハジメの幼い娘も変わっていて、登場人物たちがみんな一癖あって笑えます。
最近、ＬＧＢＴや同性婚、そして夫婦別姓問題などがよく取り上げられていますが、この作品を読んでいると、これらに対する頑なで封建的な考えを笑い飛ばしたくなります。同性でも異性でも、家族で姓が同じだろうが違っていようが、それがそんなに重大か？大切なのは表面的なことよりも、つまりは人と人の心の繋がりじゃないかと思ってしまいました。
ここに出てくる家族たちを見ていたら、悩んでいる人たちにも「大丈夫、すべてうまくいくよ」と言ってあげたくなります。とても元気がもらえる作品です。
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