本書では、太平洋戦争時に韓国併合という戦争犯罪を犯した日本が、創氏改名など相手国の歴史を踏みにじる野蛮な政策を行い、韓国の人々を「日本国民」として教育し日本帝国への忠誠を吹き込み、戦争にまで動員した挙句ぼろ布のように使い捨て、「日本国民」であるはずの人々を賠償に置いて日本人と差別し、戦後まともにその事実と向き合ってこなかったどころか自分たちに不都合な事実は隠蔽し責任を認めないまま押し通すという、いまにも通じるような日本人として恥ずべき歴史について書かれています。
私も不勉強で、事実そのものを知らない事件がいくつもあり、反省させられました。
目次
はじめに
一 日本国と日本人に求めること
二 戦争に動員した朝鮮人に関する諸問題
三 債権の確認
1 遺族扶助料等
2 浮島丸事件死亡者への弔慰金
四 日本での裁判について
1 浮島丸事件訴訟
2 光州千人訴訟
3 朝鮮人被爆者
4 樺太に置き去りにされた朝鮮人
5 朝鮮人BC級「戦犯」
6 中国籍朝鮮人のシベリア抑留訴訟
五 日本の論理ー請求権協定の壁
1 サンフランシスコ平和協定
2 日韓請求権協定
3「請求権協定で解決済み」
4「解決済み」の矛盾
六 半壊した請求権協定の壁
1 請求権協定と個人の権利
2 裁判における日本国の主張
3 請求権協定を根拠とした判決はない
七 国際社会のルール違反ー民族（人種）差別
八 幻の債権ー葬祭料、遺族扶助料、弔慰金、未払い給与等
1 被害者と主権者が知らない債権
2 遺族扶助料などを供託した経緯
3 供託金を反故にした経緯
4 日本政府への反論
九 日韓両国の市民へ
十 供託金問題解決のための具体案
十一 浮島丸事件の真相究明
1 乗船者数の調査は可能
2 爆発原因の検証
3 謝罪と哀悼の意の表明
十二 沖縄久米島、樺太上敷香での朝鮮人虐殺事件
1 沖縄久米島でも虐殺事件
2 樺太上敷香の虐殺事件
3 沖縄戦に送られた朝鮮人
十三 終わりに
付録1 五百数十名の死者を出した浮島丸事件をめぐって
付録2 朝鮮人軍人・軍属などの生死不明者について
付録3 朝鮮人軍人・軍属の動員数と犠牲者数
あとがき
日韓関係が悪化しています。日本政府関係者は自分たちに繋がりのある者たちがかつて韓国を侵略・植民地化した事実を不当に軽視し責任逃れに躍起で、本書を読む限りその賠償責任を韓国国民が納得できる形で行っておらず、韓国に対して非常に高慢な態度を取っています。そしてマスメディアのコメンテーターたちの多くもその無責任で強硬な態度を「毅然としている」などと追従し称賛しています。ドイツをはじめとする西洋諸国の誠実に戦争犯罪被害者への戦後責任を果たそうとする態度とはかけ離れています。韓国政府の混乱に乗じて稲田大臣による靖国参拝で中韓を挑発し、慰安婦問題を再燃させるように仕向け、それを理由に韓国を非難することで自国に有利な外交関係を作ろうとしているのでしょうか。兵器輸出などの軍需産業振興、国防予算の拡大を正当化するためには中韓には「敵」でいてもらいたいということなのでしょうか。長年の恩義ある隣国との関係を進んで悪化させる人に（靖国問題について「忘恩」云々といっておられましたが、中韓への文化的恩義は無視しているようです）防衛大臣が務まるなら実は中国も韓国も本当に脅威ではなく、平和なのではないかとも思ってしまいますが・・。日本は原発の警備などもアメリカの比でなくいい加減ですし、本気でテロを心配しているようにさえ見えません。
隣国である中国や韓国に対して、かつて自国が犯した罪を少なくとも国際水準に照らして正当に償い、信頼関係を醸成することが日本を武力で問題を解決しない成熟した平和な国として保つことに繋がるはずです。一衣帯水の距離にある国がかつて自分たちを卑劣な戦争で苦しめたという恐怖と怨恨、不誠実な賠償と戦争犯罪に対する国家の無反省、歴史事実の歪曲・流布によって中国人や韓国人の被害者が我が国に対して抱いているであろう根深い不信感を想像して誠実に彼らに接するべきです。しかし残念なことに、日韓請求権協定のことや日韓合意をネットで少し調べましたが、本書で紹介されている裁判や事件についてはほとんど見かけませんでしたし、反韓的な意見が多いように思えました。
本書には、京都舞鶴の若い女性たちが浮島丸事件の被害者を救出したということや、沖縄でスパイ容疑をかけられ虐殺された朝鮮人や、国の命令で沖縄戦に動員され戦死したのに戦後全く顧みられなかった朝鮮人兵士のために慰霊碑を建てるため奔走した高尾常彦さんなど、市井の心ある日本人が朝鮮人のために行動した逸話も紹介されています。こうした振る舞いこそ人間として立派な行為であり、日本人として誇るべきことです。政府の態度は恥を上塗りするだけです。
日本と韓国の友好を祈念する一人で多くの人に本書が読まれることを祈ります。
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